中国の野望と環太平洋諸国
今日はこの話題です。
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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
4月28日、フィリピンのカエタノ外相は国旗掲揚式典での演説で、南シナ海の軍事拠点化を進める中国に対してフィリピンは温厚な政策を取っているとする見方に反論。「レッドラインがあり、我々にもレッドラインがある。それは大統領も明言している。もし南シナ海のフィリピン海西部で天然資源を採掘する者があれば、大統領は戦争を始めるだろう」と語りました。
天然資源採掘がレッドラインといっても、天然資源を採掘していると明確に証明するのは結構大変です。先日日本海での北朝鮮船が韓国船から瀬取りを行ったと日本が国連北朝鮮制裁委員会に抗議しましたけれども、韓国は瀬取りはなかったと認めませんでした。
ましては天然資源を採掘したか云々の証明は難しいですし、仮に採掘していたとしても、その事実を認めるとは考え難いでしょうね。
ただ、別のフィリピン高官はまた異なるレッドラインを明らかにしています。
30日、ヘルモヘネス・エスペロン大統領顧問は「ドゥテルテ大統領は先日、自国の軍隊を攻撃すればそれがレッドラインになるだろう、と言った」と記者団に語りました。
こちらのレッドラインは天然資源採掘よりもずっと明確です。それ以前に自国の軍隊が攻撃されたら、応戦するのは当たり前ですし、それで戦争にならないようにする方が難しいでしょう。エスペロン大統領顧問が伝えたレッドラインは妥当ではないかと思いますね。
では、そんな危険が何処で発生する可能性があるかといえば、これはもういうまでもなく南シナ海です。
南シナ海のスプラトリー諸島は、100以上の島や環礁などから成り、中国軍がさまざまな部隊を出しているほか、同じく領有権を主張する台湾、ベトナム、マレーシア、フィリピンも滑走路や港を建設し、ブルネイも自国の排他的経済水域に重なると主張しています。
現在、中国は砂を運んで埋め立て人工島を作り、それを要塞化しています。
中国がスプラトリー諸島に設けている人工島は7つあるのですけれども、その中で特に大きな三つ、いわゆる「ビッグスリー」、すなわちスービ、ミスチーフ、ファイアリークロスの3環礁に、類似のインフラを整備しています。
たとえば、スービ礁には整然と並んだバスケットボール・コート、練兵場、多種多様な建造物が映っており、建造物の一部の脇にはレーダー装置があり、ちょっとした「街」にまで成長しています。
シンガポールで活動する安全保障専門家のコリン・コー氏は上空からの撮影映像から「信じがたいことに、バスケットボール・コートのすぐ下に、中国本土で標準的とされる人民解放軍の基地が見える……だが、何らかの部隊を派遣することが大きな一歩になる。その後は、その部隊の安全を守り、維持していく必要がある。つまり、軍事的なプレゼンスは現状に比べて大きくなっていく一方だろう」と述べています。
コリン・コー氏や他の専門家によれば、スービ、ミスチーフ、ファイアリークロス3環礁それぞれの施設に、1500~2400人規模の連隊が駐屯可能だそうなのですけれども、石垣島に配備される陸自にミサイル部隊が500~600人規模であることを考えると、十分に脅威となる戦力だといえます。
当然、この動きにアメリカは警戒感を募らせています。
先日、CNBCがスービ、ミスチーフ、ファイアリークロス各礁に、対艦巡航ミサイル、地対空ミサイルのシステムが配備されたと報じたことに続いて、ホワイトハウスも中国が進める南シナ海での軍備拡張について警戒を強めていると発表しています。
実際、先月18日に中国は「南シナ海を巡る戦い」への準備として、島嶼・環礁の一部において、爆撃機の離着陸訓練を実施したことを明らかにしています。
アメリカが今年の夏にハワイ沖で行う最大規模の多国間軍事演習「環太平洋合同演習(リムパック)」に中国を招待する予定を取り消しましたけれども、これは中国が人工島に爆撃機を初めて着陸させたことが原因だとされています。
中国の南シナ海の実行支配欲は止まるところを知りません。
西側情報機関によると、外国軍の艦艇および航空機に対して、中国海軍艦艇およびファイアリークロス礁上の監視哨から所属を問う警告無線が入るパターンが激化していて、南シナ海のかなりの範囲において、こうしたやり取りは常態となっているそうです。
具体的には、インド、フランス、日本、ニュージーランド、ベトナム、マレーシア、フィリピンの艦艇・航空機も、やはり同じような警告を受けており、最近、オーストラリア当局者が、ベトナムに向かう途上で南シナ海を航行するオーストラリア海軍艦艇3隻に対して、中国側から「強硬だが礼儀正しい」警告があったと発表しています。
これら中国の動きに対し、5月31日、アメリカ国防総省統合参謀本部のケネス・マッケンジー中将は記者会見で、中国の人工島を「吹き飛ばす」能力について記者から質問され、「米軍は西太平洋で小さな島々を撃破した経験が豊富にある……我々が第2次世界大戦中に孤立した小さな島々を撃破した経験が豊富にあるのは事実であり、それは米軍がかつて実行した中核的能力だ」と語り、アメリカ軍には「この地域でアメリカと同盟国の利益を守る用意がある」と言明しています。
アメリカ海軍は5月27日に、中国が領有権を主張する諸島付近で軍艦2隻を航行させる「航行の自由作戦」を実施していますけれども、マッケンジー中将は「国際法で認められた航行の自由作戦を今後も継続する」と述べ、今後も引き下がらない姿勢を示しました。
ただ、その「航行の自由作戦」とて、中国の野望を食い止めるには全く至っていません。
すでに中国の大型強襲揚陸艦その他の艦艇が、ファイアリークロス、スービ、ミスチーフ礁の本格的な海軍用埠頭を利用し、軍事的プレゼンスを誇示しています。
次期米太平洋軍司令官に指名されているフィリップ・デービッドソン海軍大将はアメリカ連邦議会の委員会で「スプラトリー諸島における中国の基地はすでに完成しており、部隊がまだ派遣されていないだけだ……要するに、ほとんど対米戦争に近いシナリオのもとで、中国は今や南シナ海を支配する能力を持ちつつある」と指摘しています。
これは、駐韓米大使に転任予定の米太平洋軍のハリー・ハリス司令官も同じ認識を持っています。
5月30日、太平洋軍司令部で催されたデビッドソン次期司令官への指揮権限の移譲式典でハリー・ハリス司令官は、アジア太平洋情勢に触れ、最も差し迫った脅威は依然北朝鮮としながらも「アメリカや同盟国、パートナー国による焦点を絞った関与がなければ、中国はアジアでの覇権を握る夢を実現させるだろう」と警告しています。
とうぜんこの危機感はトランプ大統領へ報告が上がっているでしょう。北朝鮮問題が終わった後は、中国による覇権への挑戦に対応しなければならないことはほぼ間違いないですね。当然日本も"蚊帳の外"には居られません。
安倍総理の任期以後においても、一層、軍事・外交に強い総理が必要とされると思いますね。
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