エスカレートする米中貿易摩擦
今日はこの話題です。
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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
米中貿易摩擦がエスカレートしています。
7月10日、アメリカの通商代表部は、対中国の制裁関税として更に6031品目、2000億ドル規模の輸入品に10%の関税を上乗せする手続きに入ったことを明らかにしました。
これは、先週アメリカが中国に340億ドル規模の制裁関税を課したことに対して、中国が同規模の報復関税を課したことを受けてのもので、今回はハイテク製品だけでなく、豚肉やうなぎなどの食料品や衣類、家具、かばん、それに冷蔵庫など消費者向けの幅広い製品も含まれています。
アメリカのライトハイザー通商代表は「中国は、法的な根拠無く報復を行った。残念だが中国はこれまでの行動を変えず、アメリカ経済の未来を危機にさらしている」と声明を出して厳しく批判しました。
今回の追加関税が正式に発動されれば、中国からの輸入品のほぼ半分に関税が上乗せされることになります。
当然ながら、中国は、このアメリカの追加関税について猛反発しています。
中国商務省は、「全く受け入れられず厳重に抗議する。アメリカの行為は、中国や全世界を傷つけるだけでなく、自分自身も傷つけるものだ……中国は国家の核心的な利益と国民の根本的利益を守るため、これまで同様、必要な対抗措置を取らざるを得ない。同時にアメリカの単独主義的行為について、WTOに直ちに提訴する」と厳しい批判のコメントを発表しました。
どちらにも全く退く気配は見えません。米中の殴り合いです。
大和総研によると、既に米中での500億ドル規模の制裁発動によるGDPのマイナス効果は、アメリカが0.06%、中国は0.1%と試算。これに今回の2000億ドル規模の制裁を加えるとアメリカが0.15%、中国が0.14%の押し下げ要因になるとしています。
アメリカのGDPは2018年推計で約20.41兆ドル、中国のGDPは14.1兆ドルですから、0.15%とか0.14%のオーダーでも莫大な金額となります。勿論、国際分業の進んでいる今の世界経済も影響を受けることは避けられません。
「大和総研」は前回の500億ドル規模の関税の引き上げでも、日本のGDPは0.01%押し下げられると試算しています。今回の2000億ドル規模の制裁については対象品目に日本の製品が入っているケースは少ないことから直接的な影響はほとんどないと見られているようですけれども、米中の殴り合いがこのままエスカレートすれば、どこにどんな影響が出てくるか分かりません。
それ以前に、6%台の成長を続けていた中国経済そのものに警戒感が広がってきています。
ここ数ヶ月、中国経済メディアは楽観一色から急速に冷えてきているそうです。紙面には債務不履行の文字が躍り、2018年上期だけで中国企業の債務不履行残高は4000億円を超え、国有企業の債務を削減するために債務17兆円分を株式に転換したという報道もあります。
資産に不動産を計上している中国の各企業は、不動産価格の下落に伴う急激なバランスシートの悪化を恐れ、負債を減らす資金を確保するために、慢性的な資金不足状態に陥りつつあります。
その一例として、中国での株式公開による資金調達が冴えません。
7月9日、中国の総合家電メーカー小米(シャオミー)が香港市場に株式公開をしたのですけれども、初値は16.5HKDとなり公募価格の17HKDを下回りました。
当初の計画では10兆円規模の資金を調達する予定だったのですけれども、公募前の需給調査段階で思うように注文が集まらず、公募価格はレンジ下限となる17HKDで決定。総額約6兆3000億円と半減近くになりました。そのレンジの下限で決めた公募価格ですら、株式公開の初値で割り込んでしまったという訳です。
資金不足はファンドでも同様です。
6月11日、将来有望な未公開企業に投資する総額3000億元にも及ぶファンドである「ユニコーンファンド」が中国で販売されたのですけれども、最終的な募集総額は、目標額の4割の1100億元程度に留まったようです。
米中貿易摩擦は、こうした状況の最中に起こっているのですね。
只でさえ、中国市場が警戒感を強めている時に、報復関税の応酬は更に市場マインドを冷え込ませることにもなりかねません。
ちょっと要警戒な時期に入ったかもしれませんね。
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