中国が仕掛ける債務の罠戦略を阻止せよ

 
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中国の一帯一路戦略に基づいた周辺国への影響力拡大について、アメリカの一部議員も問題視し始めています。

共和党のマルコ・ルビオ議員、ジョン・コーニン議員、デービッド・パーデュー議員ら16人の上院議員はムニューシン財務長官とポンペオ国務長官への書簡で、いくつかの質問を投げかけています。

その中の一つに、「アメリカはIMFに最も貢献している国として、救済によって、現在進行中の一帯一路関連プロジェクトの継続や新たな同プロジェクトの開始を確実に阻止するために、どう影響力を行使できるか」というものがあったようです。

これは、現在、約70ヶ国が一帯一路に基づき資金提供を受けたプロジェクトを展開しており、その多くが多額の負債を抱えていることを受けてのものです。

既に、スリランカがIMFに救済を要請。パキスタンも今秋、救済を要請すると見られています。

スリランカは2015年にハンバントータ港の運営権を中国企業に譲渡したのですけれども、それで債務問題が解決した訳ではありません。それ以外にも多くの大型プロジェクトを抱えているからです。

例えば同じくハンバントータに建設されたマッタラ・ラジャパクサ国際空港もその一つです。建設を推進した親中派のラジャパクサ前大統領の名を冠したこの空港は、2億1000万ドルを費用を投入し2013年に完成しました。

建設費の9割は中国からの融資とされ、工事も中国企業が請け負いました。ところがこの空港は、名前こそ国際空港ですけれども、付近には漁村と小規模のビーチリゾートがあるだけで、「世界一寂しい国際空港」と揶揄される程です。

当初から建設はラジャパクサ氏の地元への利益誘導とささやかれていて、今年5月には唯一の定期便だったアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイとの直行便が閉鎖。あっと言う間に経営難に陥っています。収入不足で職員の給料も払えなくなりハンバントータ港と同じく、中国に身売りするのではないかとの懸念もあります。

スリランカのマンガラ・サマラウィーラ財務相は前政権が進めた巨額プロジェクトのために債務返済額が過去最高の水準に膨らんでいると述べ、今年の元利の支払額は28億4000万ドル(約3150億円)に達し、その大半は前政権の下でのプロジェクト向け融資の返済分となっているそうです。

スリランカの経済規模は、約870億ドル(約9兆6600億円)、外貨準備高は4月末時点で99億ドルです。毎年の元利返済額が外貨準備の1/3に相当するとは重すぎる負担ですね。IMFに救済を要請したのも当然といえるでしょう。

パキスタンも、20億ドル規模のエアコン付き地下鉄建設計画を含む計620億ドル規模のインフラ改良計画などで生じた債務を負っています。

パキスタンの公式統計によると、既に完了したか建設中のエネルギー関連プロジェクトについて、中国から120億ドル余りの民間融資を受け、更に、パキスタン当局者によると、パキスタンの外貨準備を支えるために、中国の商業銀行から約30億ドルの緊急資金援助を受けたようです。

外貨準備金すら、中国の援助を受けなければならないとは思いっきり「債務の罠」に嵌っているといっていいでしょう。

その意味ではアメリカ共和党議員らの質問は、中国が周辺国を債務の罠に嵌めては、属国化しようとする動きを阻止せねばらならないという意思表示とも言えると思いますね。

けれども、仮にIMFが「債務の罠」に陥った国を助けた場合、その救済の資金は最終的には中国にも流れることになります。それはとりもなおさず、米中貿易戦争で苦しむ中国を間接的に助けることになり、そう簡単な話ではないと思われます。

IMFの報道官は「IMFは常に債務の持続可能性について厳しい評価を行ってから融資するかどうか決める」とコメントしたようですけれども、中国は、IMFが融資しないのをいいことに、再び「債務の罠」を掛けてくることは十分に考えられます。

正に共和党議員が質問したように、IMFは、一帯一路関連プロジェクトの継続や新たな同プロジェクトの開始を確実に阻止するための行動を問われているのだと思いますね。

日本としても、開かれたインド太平洋戦略を推進し、一帯一路の影響力を削いでおくことも十分に考えて置かなければいけないと思いますね。
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