米中冷戦始まる
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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
10月8日、中国を訪問したアメリカのポンペオ国務長官は、中国の王毅国務委員兼外相と会談しました。
会談の冒頭で行われた共同会見で王外相は、「アメリカは最近、中国との貿易摩擦を激化させており、台湾問題で、中国の権益を損なう行動を取り、中国の内外政策について根拠のない批判を繰り広げている……これはわれわれの相互信頼に対する直接的な攻撃で、米中関係に影を落としている……アメリカにこうした誤った言動を直ちに止めるよう要求する」と抗議しました。
それに対してポンペオ国務長官は「王氏が挙げた問題について、アメリカ側の見解は根本的に異なる……中国がとってきた行動をアメリカは深く憂慮している。米中関係は極めて重要なため、それぞれの問題について議論する機会が得られることを楽しみにしている」と反論。米中の外相が貿易戦争や台湾などの問題について公の場で非難し合うという異例の展開となりました。
前回6月にポンペオ国務長官が訪中した際には、習近平国家主席と会談したのですけれども、今回は会談は設定されておらず、中国がアメリカに対する不満を公にしたと見られています。
ポンペオ国務長官が「議論する機会が得られることを楽しみにしている」と発言している時点で、互いに議論出来る雰囲気ではないと白状したも同然です。米中対立は激しさを増しています。
けれども、このような門前払いのような"幼稚"な態度は、トランプ大統領をして、中国を締め付ける口実を与えるだけだと思いますね。
評論家の石平太郎氏はツイッターで「中国側の『冷遇』はむしろトランプ大統領の思うツボである。ポンペオまでを虐めてしまうと、トランプ政権内で対中国協調を主張する人は誰もいなくなって、トランプ大統領は対中強硬策を思う存分進めることができるのだ。習近平の愚かさは中国を滅ぼすのだ」と述べていますけれども、全く同感です。
ただ、中国もアメリカとの対立が長期化することを覚悟している可能性があります。
今年7月に清華大学中国・世界経済研究センターが米中貿易戦争に関するレポートを出しているのですけれども、アメリカ指導層の伝統派(トラディショナル)とエリート層(エスタブリッシュメント)は普段は対立しているのに、対中国に対しては協調している為、両者のどちらがホワイトハウスに入ったとしても、米中対立は長期化すると分析しています。
一方、アメリカも中国との対立は今後エスカレートしていくと見ているようです。
10月5日、国防総省は『アメリカの製造業と防衛産業基盤、サプライチェーンの弾力性に関する評価と強化』というレポートを、トランプ大統領に提出していますけれども、流石、国防総省のレポートだけあって、産業と国防を一体として意識した報告となっています。
レポートでは、アジアにおけるアメリカの同盟国などが、どれだけ中国に貿易依存しているかのグラフや、中国を含む世界10カ国の研究開発費の推移などを提示し、台頭する中国に警鐘を鳴らしています。
9月30日に南シナ海でアメリカ軍が「航行の自由作戦」を実施中、中国人民解放軍のミサイル駆逐艦が、海域から離れるよう警告し、41mの距離まで異常接近してきた事件があったことをアメリカ軍が公表していますけれども、アメリカ海軍作戦部長のジョン・M・リチャードソン大将は、9月はじめ、ワシントンで開催されたディフェンス・ニューズ主催の会議で「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念を提唱しています。
これは、「本格戦闘に至る前の段階」を意味し、日本でいうところの「グレーゾーン事態」に相当する概念と見られています。
リチャードソン大将は、南シナ海はもちろん中東領域での中国およびロシアとの対立は「本格戦闘に至る前の段階における灰色戦争」であるとし、アメリカ海軍は「灰色戦争」に勝利する能力を備えなければならないと述べています。
その意味では、南シナ海で中国駆逐艦が異常接近したことをいち早く公表したというのも、中国の危うさを世界に発信することで牽制している、つまりこの「灰色戦争」への対処の一環だといえるのかもしれません。
米中対立は、貿易だけでなく"冷戦"レベルに高まりつつあるのではないかと思いますね。
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