日中首脳会談と戦略的互恵関係

 
今日はこの話題です。

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10月26日、中国の北京を訪問した安倍総理は、午前中に李首相と午後には習近平主席と相次いで会談を行いました。

習主席との会談で安倍総理は、李首相との会談で確認した「日中関係を競争から協調へ、新しい時代へと押し上げる」、「互いにパートナーであり、脅威とはならない」、「自由で公正な貿易関係の発展」の新たな日中関係の3原則を示し、「新しい時代を共に切り開いていきたい」と呼び掛けました。

これに対し習主席は「このような歴史的なチャンスを捉えて、それを中日関係発展の新しい歴史的な方向性にしなければならない……中日関係はさまざまな関門を通り抜け、曲折を経験してきたが、双方の努力のもと正しい軌道に戻り、前向きな勢いを見せている」と答えました。

今回安倍総理が提示したという、新3原則は「戦略的互恵関係」をうたった2008年の共同声明と同趣旨と言われています。つまり安倍総理としては、日中関係を2008年の段階まで約10年戻したいということなのでしょうね。

2008年の共同声明については当時、「共同声明に潜む中国の領土的野心」のエントリーで取り上げ、中国が領土的野心を露わにした声明であると警鐘を鳴らしたのですけれども、あれから10年経って、中国はそのとおりに南シナ海を"北京の海"とすべく侵略を始めています。

今回の新三原則については共同声明文でどのように表現されるのかまだ分かりませんけれども、単に「脅威とはならない」だけでは中国の領土拡張の野心は止めることは出来ない。やはり日米同盟を基軸として、周辺国を巻き込んでの封じ込めが必要ではないかと思いますね。

日本の総理による中国の公式訪問は、2011年12月の野田佳彦首相以来、約7年ぶりのことですけれども、中国は、天安門前に五星紅旗と並んで日の丸を掲げるなど大歓迎ムードを演出しました。

これについて、評論家の石平氏は「現在、中国は米国と『冷戦』のような状態になった。巨大経済圏構想の『一帯一路』はアジア諸国の反発を受け、欧州諸国からも批判されている。習氏は今、国際的に『四面楚歌状態』で日本に助けてもらうしかない。日米分断も仕掛けたい。日本を籠絡するため、今さらのように感謝しようとしているのだろう。ただ、心からの感謝ではなく、政略としての感謝だ」と指摘していますけれども、その通りでしょう。手放しで喜べるものではありません。

安倍総理もそこは分かっていると思います。では、なぜそんな中国の見え見えの手に乗るようなことをしたのか。

一つには北朝鮮の問題があると言われています。拉致問題を解決するためには、北朝鮮に対して大きな影響力を持つ中国とは協力できる関係をつなげておく必要があるというのは言うまでもありません。

また、安倍総理は中国の「一帯一路」構想について、協力姿勢を見せていますけれども、これについて安倍総理は周囲に「実際に中国に何かサービスをしているわけではない。こっちの利益になることは一緒にやってもいいというだけだ」と述べているそうです。

安倍総理が「一帯一路」に融和的になっていることについては、去年12月のエントリー「『一帯一路』を塗り替える安倍戦略」の中で、中国の「一帯一路」が危ういと気付いた周辺国を中国から引き剥がし、日本に取り込んでしまう狙いがあるのではないかと述べましたけれども、今や中国の「一帯一路」は周辺国から警戒され、距離を置かれ始めています。

確かにこのタイミングで「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げて、周辺国と日米サイドに取りこむか、あるいは「一帯一路」に透明性を持たせ、借金漬け商法を抜き取ることが出来れば、日本の利益になることだと言えます。ただ、「一帯一路」から借金漬け商法を抜き取るということは、中国をして領土的野心を捨てることとほぼ同義です。そうそう簡単にいくとも思えません。

また、中国に接近し過ぎて、アメリカの疑念を呼ばないことにも留意する必要があります。

中国との関係を改善すること自体は悪いことではありませんけれども、あくまでも中国とは「戦略的互恵関係」に過ぎないということ。その基本線を維持しつつ、"用日"ならぬ"用中"としてうまく舵取りできるのか。

一見、融和ムードに見えて、中々、難しい局面に入っていくように思いますね。

この記事へのコメント

  • 安倍応援団は、何か深謀遠慮があるだろう。
    みたいに書いてるが、
    果たしてあるかどうか疑問だね。
    日韓合意の時も、何かあるんだろうと、妄想言ってたが何もなかったからね。
    安倍内閣に、用中ができるくらいなら、
    こんな日本になってなかったね。
    2018年10月28日 08:07
  • ス内パー

    関係ない話ですがウマルの解放にあわせるように保守系まとめサイトの大手である
    「保守速報」「もえるあじあ」が接続不能/接続不良にみまわれたりスポンサーはがし食らったりと
    割と面倒臭いことになっているとか。
    なんJ春のBAN祭り(youtubeの保守系動画を通報垢banさせる祭り)に続いてみょんなことやってるなぁという印象ですな。
    ただこれが続くと保守系の情報発信能力ががた落ちになる(つか故意なら普通に言論弾圧)のでそこは注意必要かなぁと

    40年三兆ドルあたえ続けて感謝のかの字も無く反日資金にされてたODAが打ち切りなのに感謝感激雨あられとなってみたり
    「なんとなく日本が全部悪い」で済んでた慰安婦問題が「韓国が悪い」「韓国は日本じゃなかったのか」となったり
    安倍政権(つか民主政権時代の保守系インターネット勢力)の海外向け情報発信力が
    それ以前とは比べ物にならないレベルで跳ね上がったのが今の成果に繋がっているのですかねぇ?
    2018年10月28日 09:45
  • 日比野

    英さん。こんばんは。

    私見ですが、安倍政権は何か確固たるものがあって、動いているというよりは、色んな方面からの意見を取り入れてバランス点を見極めた上での立ち位置を決める「全方位型ポピュリズム」の香りがします。

    過去、安倍総理の全方位型ポピュリズムについて取り上げたことがあります。
    http://blog.livedoor.jp/kotobukibune_bot/archives/16164680.html

    対中の動きは大分経団連に引っ張られているのではないかとも感じますね。今回の訪中でも経団連代表を沢山引き連れていきましたしね。

    アメリカは本気で中共を潰しに掛かってきてますから、財界は中国からの撤退を考えるべきなんですが。あるいは中国崩壊後を見越してのパイプ作りというのならまた見方も変わりますけど、現段階ではそこまでやっているのかはちょっと疑問ですね。
    2018年10月28日 23:31
  • 日比野

    ス内パーさん。

    御無沙汰してます。

    確かに、ここのところ保守系まとめサイトが攻撃にあっているみたいですね。

    数個前のエントリーで警告していただいた方がいらっしゃいましたが、日比野庵は弱小なので、攻撃を受けることは左程気にしていませんけど。大手が軒並みやられるとなると、情報発信力は落ちますからねぇ。そこは心配なところです。

    ただ、御指摘のとおり、ここ数年で、大分世論の認識は変わってきたように思います。

    日比野庵を始めた2007年と比べると天地の空気感が違います。
    安倍政権の海外発信力もあるかもしれませんが、10年前、5年前からの老舗保守系サイトがずっと頑張ってきて、それを見てきた若年層の認識が変わってきたというももあるようにも感じますね。
    2018年10月28日 23:31

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