逮捕されたファーウェイ副会長と危険な中国の新国家情報法
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12月5日、カナダ司法省は中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者の娘で副会長兼最高財務責任者(CFO)である孟晩舟氏を逮捕したと明らかにしました。
カナダ司法省によると、孟氏はバンクーバーで1日に逮捕されたとのことで、拘束はアメリカからの要請に応じた措置だということです。
現時点では、逮捕容疑の詳細は明らかではありませんけれども、複数のアメリカ、メディアは4月にアメリカ司法省がイランへの違法輸出に関わった疑いでファーウェイを捜査していると報じていましたから、おそらくその関連であろうと見られているようです。
7日に保釈聴聞会が開かれる予定ですけれども、アメリカは孟氏の引き渡しを求めており、今後、アメリカに引き渡される可能性もあります。
ファーウェイは6日午前、「現時点では逮捕に関する情報はほとんどないが、孟氏の不正行為についてはいかなる認識もない。カナダとアメリカの司法制度が正しい結論を下すと信じる」との声明を発表。駐カナダ中国大使館は「著しく人権を侵害するような行為に断固反発し、強く抗議する」とカナダ当局に孟氏の即時釈放を要求しています。
ファーウェイはこれまでにもスパイ活動の疑いがかけられていましたから、孟氏の逮捕は、中国に対する警告かつプレッシャーの意味合いもあるのではないかと思いますね。
ファーウェイが設立されたのは1987年。人民解放軍の通信部門研究を担う情報工学学校でトップを務めたこともある任正非氏によって、広東省深センに設立。元人民解放軍所属の軍事技術関係者が集まり、基地局やその背後にあるコアネットワークの開発を行う通信機器ベンダーとして成長してきました。
2000年以降にアメリカ市場に入り、米企業と連携を始めるのですけれども、程なくしてソースコードを盗んだとして訴訟問題が発生します。
アメリカ政府はファーウェイが人民解放軍との契約関係があり、創業者の任氏自身が軍部出身という経歴の持ち主であること。更には、任氏の元妻が共産党幹部の娘であることなどから、ファーウェイを警戒してきました。
アメリカ国家安全保障局(NSA)は2009年頃から任正非氏に対するスパイ工作を開始。内部文書や周囲の人物とのやりとりを調べ、その人脈や動向を監視していたことが判明しています。
2012年にはアメリカ連邦議会が報告書をあげ、ファーウェイと、中国の別の通信機器大手である「ZTE」が、アメリカの安全保障への脅威であると主張。アメリカ企業にこれらの会社の製品を使用しないよう促しています。
つまり、当時から、ファーウェイは中国共産党や人民解放軍との関係性が疑われ、アメリカの企業や個人を狙ってスパイ行為をしているとの指摘があがっていたわけです。
2015年のエントリー「千粒のバックドア」でも述べたことがありますけれども、ファーウェイのみならず、他の中国企業もスパイ行為を行っていることが明らかになっています。
今年になって、アメリカ政府高官が「ファーウェイ製品の使用はやめた方がいい」と言い始め、8月には、アメリカ防権限法により、あらためて正式にアメリカ政府および関係機関でファーウェイとZTEの機器の使用を禁じました。
そして更に、アメリカは同盟国にもファーウェイ製品の使用を見送るよう要請しています。
なぜ、そのような要請をするのかというと、その理由の一つに、中国政府が定めた新しい「国家情報法」があるという指摘があります。
これは、中国の全人代が2017年6月に採択、公布した国内法で、従来と比べて、情報機関や情報工作活動に広範囲におよぶ権限を与えることを定めています。
この新国家情報法は「国家の政治体制や主権、統一および領土保全、国民福祉、経済・社会の持続的発展、その他の主要な国益を保護する」ための"諜報活動"を許可し、「市民はもちろん、すべての国家機関、軍隊、政党、社会的グループ、企業、事業団体」に対して、必要な時には「諜報活動」を支援することを義務付けるという恐ろしいものです。
誤解を恐れずにいえば、中国人民全てにスパイ活動を支援する義務を負わせる法律だということです。
中国の一民間人と思っていたのがある日突如としてスパイ工作員になる。他国にとっては堪ったものではありません。
アメリカのファーウェイ製品を使うなという要請に同盟国は呼応し始めています。
ニュージーランドとオーストラリアも通信インフラに中国政府が関わる恐れがあるとの懸念から、5Gネットワークの構築に際してはファーウェイを排除することを決定。また、12月5日、イギリス通信大手BTはファーウェイ製品を既存の第3世代と第4世代の基幹ネットワーク部分から排除し、第5世代(5G)のネットワークの主要部品としても使用しないと表明しました。。
更に、日本も、今年の夏に、ファーウェイとZTEの製品について情報システム導入時の入札から除外する方針を固めたと報じられています。
アメリカはイギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド、所謂「ファイブ・アイズ」と呼ばれる国々との間で諜報活動を共有する協定を結んでいます。
ところが、今年に入ってから、中国の動きについてアメリカ諜報機関などが収集した機密情報などを日本やドイツとも共有するようになりました。つまり、中国に絡むアメリカの機密情報を日本やドイツなども知るようになったのですね。
となると、当然、これらの国々は機密保全をしっかり守れるだけのインフラやシステムを構築しなければなりません。それを考えると、日本やドイツも遠からず、中国製品を排除することになっていくでしょう。
米中冷戦はネットの世界でも始まっていると考えなければいけないと思いますね。
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