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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
此の程、日本政府は、敵のレーダーや通信を無力化する「電子攻撃機」を開発する方針を固めたことが明らかになりました。
複数の政府関係者は、自衛隊の輸送機や哨戒機に強力な電波妨害装置を搭載し、電子戦能力を向上させている中国やロシアに対処する狙いがあるとしています。
自衛隊は来年度から開発に向けた作業を本格化させる。
具体的には、航空自衛隊の輸送機「C2」と海上自衛隊の哨戒機「P1」に電波妨害装置を搭載した型を開発する方向で、C2を基にした機種は2027年度の導入を目指し、P1については開発スケジュールを含めて検討するとのことです。
電子攻撃機の開発については、既に昨年12月に閣議決定した防衛計画の大綱(Ⅴ.自衛隊の体制等 P.24)に記載されています。次に該当部分を引用します。
1 領域横断作戦の実現のための統合運用現在、自衛隊の艦艇や航空機に搭載されている電子装備は防御を中心に置いたものです。
(4)電磁波の利用を統合運用の観点から適切に管理・調整し得るよう、統合幕僚監部における態勢を強化する。また、電磁波領域に係る情報収集・分析や、侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等の無力化を行い得るよう、各自衛隊における態勢を強化する。
通常、レーダーは相手に照射したレーダ波の反射波を拾うことで、距離と方向を特定します。
ここで相手から照射されたレーダー波と少しだけ周波数をズラしたレーダー波を更に高出力で送り返してやれば、レーダーを照射した相手はより高出力のズラしたレーダー波を拾わされることで正確な位置の測定が出来なくなります。
こうした装置はトランスポンダとかリピータなどと呼ばれ、相手レーダーを狂わすことを目的としたものです。
F15イーグルは、電子装備としてノースロップグラマンAN/APX-101IFFトランスポンダーを搭載しています。
それに対して、今回開発しようとしているのは、空中で広い範囲に妨害電波を照射し、相手の航空機や艦艇などをつなぐ通信ネットワークやレーダーを無力化させ、戦闘ができない状態に追い込むことを狙うものです。
現在、この種の装備を有している航空機の一つに、昨年1月に政府が導入検討を公表したEA-18Gグラウラーが上げられます。
EA-18Gグラウラーは、搭載するAN/ALQ-99戦術妨害装置(TJS)ポッドからジャミング電波を発信し、広範囲に妨害します。
防衛装備庁によると電子攻撃機の射程は数百キロメートルとしているそうですけれども、ジャーナリストの伊藤明弘氏がアメリカ海軍厚木基地でパイロットから聞いたところ「ジャミングは約60マイルくらいが有効かな……」との答えだったそうです。60マイルは約100キロ程ですから、東京から伊豆半島あたりまでが妨害範囲となります。
或いは、防衛装備庁はEA-18Gグラウラーよりもずっと性能のよい電子攻撃機の調達を考えているのかもしれませんけれども、政府は5年間で数機の調達をめざすとしています。
ただ、当時、電子攻撃機導入が報じられたとき、一部マスコミからは「専守防衛」に反するのではないか云々と批判の声が上がっていましたけれども、今回の韓国駆逐艦による火器管制レーダ照射問題があった今のタイミングであれば、その声も小さくならざるを得ません。
ほぼ1年前に報じたことをこのタイミングでまた報じられたということは、今回のレーダ照射問題を利用してその必要性を国内に周知させ、導入を進めやすくする狙いもあるのかもしれません。
これについて、シンシアリーさんのブログによると、韓国各紙は「哨戒機事件はこのために誘発したのでは?」とか「日本が軍事大国化の名分になるためにわざとレーダー照射問題を起こした!」とか主張しているそうです。
そんなに騒ぐのなら最初から敵対行為とも取れるレーダー照射などしなければ良かったのです。それに初期の段階で謝罪していれば、表沙汰になることもなく、内々に処理して貰えた事案だったのですね。ですから、万が一、日本側にレーダ照射問題を公表することで電子攻撃機導入を推進する裏の狙いがあったとしても、その半分以上は韓国自身が招いたことであるともいえます。
更にもう一点筆者が注目したいのは、報道では電子攻撃機の導入ではなく「開発」となっていることです。勿論、現在搭載していないC2やP1に搭載するという意味では「開発」になるのかもしれませんけれども、どのような形で搭載するとは書いていないのですね。
例えば、レーダー妨害装置をミサイルにして、遠隔地でレーダー妨害させることだって理論上は可能です。
実際、その研究は既に行われています。
2017年秋に都内で行われた防衛装備庁の「技術シンポジウム」では、ハイテク兵器を瞬時に無力化できる「EMP(電磁パルス)弾の研究」が発表されています。
これは、敵部隊の上空などで強力な電磁パルスを人為的に発生させ、通信システムやハイテク兵器を使用不能にする非殺傷兵器で、防衛省は平成30年度概算要求でも14億円の研究費を計上しています。
ただ、電磁波を出力させる為の電力の関係から、影響範囲が数百メートル程度の局地的な戦術用EMP弾の研究のようです。
昨年9月、当時防衛大臣であった小野寺五典氏は記者会見で「EMP(電磁パルス)弾については防衛省も防御手法等を兼ねてから研究している……平成30年度概算要求の中にもEMP弾の試作研究や防護技術の研究予算を計上している……EMP弾を開発、研究する中で対処能力について、しっかり研究を積み重ねていきたい」とコメントしています。
まぁ、今回の韓国駆逐艦レーダー照射事件がなくても、電子攻撃機の開発はされたでしょうけれども、国内世論が電子戦に理解を示し、後押ししてくれれば、予算含めてより開発が進む筈です。
国土防衛に必要な装備として、電子攻撃機の導入と開発を進めていただきたいですね。
この記事へのコメント
opera
用田和仁元陸将によると、日本のとある民間企業が保有する高出力電源によって夢物語(EMP(電磁パルス)兵器)が現実化しつつあるそうです。射程は200km程度で、核を含むミサイルの飽和攻撃にも対応可能ということです。
すでに、日米同盟に基づき米国には提供され、米国は数年以内に実用化の見通しだそうですが、完成後に米国から購入するだけでなく、独自に研究・開発もすべしというのが用田元陸将の主張でした。
また、P-1哨戒機は、ミサイルも搭載可能というレベルではなく、少しの改造で爆撃機としても使用可能な機種ですから、これにEMP兵器を搭載できれば画期的な事になりそうですね(用田元陸将によると、日本が開発中のレールガンは筋が悪く時間がかかるいう話で、少々残念ですが)。
問題は、またも予算=財務省ということになりそうです。