昨日の続きです。


1月14日、日本の防衛省と韓国国防省の担当者による協議がシンガポールで行われました。協議は、午前に韓国大使館で、午後に日本大使館で進められたとのことです。
協議の場で日本側は「客観的な証拠」として、双方がレーダーの電波情報を非公式に交換して事実を明らかにしようと提案したのですけれども、韓国側はこれまで通り交換に応じなかったとようです。
韓国国防省は「誤解解消に向け双方が事実関係を確認し、再発防止に向けて意見交換を行う予定」で協議に臨んだとしていますけれども、レーダーの電波情報を交換を拒否しておいて、何の事実関係を確認しようというのでしょうか。
韓国反論動画は、その殆どが日本側の公開映像の流用であり、韓国の主張を裏付ける新証拠があるわけでもなく、プロパガンダ要素が強いものでした。当然、説得力に欠けています。
JNNの世論調査でも、韓国政府の照射していないという主張に納得できるかについて「納得できない」と答えた人が87%、「納得できる」はわずか2%です。
また、韓国側は海自の哨戒機が「危険な低空飛行をした」という主張についても「納得できない」が81%でした。要するに韓国の反論動画と主張は、日本には殆ど全く届いていない訳です。
一方、韓国世論はというと、14日に世論調査会社リアルメーターが発表した調査によると、文在寅政権の対日外交について、45.6%が「より強硬に対応すべきだ」と回答。「対応は適切」が37.6%で続き、「自制すべきだ」は12.5%でした。
リアルメーターは「対日関係の世論調査は強硬論が60~70%と高く出る傾向があったが、今回は強硬一辺倒ではなく、予想より落ち着いた結果となった」と分析しているようですけれども、より強硬と適切を足すと8割を大きく超えます。つまり、韓国世論は文政権の主張を是としているといっていいでしょう。
日本の世論は、レーダー照射問題についての韓国の主張に9割近くが納得できないと反発しているのに、韓国世論の8割以上が今の文在寅政権は適切かより強硬に対応すべきだと考えているのですね。
韓国世論が支持している「強硬」が具体的に何を指すのか分かりませんけれども、少なくとも日本の要求に唯々諾々と従うなということでしょう。
日本はレーダー照射に対する韓国側の意図の確認と再発防止と思われますし、そう要求しています。謝罪はそれほど強く望んでいるわけではありません。
けれども、事実確認なくして再発防止策など打てるはずもありません。
韓国は、再発防止に向けて意見交換を行うといいながら、事実の確認となるレーダー波形情報の提供を拒否しています。そしてその口で日本がデータを出さないと嘯いています。
日本がデータを出さないのは、自分の波形データと交換するのを拒否しているからだというのは、韓国国内では殆ど報じられていません。
15日、村川豊海上幕僚長は定例会見で、海自が保有するデータについて「一方的に全てを開示することはない……事実を基に解決策を見いだしていくことが一番大切……韓国側で持っているデータと突き合わせて検証していく必要がある」と、データの提示は韓国側のデータと交換を前提とする考えを示しています。
また、村川海幕長は、哨戒機が収集したレーダー波の情報を開示する可能性もあると述べたようですけれども、レーダー波情報は機密の塊ですし、P1の電子能力もバラすことにもなりますからね。そうそう安易に開示できるとも思えません。
今回問題となっている韓国駆逐艦「広開土王」に搭載している火器管制レーダは、 タレス・ネーデルランド社が開発した使用周波数帯域がX、Kバンドの「STIR-1.8」と呼ばれるレーダです。
このレーダーは韓国の他、アルゼンチン、チリ、カナダ、ドイツなど世界各国で採用されていて、下手に波形データを公表しようものなら、他国にも大きく影響を及ぼす可能性があります。したがって韓国との協議でのみ開示することはあっても、一般公開は難しいのではないかと思います。
けれども、防衛省の動画と韓国の反論動画によって、どちらが嘘をついているか誰の目にも明らかですから、このまま韓国がレーダー照射していないと突っ張っても、信用を無くしていくだけです。
そんな中、元駐日韓国大使館公使のホン・ヒョン氏はこんなコメントをしています。
「文在寅政権の韓国と、その前の韓国は違う。軍は正常に反応したいのに、青瓦台がそれを許さない。それで全ての混乱が生じている。現場で何かがあったら、艦長が自衛隊に『これはまずかった。単純なミスだ』と連絡すれば終わること。そういうことをこんなに問題にしたのは結局、文在寅政権だ。とんでもない勢力に国の中枢部が乗っ取られている。最近の話だが、国防の専門記者がテレビでこんなことを言った。『韓国の国防部が、主な敵を北から日本に変えようと、そういう教育をさせようとしている』と。その専門家はテレビ出演を禁止された」
本当であれば相当危ないですね。ホン・ヒョン氏は「とんでもない勢力」は誰であるか明言していませんけれども、文政権の言動を見る限り、普通に考えれば北朝鮮シンパでしょうね。
けれども、それ以上に気になるのは「韓国の国防部が、主な敵を北から日本に変えようとしている」という部分です。
1月15日、韓国国防部は文在寅大統領政権発足後初めての国防白書を刊行したのですけれども、前回の16年版にあった「北朝鮮政権と北朝鮮軍はわれわれの敵」という表現が「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」と変更されているのですね。
また、同時に日本との関係についても「自由民主主義と市場経済の基本価値を共有している」という過去の白書にあった文言を削除しています。
韓国の主権や財産等を脅かす勢力を敵とし、日本とは基本的価値を共有しないという規定は、読みようによったら、「日本は敵である」と宣言したと読めなくもありません。
先の元ホン・ヒョン元駐日韓国大使館公使が紹介した国防専門記者が暴露した「韓国の国防部が、主な敵を北から日本に変えようとしている」というのを傍証するかのような動きです。
文政権が北朝鮮を友とし、日本を敵と見做しているのであれば、当然それに備える必要が出てきます。
少なくとも文政権が続いている間は仮想敵国並みの警戒をしておいた方がいいかもしれませんね。
この記事へのコメント
トラックボール
その理屈なら先に宣戦布告したのは日本ということになります。
違いますか?
おそらくただ同じことをやりかえしたかったのでしょう。
しかしまぁ、日本にとっては良いことではないでしょうか?
敵か味方かうやむやにされるのが一番困るんですよ
日本国内の左派がそこに便乗しようとするので
また冷戦時代の名残りで保守派にもいえることです
しかしこうなったらもう庇うことは難しくなりますから
トラックボール
しかも日本が「基本的な価値を共有している」を削除した時は
韓国は保守政権時代ですから、事は深刻です。
「文政権が続いている間」とかそんな話じゃありません。
文政権が終わろうがどうしようが友好勢力ではないってことです。
ばる
2015年 「自由と民主主義、市場経済などの基本的価値を共有する」の「基本的価値」を削除。
2016年 「最も重要な隣国」から「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」に変更。
もとは首相の年頭所感でしたっけ?
日比野
コメントありがとうございます。
「基本的な価値を共有している」を削除したから、韓国は日本を敵と宣言した、ではなく正確には、「韓国の主権や財産等を脅かす勢力を敵」と「日本とは基本的価値を共有しない」の合わせ技でみれば敵対宣言になるのではないかということです。
確かに「基本的な価値を共有」を先に削除したのは日本ですけれども、「日本の主権や財産を脅かす勢力を敵とする」とは規定していませんから。
この「主権や財産を脅かす勢力を敵と見做す」という表現は、慎重に扱わないと危険な表現だと思います。なぜなら、自分が脅かされると感じたら敵と見做されてしまうからです。
P-1哨戒機が150メートル以上離れ、豆粒程小さく見える程遠くを飛んでも、彼らに言わせれば「低空威嚇飛行」なのですから、いくらでもいちゃもんをつけられるわけです。
もちろんトラックボールさんのご指摘のとおり、仕返しの面はあるでしょうけれども、筆者には韓国が敵とみなす規定の書き方が非常に気になっています。
あと、文政権の後ですが、これもおっしゃるとおり期待できないでしょう。文在寅大統領があれほど無茶をやらかしても支持率が微増しています。韓国の反日教育の弊害が表に出てきているのではないかと思いますね。
日比野
>もとは首相の年頭所感でしたっけ?
確かそんな記憶がありますけれども、過去のエントリーを検索してみたら、2015年3月の答弁書でもそう表現して閣議決定もしていますね。
https://kotobukibune.at.webry.info/201503/article_17.html
今後ともよろしくお願いいたします。