今日は感想エントリーです。


ロイター通信は、中国のファーウェイ社が1999年以降、国連制裁措置の対象であったタリバンに通信システムを提供し続けていることが明らかになったと報じています。
2000年12月、国連安全保障理事会はタリバンへの武器売却を禁じると決定し、タリバンはアフガニスタンでの訓練キャンプの閉鎖したのですけれども、その数ヶ月後、ファーウェイはタリバンと取引し、アフガニスタン全土に広がる軍事通信システムを構築したとしています。
更にロイターは、中国共産党政権がタリバンの武装も技術も支援したとしています。
そして、中国のSNS「微博」で、ファーウェイの関係者と思われるアカウントが、2014年10月26日、ファーウェイは社内メールで、タリバン所属の顧客から「インターネットが非常に遅いか、まったく機能していない」と状況を述べ、一週間以内に修理しなければ基地局を焼き払うというクレームについて報告した社内メールを投稿したことを報じています。
本物であれば、内部告発ですね。
また、ロイターは1月8日に、ファーウェイが対イランとシリア禁輸制裁を回避するために2つの実体のないペーパーカンパニーを経由して取引したと報じています。1社は香港拠点のスカイコム・テックでもう1社はモーリシャスのカニクラ・ホールディングスです。
表向きファーウェイはこれら2社は関連がないことになっているのですけれども、ロイタースカイコムイラン支店の責任者はファーウェイの幹部でソフトウェア商業部代表Shi Yaohong氏であるとの文書を入手。2012年6月にそのShi氏はファーウェイ中東担当代表に就任したことを伝えています。
中国はこのように裏でイラン、シリアに手を伸ばしていたわけです。
これは勿論、習近平主席の「一帯一路」構想に基づいた対中東戦略の一貫と思われます。
2004年から中国はアラブ諸国の首脳と中国・アラブ諸国協力フォーラムを開催し、2014年6月にはその第6回閣僚会合を北京で開催さしています。
また、2016年1月に習近平主席はサウジアラビア、エジプト、イランを歴訪。習主席はサウジアラビアで、アラブ連盟の会議に出席し、道路整備などインフラ開発のために200億ドル相当の金融支援を行うことを約束した上で、相互貿易の活発化を提案しています。
更にアイランで、ロウハニ大統領らと会談。原子力発電所や高速鉄道の建設への支援を約束し、向こう10年間で約6000億ドルの貿易額を目指すなど経済交流を活発化することで合意しています。
そして、2016年3月、トルコのアルバヤラク天然資源相が初めての外遊で中国を訪問し、両国間の投資・貿易の増加について会談。翌週には中国企業がトルコの風力・太陽光発電施設などに総額150億ドルの投資を行うことが明らかになっています。
イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプト。いずれも一帯一路構想に入っている国々ばかりです。
習近平主席はアラブ連盟本部での演説で、中国は人権保護など相手国の内政に干渉しないこと、経済発展を促し、その果実を配分すると強調しています。内政不干渉や経済優先で相手国に取り入るやり口は、東南アジア諸国に対するやり口と同じですけれども、開発途上国にとっては受け入れられやすいことは事実です。
現実にASEAN諸国に中国資本は深く食い込んでいます。
中東にしても、シェールオイルの出現など、中東原油への依存度が低下する中、原油を売る代わりにインフラ整備をしてくれる中国のアプローチは渡りに船といったところでしょう。
また、シェール革命はアメリカにとっての中東の戦略的価値を低下させました。
昨年12月、アメリカはシリアからの撤退を開始しました。
アメリカは撤退の理由としてイスラム過激派組織「イスラム国」の掃討任務にメドがついたとしているのですけれども、イスラム国が壊滅に追い込まれたのは、ロシア軍がイスラム国を激しく空爆して、彼らの油田を破壊し、その資金源を断ったからだとも言われています。
これについて国際関係ジャーナリストの北野幸伯氏はアメリカはロシアに敗北したのだ、と指摘しています。
アメリカ軍がシリアから撤退するということは、「後は誰かに任せる」ということです。それは、基本的にシリア政府を支持してきたロシアとイランに任せる事を意味します。
そのイランに中国が食い込んでいるのですね。
しかも、トランプ大統領はNATOからの脱退も示唆する発言をしています。これも見方によれば、ヨーロッパを誰かに任せるということにもなります。
つまり、中東、ヨーロッパに対するアメリカの影響力が小さくなる訳で、その空隙を狙っての地域派遣争いが起こる可能性があると見ます。そしてそのプレーヤーの一人、またはプレーヤーの後見人として中国が収まる。そんな構図にも見えるのですね。
その一方でトランプ大統領は、安倍総理のセキュリティダイヤモンド構想、開かれたアジア太平洋戦略を支持し、コミットしています。
ユーラシア大陸を西へ勢力を伸ばす中国と、インド太平洋および環太平洋で勢力を固めようと動くアメリカ、そして日本。
先に紹介した国際関係ジャーナリストの北野幸伯氏は、「アメリカはシリアを捨てウクライナを捨て、ロシアと和解する。そして残るのは、中国との戦いだけ」と指摘しています。その通りだと思います。
これから世界の枠組みは大きく揺れ動き始めると思いますね。
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