ユネスコ世界記憶遺産登録制度改革と文化多様性条約批准というカード

 
今日はこの話題です。

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2月15~17日、安倍総理の特使としてフランスを訪問した萩生田光一自民党幹事長代行からユネスコのアズレ事務局長との会談しました。

会談の中で萩生田氏は「ユネスコの世界記憶遺産登録制度が歴史認識問題を悪化させるため改革を要求する」とし、複数の国に関わる場合は、関係国の意見も踏まえるよう主張しました。

これに対しアズレ氏も改革に前向きな姿勢を見せたそうです。

更に、羽生田氏はユネスコで採択された「文化多様性条約」について「日本が協約を批准するには世界記憶遺産関連の改革が必要だ」と述べ、改革の見極めが必要だと伝えています。

文化多様性条約とは、正式名称を「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」といい、2005年にパリで開催された第33回ユネスコ総会において、アメリカとイスラエルが反対しオーストラリアなど4ヶ国が棄権した以外、日本を含む148ヶ国が賛成となって採択された拘束力のある国際法です。

その内容は、各国が固有の文化を保護育成する政策を取ることを認めるもので、市場原理とは異なる文化的価値として経済的価値との調整を求めています。

この条約は発効に必要な30ヶ国以上が批准したため、2007年3月に発効されました。2015年9月現在、批准国はカナダやフランスなど欧州諸国をはじめ139ヶ国に達しているのですけれども、日本やアメリカは批准していません。

「文化の多様性」は、ユネスコ創立当初から重視されてきた問題なのですけれども、近年、版権など商業化された文化表現の取り扱いが問題となってきました。

いわゆる「コンテンツ産業」と呼ばれるこの世界はアメリカが圧倒的に強く、ハリウッド映画をはじめとして、アメリカ製コンテンツ産業は世界中に広がっています。

アメリカ以外の他国は、自国の映画その他文化的表現にかかわる産業を十分に発展させられなくなるのではないかと恐れ、この条約が構想されました。この条約を構想する中心になったのは、フランス、カナダ、ドイツ、そしてアフリカの多くの国を含むフランス語圏の国でした。

1986年に開始されたガットのウルグアイ・ラウンドで、フランスやカナダなどの諸国は、アメリカのハリウッド映画などの脅威に直面し、自国のオーディオ・ビジュアル産業を保護する必要性を感じていました。そこで、それらの国々は、文化的な財・サービスを「文化的例外」として性質付け、自由化の対象から除外するよう主張したのですね。

やがて、これら主張はガット・WTOからユネスコへと舞台を移し、2003年頃からユネスコで議論されるようになりました。

1984年にユネスコを脱退したアメリカが2003年にユネスコに復帰したのも、この条約の成立を阻むことが大きな理由の一つだったともいわれています。

アメリカは「条約は人権と基本的自由の否定、国際貿易の妨げに悪用される恐れがある」と非難し、「文化は政策で縛るものではない、文化の多様性の尊重という点では、アメリカ合衆国ほど模範的な国はない」と主張したのですけれども、多くの賛同を集めることはできず、2005年に条約は採択されました。

では、実際にアメリカが主張しているように、条約の悪用があったのかについてなのですけれども、独立行政法人産業研究所が、「文化多様性条約が発効後に文化的財の貿易にどのような影響を及ぼしたか」について世界110ヶ国を対象に2004~2010年の期間の貿易データを用いて検証しています。

それによると、文化多様性条約が偽装された保護主義の道具として締約国の文化的財の輸入を減少させた証拠は見つけることはできず、逆に条約が文化的財の輸入先の国の数を増加させ、文化遺産の輸入と、音楽および実演芸術関連財の輸入を押し上げた可能性があると結論づけています。

今のところは、文化多様性条約が悪用されている様子はないということですけれども、日本がこれを批准するかどうかは世界記憶遺産登録制度の改革具合にかかっている、とこちらもカードに使ったということです。

日本はユネスコの世界記憶遺産登録制度に苦しめられてきました。2015年、南京大虐殺関連資料が世界記憶遺産に登録された時、「世界記憶遺産制度が改善されるまで分担金を保留する」とユネスコに圧力を掛け、「記憶遺産申請案件に対して関連国から反対の意見が出る場合、事前協議をし、合意に至らなければ審査を延期し、最長4年間協議を続ける」という改善案を引き出しています。

ただ、これは事前合意の機会と、合意できなければ審査を延長するというだけのことで、4年待った結果、結局自分の意見が通らなかったという場合だってあるわけです。

今回の羽生田氏の要求は「複数の国に関わる場合は、関係国の意見も踏まえるように」と自分の意見も反映させるようにと一歩踏み込んだわけです。

2015年に中国の「南京大虐殺文書」が登録された時、対応が後手に回った外務省や文部科学省に官邸は激怒したと伝えられています。

安倍総理は周囲に「二度目の失敗は許されない」と話しているそうですから、世界記憶遺産登録制度の改革は安倍政権にとっても重要な位置づけが為されているということです。

日本の抗議にどこまでユネスコが対応してくるのか。今後の成り行きに注目ですね。

この記事へのコメント

  • ユウキ・コバ

    国連が主導する様々な機関は、
    先勝国有利に物事を進めるからそれ以外の国は冷遇されるのです。
    茶番は終わりをつげる?
    今後のようすを観察を要する。
    2019年02月24日 12:58

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