昨日の続きです。
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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
3月8日、中国の王毅国務委員兼外相は北京で開会中の全人代に合わせて記者会見しました。
会見で王毅外相は日中関係について「ついに正常な軌道に戻り、改善発展の良好な勢いが現れた……日本側が中国の発展を客観、理性的に扱い、これまでに合意した政治原則に従うなら、中日関係は障害や妨害を排除できる」と指摘しつつも、「関係改善は始まったばかりにすぎない。次にすべきことは『知行合一』だ……歴史に誠実に向き合い、現実を客観的に認識し、未来を積極的に切り開くということをやり遂げるべき……ハイレベルの往来は、条件が整えば自然と順調に運ぶだろう」と述べました。
6日、安倍総理は参院予算委員会で日中関係について「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を、新しい段階へ押し上げていきたい」と答弁していますけれども、王毅外相のコメントを見る限り、中国側は関係改善は始まったばかりであり、それも「これまでに合意した政治原則に従うなら」という条件付きの認識のようです。
そのこれまでに合意した政治原則とは何かというと、1972年の国交正常化時に発表した日中共同声明、1978年締結の日中平和友好条約、1998年発表の日中共同宣言、2008年発表の戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明のことだと思われます。
よく、日中関係の現状に強い不満を持ったとき、中国外交部が「中日間の政治文書」を取り出してくると指摘されていますけれども、今回は政治文書とダイレクトには言わないまでも、「これまでに合意した政治原則」と表現していますので、それに近いニュアンスがあると思われます。
後段でわざわざ「次にすべきことは『知行合一』だ」と述べていますから、口で関係改善といいながら、これまでに合意した政治原則から外れた行動をしてはならない、と牽制したのではないかと思われます。
では、何を牽制したのか。
一つ考えられるのはやはり、1972年の日中共同声明ではないかと思われます。そこの第2および第3項には一つの中国に関する原則が謳われているからです。次に引用します。
二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。先日、台湾の蔡英文総統は産経新聞の単独インタビューで、日本との安保対話強化を訴えていますけれども、それに反応した王毅外相の牽制発言ではないかと思いますね。
三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
中国が台湾の独立を警戒するのを横目に、蔡英文総統は「現状維持」政策を前面に出しつつ、それを確実に維持できるように動いています。
1月25日、蔡英文総統は台湾北部・新北市の三峡区にある国家中山科学研究院システム製造センターを訪れ、職員たちを激励すると共に、国防産業の今後50年間のための基礎を固めるよう訓示しました。
蔡総統は視察の挨拶の中で、国家中山科学研究院の努力があってこそ信頼できる国防戦力が保たれており、天弓三型ミサイルや雄風三型ミサイルはいずれも国家中山科学研究院の生み出した「台湾之光」であり、台湾の安全を守る「拳頭」だと評価。
そして、向こう50年に向けた基礎を固める計画として「量産の加速」、「将来に向けた人材育成の加速」、「産官学並びに内外との多元的な提携関係の安定的な拡大」の三つの目標を達成せねばならないと強調しました。
「量産の加速」では、国家中山科学研究院が品質の確保を前提とし、天弓三型ミサイルや雄風三型ミサイルの生産速度を高めることを求め、「将来に向けた人材育成の加速」として、国家中山科学研究院の人材面での継承の重視。そして、「産官学並びに内外との多元的な提携関係の安定的な拡大」として、国家中山科学研究院は国の行政法人として国防産業の環境を改善する使命を担っており、政府が軍備の自主開発で国防能力の強化を図る「国防自主」の政策をしっかりと実現しなければならないと述べています。
これらを見る限り、台湾は今後50年を睨んだ上で、自主防衛できる戦力を維持するための基礎作りを始めているとみてよいように思われます。
これらは、蔡英文総統が新たな経済発展モデルへの転換を目指して掲げた五大イノベーション計画の一つ「国防産業」の推進を睨んだものと思われます。
蔡英文政権は、政権発足時から5大イノベーション産業である「アジアのシリコンバレー・スマート機器」・「グリーンエネルギー」・「バイオ医療」・「国防産業」を掲げ、更に石油化学や鉄鋼業の省エネルギー・クリーン化を目指す「循環経済産業」と「農業バイオ産業」を合わせた「5+2」産業イノベーション計画を打ち出してきました。
この中の「アジア・シリコンバレー計画」は国家発展委員会が策定し、2016年から2023年までの8ヶ年計画で、研究・開発を中心とするイノベーションやスタートアップのための生態系を確立することを目指しています。
中でも、IoTイノベーションの推進については、米マイクロソフトが台湾に研究・開発センターを設置し、米Googleも「智慧台湾(Intelligent Taiwan)計画」を推進。更に米シスコシステムズも桃園にイノベーションセンターを設置する計画を明らかにしています。
その結果、2018年、台湾におけるIoT産業の生産高は39億米ドル(1兆1700億台湾元)と、前年比19%の成長を見せています。
2月14日、行政院の蘇貞昌院長は、行政院院会で国家発展委員会による「アジア・シリコンバレー推進計画」の進捗状況と成果に関する報告を聴取し、報告聴取後、「アジア・シリコンバレー計画」を含む「5+2産業イノベーション計画」は「未来と連結」、「海外と連結」、「地元と連結」したものでなければならないと述べました。
1つ目の「未来と連結」は、イノベーション技術を利用することで、いかにして国民の生活をより便利なものにするかの視点から、ブロックチェーンをスマートガバメントに応用し、情報処理の安全を確保。又はAと医療ビッグデータを結びつけ、国民により適切な医療サービスを提供し、支出の無駄を省くことや、フィンテックとモバイル決済を普及させ、国民の消費をより便利なものにするなどを挙げています。
2つ目の「海外と連結」では、国家発展委員会が草案をまとめている『新経済移民法』に期待を寄せ、教育部で目標数値を設定している台湾の一流大学でのハイテク人材の育成や海外の優秀な学生の誘致を推進。
そして、最後の「地元と連結」では台湾北部の桃園に「アジアシリコンバレーイノベーションセンター」と「IoTイノベーションセンター」を設立し、スマートシティ技術と地方創生政策を結びつけ、科学技術の地方都市への導入を促したいとしています。
これらの背景には、過去20年に渡って、台湾経済を牽引してきたエレクトロニクス産業が、中国本土の地場企業の興隆などで押されてきたことで、産業構造の転換に迫られているからだとも言われています。
要は、国を挙げて経済構造のイノベーションを行っているという訳です。
台湾は「世界経済フォーラム(WEF)」の2018年版「世界競争力ランキング」にて、ドイツ、アメリカ、スイスと並ぶ世界4つの「スーパー・イノベーター」と評価されています。
その意味では台湾を日米側に取りこんで置くというのは、地政学的意味だけではなく、経済的意味でも大切なことだと思いますね。
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