安倍総理が金正恩と向き合うとき

 
今日はこの話題です。

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3月8日、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞はハノイでの米朝首脳会談が合意なしで終わったことに言及した論評を掲載しました。

論評は、会談が物別れとなった結果を受け「唯一、日本の反動層だけはまるで待ち焦がれていた朗報に接したかのように拍手をしながら小憎らしく振る舞っている……実に憎たらしく、ビンタをくらわせたい輩だと言わざるを得ない」と述べています。

更に、労働新聞は「日本は自分たちに有利な方向にアメリカを動かそうとして、ロビー活動に人的物的資源を総動員した……日本が過去の罪悪について賠償しないかぎり、われわれとつきあう夢を見るべきではない」と安倍総理を名指しで批判。改めて過去の清算を求めました。

ビンタだの賠償など、北朝鮮が日本を罵るのはいつものことですけれども、北朝鮮は、今回の米朝首脳会談が決裂したのは、裏で日本が糸を引いていたからだといいたいようです。

けれども、3月8日、衆議院外務委員会で河野外相が米朝会談について「合意に至らなかったことは残念だが、事前の実務協議の段階で『なかなか進展は難しい』ということを日米で共有していた」と述べているとおり、最初から合意の見通しは低かったことが明らかになっています。

実際、北朝鮮は事前の実務者協議でかなり強気に出ており、協議の過程で「交渉は中止だ」と脅すことも何度かあったそうです。

事前協議で北朝鮮は、寧辺の一部の核施設の閉鎖を見返りに、軍事物資以外のほとんどの禁輸を解くような制裁解除を要求していたと見られています。

米朝双方の隔たりは大きく、事前協議では、互いの条件は合意に達しませんでした。

それでも、米朝首脳会談の直前、先乗りしていたポンペオ国務長官が、事前協議のために北朝鮮側のカウンターである金英哲・副委員長との会談を申し入れていたのですけれども、北朝鮮はこれを拒否。

首脳会談前夜の時点では、アメリカはもう合意そのものに期待は殆どしていななかったようです。

本番の首脳会談では、ボルトン大統領補佐官が、北朝鮮に対して核だけでなく弾道ミサイルと生物化学兵器の全廃を北朝鮮に要求。その対価として経済発展も含めた「ビッグディール」を持ちかけたそうなのですけれども、互いの溝は埋まることなく、交渉は決裂。合意は見送りに終わりました。

けれども、トランプ大統領が会談場所のメトロポールホテルで帰り支度をしている時、北朝鮮の崔善姫・外務次官がアメリカ代表団のところに駆けつけ、「寧辺の核施設廃棄の見返りに制裁の一部解除はどうか」との金正恩委員長のメッセージを届けました。アメリカ代表団側は、「寧辺の核施設の具体的な中身が不明確なので、明確にしてほしい」と返答。

崔善姫・外務次官はすぐに金正恩委員長のところに取って返すと、「寧辺のすべての核施設」との金正恩委員長の返事を得て、それをアメリカ代表団に伝えました。

アメリカ側は北朝鮮側がまだ協議を続けたがっているとは認識したものの、トランプ政権が考える取引にはまだまだ届かず、そのまま交渉は打ち切られました。

ただ、北朝鮮が協議を続けたがっていたことから、会談後、ポンペオ国務長官と記者会見に臨んだトランプ大統領は、会談の雰囲気が悪くなかったことに言及し、北朝鮮側を特に非難することもなく、今後の協議への期待を語りました。完全に糸が切れた訳ではないと示したわけです。

これらを見ると、トランプ政権にとって、合意見送りは最初から選択肢として視野にあったことが分かります。米朝首脳会談前にトランプ大統領が「非核化は急いでいない」と述べていたことも、それらが念頭にあったからかもしれません。

アメリカでは米朝首脳会談決裂後も、ポンペオ国務長官が早期の協議再開を模索するなどの動きに出ているそうで、3月7日には国務省高官が記者会見で、今後の協議への期待を表明しています。

それでも、先の米朝首脳会談では次の会談をいつやるとも話してはいないことから、また一からの交渉ということになります。

ただ、今回の米朝首脳会談で金正恩委員長は、トランプ大統領の要求が明確かつ強固なものであり、非核化への動きなりなんなり具体的なアクションを起こさない限り、経済制裁が解かれることはないと分かったはずです。

したがって、トランプ大統領が首脳会談で要求した内容のいくつかを実行することを考える必要があります。

そして、その要求は必ずしも非核化だけだった訳ではありません。

すでに、メディアでは、首脳会談冒頭で、トランプ大統領が金委員長に対して日本人拉致問題を提起したと報じられています。その時、金正恩書記長は、核とミサイル問題が最初の議題になると想定していたのか、驚いた表情を見せたそうです。

まぁ、このあたりは百戦錬磨のビジネスマンであるトランプ大統領の得意なところであったかもしれませんけれども、トランプ大統領は日本人拉致問題を会談中2回も持ち出したとされていますから、少なくとも、議題は核とミサイルだけではなく、拉致問題も取引カードの一枚であると明らかになった訳です。

つまり、金正恩委員長にとって、その重みはともかくとして、拉致問題を解決するから、見返りに経済制裁を緩和しろという、要求も出せなくもないという訳ですね。

当然、これはトランプ大統領と安倍総理との間で十分に示し合わせていることでもある筈です。

3月5日、安倍総理は参院予算委員会で、トランプ大統領が米朝首脳会談で日本人拉致問題を提起したことについて「米国がそこまで重視していると金委員長も理解しただろう。成果と考えている……次は私自身が金正恩朝鮮労働党委員長と向き合わなければならないと決意をしている」と答弁しています。まぁ、そういうことですね。

ただ、現時点でアメリカは、北朝鮮の非核化の度合いに応じて経済制裁を緩和する段階的非核化を否定しています。

3月11日、アメリカのビーガン北朝鮮担当特別代表がワシントンでの講演で、北朝鮮の非核化の進め方について「段階的に進めるつもりはない」とし、段階的な非核化に応じない方針は「トランプ大統領も明確だ。政権内で完全に一致している」と述べています。

これは、ハノイ会談前にビーガン特別代表が「北朝鮮が全てをなし遂げるまで私たちは何もしないと言ってきたわけではない」と柔軟な姿勢を示していたのを修正した形です。

これに対し、北朝鮮は12日、対韓国窓口機関が運営するウェブサイト「わが民族同士」がハノイでの米朝首脳会談に触れ「朝鮮半島に恒久的かつ強固な平和体制を構築して完全な非核化へと進むのは、われわれの確固たる立場だ……朝米首脳は今後も緊密に連携し、ハノイで論議された問題の解決のため生産的な対話を続けていく」と述べ、対話を続ける意向を示しました。

ただ、完全な非核化とはいうものの、その前に「恒久的かつ強固な平和体制を構築して」とありますから、終戦宣言なり、平和条約なり、なんらかの見返りを得てから非核化すると、従来の路線からそれ程変化している訳ではありません。

このあたりはまだまだ、駆け引きが続くと思われますけれども、ただ、これまでサシでアメリカと交渉していると思っていた北朝鮮が、実は日本人拉致問題も交渉カードになると分かったことで、日本にアプローチを掛けてくる可能性が上がったと思います。

もしも、日本から拉致問題解決の見返りに大金をせしめることができれば、それで時間が稼げますからね。その意味では、北朝鮮がビンタだ賠償だと日本を罵るのも、拉致問題カードをより高く売るため、あわよくば、拉致問題を取り上げることなく、過去の賠償だ、だけで金をふんだくろうとしていると見る事だって出来る訳です。

そうしたことを考えると日本は、北朝鮮が拉致問題をカードに出したとしても、その見返りとして経済制裁緩和をカードに使うべきではありません。せっかく苦労して構築した包囲網に穴を空けるばかりか、他の国もそれなら俺も緩和すると言い出しかねないからです。

つまり経済制裁以外のカードで応じるべきでしょうね。

9日、2020年の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が、選手団参加や入場券配分の手続きを行うために各国・地域の国内オリンピック委員会が必要とするIDなどの電子情報を北朝鮮にだけ提供していないことが明らかになりました。

これは、日本が独自に北朝鮮国籍保有者の入国を原則禁じる制裁を行っている為です。北朝鮮側は「五輪憲章の精神に反する」と国際オリンピック委員会を通して正式に抗議することも検討しているようですけれども、日本人拉致問題については、このような日本独自制裁をカードとして当てるべきでしょうね。

それならば、国連安保理決議に基づいた経済制裁に穴を空けることはありませんからね。

果たして、北朝鮮がどのタイミングで日本にアプローチを掛けてくるのか。準備を整えて様子見ですね。

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