今日はこの話題です。


3月11日、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会に属する専門家パネルが報告書を出しました。
報告書は378ページに及ぶ分厚いもので、北朝鮮が弾道ミサイルの開発・実験を民間の工場や空港などで続けていることや、国連安保理の制裁決議に違反し、石油の輸入や石炭の輸出といった不法な取引を「大規模に」拡大していることを報告しています。
報告書の目次は次のとおり
I. はじめに報告では、北朝鮮が制裁を無効化する手段として、海上で石油製品や石炭を違法に積み替える「瀬取り」を拡大していると指摘。各国の銀行や保険会社が「意図せずして」こうした瀬取り行為を容易にする役割を果たしていると非難しています。
II. 部門別および海事制裁
III. 禁輸、指定された団体および個人
IV. ファイナンス
V. 核および弾道ミサイル計画に関する最近の活動
VI. 意図しない制裁の影響
VII. 国内実施報告書
附属書
報告書は、17年4月~10月に北朝鮮産の石炭や鉄など計4万トンの原産地を偽装し、ロシア経由で韓国に密輸した事件について調査中と明記。この事件では、韓国人4人と貿易会社5社が密輸に関与したとして起訴されています。
また、北朝鮮は小型武器や軽量兵器などの装備をリビア、スーダン、イエメンの反体制派に供給し、これらの取引に国外の仲介業者が関与しているとしています。
更に報告書は、北朝鮮が世界中の金融機関に対するハッカー攻撃も試みていると報告しています。
昨年1月に日本の仮想通貨交換業者「コインチェック」から巨額の仮想通貨が流出した事件がありましたけれども、報告書(P207)によるとこれも北朝鮮と関係があると見られているサイバー犯罪グループ「ラザルス」の仕業で、2017年1月~18年9月の間、サイバー攻撃を用いて仮想通貨交換業者から少なくとも5億7100万ドル(約635億円)を窃取したと推計しています。
リストを見ると、日本ではコインチェックだけでなくZaifもやられたようです。
報告書は、文章だけでなく、写真や図表をふんだんに使っているのですけれども、その中に韓国の文在寅大統領が、昨年9月18日に訪朝した際、金正恩委員長と一緒に搭乗したベンツリムジン車を北朝鮮の制裁違反の事例のひとつとして掲載しています。
既に該当の写真はネットにアップされていて、一部で話題になっていますけれども、報告書の47ページにがっつり載っていますね。
報告書では、文大統領が昨年9月に、金正恩と共に白頭山天地を訪問したときに利用したレクサスLX570車も制裁違反項目として指定。報告書はベンツとロールスロイスファントム、そして、レクサス車を制裁違反贅沢品として報告しています。
これについて、国連の対北制裁委員会は、報告書作成のために、韓国大統領府の警護処に該当車両の年式や仕様などを問い合わせていたそうです。
焦った韓国政府は、複数のチャネルを介して、制裁委員会に、文大統領がベンツに乗った写真を抜いたり、ベンツ車のモデル写真だけを掲載することを要請したのですけれども、聞き入れらなかったようです。国連とてそうそう甘くない。
元国連駐在の外交官は、「制裁報告書に、対北韓事業を国内の親北企業が指摘されたことはあったが、韓国の大統領の写真が入ったのは初めてだと思う……国家的にかなり恥ずかしいこと」と述べ、別の元外交官は、「制裁委が問題視したのは金正恩のベンツだが、文大統領がそのベンツに乗った写真が報告書に掲載されているので、ややもすると、国際社会に文大統領が制裁違反の共犯として映り兼ねない」と指摘。
更に元国家情報院幹部は、「制裁委があえて文大統領の写真を載せたのは、文大統領が問題のベンツが制裁違反品目であることを知りながら、これを無視して乗ったと見て、迂回的に、道義的責任を問うための意図とも考えられる」とコメントしています。
そもそも、写真を抜いてくれというのは、韓国が制裁違反に加担していると見做されかねないと危惧しているからに他なりません。自分でも後ろめたいことをやっていることを自覚しているのですね。
世界も文大統領が、北朝鮮の回し者だと見做し始めています。
昨年10月、ニューヨークタイムズは「South Korea’s Leader Vouches for Kim’s Sincerity, as Critics See Deception」という記事で「もしも金氏が核の狂人という自身のイメージから、成熟した交渉人へと変えたいと望んだとしても、文氏より優れた工作員を見つけることは出来なかっただろう (If Mr. Kim wanted to change his image from nuclear madman to mature negotiator, it’s unlikely he could have found a better agent than Mr. Moon).」と評されています。
文大統領は外国の新聞からは、ストレートに工作員呼ばわりされている。世界の見方はこうなのですね。
ここにきて韓国野党の文大統領攻撃も激しさを増してきました。
3月13日、韓国野党「自由韓国党」の黄教安代表は、前日12日に自由韓国党のナ・ギョンウォン院内代表が文大統領を「金正恩の首席報道官」と例えたことに対して与党「共に民主党」が抗議した事を取り上げ、国会が過去の独裁時代に回帰しているのではないか……権力機関、司法府、メディアをすべて掌握したこの政権が、今や議会まで掌握しようとしているのではないか……左派独裁政権の議会掌握の暴挙」」と批判。
そして「ブルームバーグ通信は『首席報道官』といったが、ニューヨーク・タイムズはもっとひどく『エージェント』と表現した……外国で報道されるときは一言も言えないくせに第一野党の院内代表にしたことを見るがいい。本当にあきれたことだ」とボルテージを上げています。
昨年10月に言われていたことを、このタイミングで持ち出すということは、ハノイでの米朝会談失敗もあり、今が文大統領を引きずり下ろすチャンスと見ているのでしょう。
14日、韓国の世論調査会社、リアルメーターが発表した文在寅大統領の支持率は45%と前週から1.3ポイント下落。不支持率は3.3ポイント上昇の50.1%と初めて50%を上回りました。
大統領就任時には「新しい韓国のため、未来に向かって共に前進する」と勇ましかった文在寅大統領の政権運営は「ムーンウォーク」のごとく、前進しているようにみせて、後退していたことが誰の目にも明らかになってきたように思いますね。
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