金委員長、ノーマネーでフィニッシュです

 
今日はこの話題です。

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2月28日、注目されていた2回目の米朝首脳会談が物別れに終わりました。

米朝首脳会談の会場は、ハノイのメトロポールホテル。このホテルはベトナムがフランスの植民地だった1901年に創業した名門ホテルです。けれども、ベトナム戦争が終わった1975年当時は、古ぼけて汚く。大量のゴキブリが床をはい回り、ウサギのような大きなネズミが走るかと思えば、蛇口をひねるとイトミミズのような怪しげなものが出てくるという有様だったそうです。

それが高級ホテルとして生まれ変わったのは、ベトナムがドイモイと呼ばれる改革開放政策をとり、市場経済化を進めたからだったとされています。

米朝首脳会談にこのメトロポールホテルが選ばれたということは、北朝鮮の改革開放による経済改革を象徴する意味合いもあったかもしれません。

会談が始まる前は、トランプ大統領も金正恩委員長も共に余裕を見せていました。

トランプ大統領は米朝首脳会談に先立って行われたベトナムのグエン・スアン・フック首相との昼食会の冒頭で「金委員長との会談が楽しみだ。彼は短期間で北朝鮮を偉大な経済大国にすることができる」と述べ、何らかの合意に含みを持たせるかのような発言をしていました。

一方、金正恩委員長は、27日、トランプ大統領と再会した直後に「不信と誤解の敵対的な古い慣行が行く道を阻もうとしたが、それらを打ち壊してハノイに来た」と述べ、28日の会談前にも「われわれの出会いを懐疑的に見ていた人々の中にも、われわれが向き合って素晴らしい時間を送っていることを、まるでファンタジー映画の一場面として見ている人がいるだろう」と話し、記者から非核化への準備ができているかと聞かれ、「そうでなければここにいなかっただろう」と返答しています。

また、25日には、北朝鮮の朴泰成党副委員長が党機関紙の労働新聞への寄稿で「愛国献身の大長征は、社会主義強国の建設を早め、祖国史に永遠に輝くだろう」と、今回の長期外遊は歴史的成果を挙げると国内向けに「勝利宣言」していました。

トランプ大統領、金正恩委員長共に、自分が望む方向での合意ができると考えていたのかもしれません。

では、その両者の望むものとは何かというと、それはもう言うまでもない。トランプ大統領は北朝鮮の完全な非核化ですし、金正恩委員長は、限定的な非核化措置を見返りにしての経済制裁解除です。

金正恩委員長は今年の正月の新年の辞で「自立経済の潜在力を余すところなく発揮させ、経済発展の新たな要素と動力を生かすための戦略的対策を講じ、……経済の活性化を推進していかなければならない」と経済を主眼に置く一方、核兵器については「作りも試験もしない、使用も伝播もしない」とだけのべ、廃棄するとは一言もいいませんでした。

また、2月8日、朝鮮人民軍創建記念日に行った演説では「『祖国防衛も社会主義建設も全て引き受けよう』とのスローガンを掲げ、国家経済発展5ヶ年戦略の鍵となる今年、軍が一役を果たすべきだ」と軍を経済発展に投入する方針を打ち出していました。

これらのことから、いくつかの核関連施設なり、ミサイルなりを廃棄して「譲歩」したかのように見せかけて、見返りに経済制裁解除を狙っていたのではないかと推測できます。

実際、トランプ大統領は会談後の記者会見で、正恩氏が核爆弾の原料をつくれる寧辺核施設の廃棄の見返りに、経済制裁の全面解除を求めたことは受け入れられないとし、「席を立たざるを得なかった」と語っています。

それは何故かというと、北朝鮮が持っている核施設は寧辺だけでなく、アメリカは北朝鮮の持っている核の全面廃棄を求めていたからです。

トランプ大統領は記者会見で「寧辺の核施設廃棄プラスアルファを望んでいた。これまでの核施設以外に、われわれが発見したものがある」と述べ、記者から「新たに発見したのはウラン濃縮施設か」との質問に「そうだ。われわれが知っていた事実を北朝鮮は驚いていたようだ」とコメントしています。

会見に同席したマイク・ポンぺオ国務長官も「寧辺核施設以外にも非常に大規模な核施設がある」とし、「ミサイルも核弾頭の兵器システムも抜けていたので、核リストの作成や申告などで合意できなかった」と説明しています。

つまり、金正恩委員長は、寧辺の核施設以外の核施設を隠し持ったまま、経済制裁解除を求めていたのですね。要するにアメリカと騙そうとしていた訳です。

元からアメリカは核の全面廃棄を求めていたことなどとっくに分かっていたはずなのに騙せるとでも思っていたのか。脇の甘さを感じます。トランプ大統領と比べるとちょっと格が違っていましたね。

もっとも、産経新聞は、金正恩委員長は26日にベトナムに到着した際、専用列車を降りると、長旅に疲れたように指でまぶたを押さえ、メディアの目も気にせず、たばこを吸い、妹の金与正氏が両手に持った灰皿で吸い殻を受け取ったとして異変が感じられたと報じています。

それによると、金正恩委員長は、そのまま車でハノイ中心部のホテルに直行すると、当初計画されていたベトナムの工業地帯などへの視察をキャンセルし、北朝鮮大使館訪問やトランプ氏との会談日程を除いてホテルにこもり切りになっていたそうです。

産経新聞は、これらのことから、金正恩委員長は到着後に国務委員会の金革哲対米特別代表らからアメリカとの実務者協議の進捗について報告を受けて、交渉が平行線に終わったことを知らされた可能性が高いとし、協議の難航を受けて急遽、宿泊先での側近らとの打開策の打ち合わせに切り替えたことも考えられるとしています。

けれども、会談前日の現地で対策を考えなければいけないという時点でもう負けています。圧倒的に準備が足りない。

金正恩委員長の会談決裂後の表情をみれば、一目瞭然です。かなり昔に流行ったテレビ番組風にいえば「ノーマネーでフィニッシュ」です。

これで、金正恩委員長は一転窮地に立たされました。

金正恩委員長は経済制裁が続く中、本気で核を捨てるのか、それとも体制を維持に躍起なるのか、選択を迫られることになります。

仮に本当に全ての核を廃棄しようと、再会談をしたくても、トランプ大統領との次回会談の約束は特になかったようですから、再会談をセッティングするところから始めなければなりません。

なんとなれば、トランプ大統領は北朝鮮の言い分を一切スルーしたっていいわけです。ミサイルをバンバン飛ばせた昔と違って、今の北朝鮮にはがっつり経済制裁がかかっています。時間が経てば経つほど苦しくなるのは北朝鮮の方ですからね。

その意味では、日本にとっては、トランプ大統領が当初の原則を揺るがせにせず、安易な妥協をしなかったことは僥倖でした。

メディアの一部では、今回の米朝首脳会談は何の成果もなかったと報じているところもあるようですけれども、今後の影響まで考えると全然そんなことはない。「北朝鮮の完全なる非核化が為されない限り、経済制裁は解除されない」ということが世界の目に改めて晒されたのです。

世界がじっとしている訳がありません。

28日、韓国の聯合ニュースは、韓国政府が李洙勲駐日大使の交代を検討しており、南官杓大統領府国家安保室第2次長が後任を務める見込みであると報じ、文在寅大統領が日韓関係の改善を試みようとする姿勢の表れだと分析しています。

また、文在寅大統領も3月1日の「三・一運動記念式」での演説で、日本に対する批判を控え、日韓関係強化を強調するなど、光速のすり寄りを見せています。

実に現金なものですけれども、トランプ大統領が金正恩委員長との交渉を打ち切り、席を立ったことが早くも効果を見せています。

今後、北朝鮮が日本にアプローチを掛けてくるかどうかは分かりませんけれども、仮にアメリカとの再会談をしたいと考えた場合、トランプ大統領と良好な関係の安倍総理を頼ってくる可能性もないわけではありません。

北朝鮮が動いてくるまでは、日本は慌てず様子見でよいかと思いますね。

この記事へのコメント

  • 正恩は慢心中

    飴タイムが終了し、いよいよ次は米が鞭を振るう番ですか。8月か9月くらいですかね。
    2019年03月02日 06:49

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