選ばないという選択は世界を助けるか

 
昨日の続きです。

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決裂に終わった第2回米朝首脳会談ですけれども、アメリカは公式には決裂したとは見ていないとしています。

会談後の記者会見でトランプ大統領は「私たちは今回はいくつかの選択肢があったものの、その選択肢は選ばないことを決めた」と述べています。

つまり合意しないということ自体が選択肢の一つだったという訳です。

アメリカが、この「選ばない」という選択肢を予め用意していたとすると、満足する合意には達しない可能性があると想定していたことになります。

トランプ大統領は合意について「今日、合意に署名することもできた。文書も準備できていた。しかし、適切ではなかった。正しいことをしたいと思う。早くやるよりも正しいことをしたい」と述べていますけれども、実に示唆に富む発言です。

これは、もはや北朝鮮流の瀬戸際外交は通用しないということを示しているからです。

昨年6月の第一回首脳会談では、トランプ大統領は、国連安保理による経済制裁を取り付け、空母打撃艦隊を半島周辺に派遣するなど、北朝鮮の軍事挑発を上回る軍事的圧力を掛けて、金正恩委員長をシンガポールに引き釣り出しました。

そして、非核化に向けて努力するという合意文書を取り付けると、経済制裁を維持したまま、北朝鮮のバックにいる中国に対して、対中関税引き上げなど締め上げはじめ、北朝鮮への「補給路」を切断しに掛かりました。

そうした中での第2回米朝首脳会談です。戦略的に不敗の地に立った上での会談です。トランプ大統領が妥協する理由は何一つありません。

筆者にはトランプ大統領が会談の結果ではなく、会談に至るまでのプロセスを含めて交渉をしているように見えます。そしてそれだけでなく、会談の結果が世界に与える影響まで考えて動いているように見えますね。

トランプ大統領は会談後の記者会見で、先ほどの「正しいことをしたい」発言に続けて「国連とのパートナーシップがあり、ロシア、中国、その他との関係もある。そして、韓国も非常に重要だ。日本もそうだ。われわれが築いた信頼を壊すようなことはしたくない……制裁の強化については話したくない。北朝鮮でも多くの人々が生活をしていかなければならない。私の態度が変わってきているかもしれないが、私が金氏のことを大変に良く知るようになったからだ。韓国のため、そして日本のため、そして中国のために話をしていきたいと思っている」と述べています。

トランプ大統領は、世界、とりわけ東アジアの諸国に与える影響をも考慮した上で北朝鮮との会談を考えているのではないかと思います。自身の体制維持のため、核を手放さずに経済制裁を解除させたいという頭で会談に臨んだ金正恩委員長とは器が違う。見ている視点の高さが違いすぎますね。

そうした世界的観点でトランプ大統領が金正恩委員長との会談を考えているとするならば、その結論は完全勝利しか有り得ない。少しでも譲歩した結果になったなら、今度は、中国、あるいはロシアが同じく譲歩を迫ってくることが考えられるからです。

もし、仮に、トランプ大統領が今回のハノイ会談で、寧辺の核施設廃棄と引き換えに制裁の全面解除を飲んだとしたら、裏で隠し持っていたとされる別の核施設を認めるのみならず、トランプ相手には「隠して」騙せばよいのだ、という悪しき教訓を与えることになります。

なんとなれば、北朝鮮のようにやればいいのだとばかり、中国が台湾に触手を伸ばして、併合なりなんなり強硬手段に出てこないとも限りません。それは世界にとっては良くないことでしょう。

今回の第二回米朝会談で見せたトランプ大統領の妥協しない姿勢は北朝鮮だけでなく、中国にもダメージを与えたのではないかと思われます。少なくとも、舐めて掛かれる相手ではない、と世界は認識したはずです。

さて、交渉が"決裂"し、顔を真っ赤にして平壌に帰ることになった金正恩委員長ですけれども、今後どう出てくるのか。

これについて、3月1日深夜、北朝鮮の李容浩外相はベトナム・ハノイのホテルで記者会見を開き、北朝鮮側は寧辺の核施設廃棄と引き換えに国連制裁の一部を解除するよう現実的提案をしたとし、また核実験と長距離ミサイル発射実験を永久に中止すると文書で確約する用意があることも提案したと述べ、制裁の全面解除を要求したとのトランプ大統領の説明を否定しました。

李容浩外相によると、解除を求めたのは、国連安全保障理事会が2016~17年に採択した決議による制裁のうち民生分野の一部で、代わりにウラン濃縮施設を含め寧辺の核施設を米専門家の立ち会いの下、永久に廃棄すると提案したのに対し、アメリカ側は「寧辺廃棄以外にもう一つすべきだ」と最後まで譲らなかったと説明しています。

何やら「寧辺の核施設をすれば十分すぎるほどの譲歩だろう。これでアメリカが合意しないのはおかしい」とでも言わんばかりの口ぶりです。

そこからは、自分達はアメリカと一対一のサシで交渉しているのだ、という、どこか自負めいたものを感じます。

米朝首脳会談が初日の2月27日、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、日本が国連安全保障理事会の常任理事国を目指すのは「せん越で無分別」であるとする論評を掲載。

日本は第2次世界大戦の「戦犯国の中で唯一に過去清算を正しくしなかった国だ……日本が図々しくも世界の平和と安全保障を使命とする国連安保理常任理事国のポストを欲しがること自体が国連憲章に対する露骨な無視であり、人類の良心に対する愚弄、挑戦である」と主張。

その上で「日本がやるべきことは、特大型反人倫犯罪に対する国家的・法的責任を認め、徹底した謝罪と賠償をすることだけ」だと強調しました。

トランプ大統領が安倍総理の依頼を受け、米朝首脳会談で日本人拉致問題を話題に出すと思われるタイミングで「日本は謝罪と賠償だけしていろ」と言い放った。これは要するに「会談は北朝鮮とアメリカとの会談なのだ、日本など眼中にない、すっこんでいろ」ということです。

これを見ても、やはり北朝鮮側には、我々はアメリカと対等なのだ、その立場で交渉をしているのだ、という自負があったのではないかと思えてきます。

けれども、先ほども述べたように、トランプ大統領が東アジアないし世界を視野にいれた上で会談に臨んでいたとするならば、彼が世界を背負って交渉していることになります。

北朝鮮は一対一で交渉しているつもりだったのが、何のことはない、北朝鮮対世界の構図になっていたというわけです。

少なくとも、両首脳が見ている世界観でそのくらいの違いがあったように思いますね。

先の北朝鮮の李容浩外相の記者会見に同席した崔善姫外務次官は、金正恩委員長が「部分的な解除さえ難しいとする米側の反応をみて、交渉への意欲を少し失ったのではないかと感じた」とも語っていますけれども、そうだとすれば、しばらくは何も動かないことも予想されます。

ただ、3月1日、ポンペオ国務長官は「交渉の席への復帰を希望している」と発言し、北朝鮮の国営メディアも「生産的な対話」を続ける方針を伝えていますから、また仕切り直して交渉が始まる可能性もあります。

ただ、北朝鮮が非核化に動き出さない限り、経済制裁は解かれることはない。かといって、今までのようなミサイル発射などの瀬戸際外交をやるのも難しい。

今回の会談後の記者会見でトランプ大統領は、北朝鮮が「ロケットの実験や核実験は行わないと言っていた。言葉通りに受け入れて信じている」と述べているのですね。それを裏切ろうものなら、トランプ大統領の軍事圧力、あるいは空爆される可能性だってあります。

更に一歩追いつめられた金正恩委員長。最早、アメリカに土下座して全ての核を廃棄する他、平安に済む道はないかと思いますね。
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この記事へのコメント

  • >筆者にはトランプ大統領が会談の結果ではなく、会談に至るまでのプロセスを含めて交渉をしているように見えます。
    >そしてそれだけでなく、会談の結果が世界に与える影響まで考えて動いているように見えますね。

    漫画「ドリフターズ」の織田信長の台詞を思い出します。

    「合戦そのものはそれまで積んだ事の帰結よ
    合戦に到るまで何をするかが俺は戦だと思っとる
    猿(秀吉)以外 本質は誰も理解せんかったがな」
    2019年03月03日 17:41

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