昨日の続きです。


先日、韓国大統領府が文在寅大統領の訪米とトランプ大統領との米韓首脳会談を行うと明らかにしました。
韓国側は「完全な非核化を通じた朝鮮半島平和体制の構築に向けた協議を行う」としているのですけれども、米韓で経済制裁の緩和や南北共同事業などを巡っては、文大統領は北朝鮮の非核化交渉を前進させるため、米朝間の「仲介」の努力を行う旨を伝えると見られるのに対し、トランプ大統領は非核化実現まで制裁圧力を維持する米側の考えを伝達する構えだと見られています。
それを示唆するものとして、ロイターがハノイでの米朝首脳会談で、トランプ大統領が金正恩委員長に非核化に対する要求を綴った文書を渡していたことを報じています。
この文書は、アメリカが「最終的で完全に検証可能な非核化」とは何を意味するのかの明確かつ簡潔な定義を北朝鮮に伝える事を目的としたもので、文書には下記の要求があったようです。
(1)核開発計画の完全な申告とアメリカを含む国際査察団の全面的な査察受け入れロイターによると、アメリカの要求はボルトン大統領補佐官が主張してきた「リビア方式」に準じたもののようです。
(2)あらゆる核関連活動の停止と新規の関連施設の建設中止
(3)全ての核関連施設の廃棄
(4)核開発に携わる科学者・技術者の商業部門への異動
リビア方式については昨年5月にエントリーした「南北高官会談中止宣言に見る金正恩の焦り」で取り上げたことがありますけれども、リビア方式とは、2003年にジョージ・ブッシュ政権が採用した方式のことです。
当時アメリカはリビアの核関連施設をすべて自由な査察の対象とし、しかも数カ月という短期間に核関連の機材や技術をすべて押収して、しかもアメリカ国内の施設へと運んで破壊しました。
確かに、ロイターが報じている内容はリビア方式によく似ています。
ワシントンのシンクタンク「スティムソン・センター」のフェローで、「38 North」の編集長であるジェニー・タウン氏は「これはボルトンが最初から望んでいたことであり、それは明らかにうまくいかないだろう」と件の文書の内容は驚くにあたらないと指摘しています。
要するにアメリカの「完全な非核化」の要求は、文字通り「完全な」ものであった訳です。
ハノイ会談でこの内容を突き付けられた金正恩は面食らったであろうと思われます。まぁ、交渉が決裂するのも当然だったということですね。
この報道が、米韓首脳会談が決まった直後のタイミングで報じられる。これはもう、韓国の文在寅大統領に対して牽制し、プレッシャーを掛ける意味合いがあるということです。
まぁ、韓国は「金剛山観光再開と開城工業団地再稼働問題を言及するつもりなら来ないでもらいたい」とまで言われていたのですから、首脳会談でこの話題を出しても無駄だと予め突き付けた形になります。
また、3月28日、アメリカ国務省の関係者はラジオ放送の「ボイス・オブ・アメリカ」で「我々は北朝鮮が非核化するまで圧迫キャンペーンを継続する……我々は、禁止された行動を取ったり制裁回避を促進したりする団体に対し、独自行動を取ることをためらわないだろう」と述べています。
禁止された行動や制裁回避の手助けする団体に独自行動を取る、というのは、独自制裁も厭わないということです。
昨年9月、アメリカ財務省は、韓国の国策銀行である産業・企業銀行と民間銀行であるKB国民・新韓・NH農協・ウリィ・ハナ銀行などと電話会議を行い、直接、経済制裁の遵守を要求しています。
それを考えると、先日、制裁破りをした韓国も独自制裁のターゲットに入ることは十分可能性があります。
昨年と比べて米韓関係は悪化しています。今回の米韓首脳会談でどんな話になるのか。北朝鮮制裁について、トランプ大統領が文大統領に釘を刺すだけで終わるとは思いますけれども、文大統領にとっては政権維持の為の最後のチャンスかもしれませんね。
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