ファーウェイにベットするドイツ

 
昨日の続きです。

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アメリカが中心となって、世界各国に5Gネットワークからファーウェイ製品の排除を要請する中、ドイツ政府は、アメリカの要請を拒絶する意向を固めたと報じられています。

ドイツ連邦ネットワーク庁ヨッヘン・ホーマン長官はイギリス・フィナンシャル・タイムズの取材に「ファーウェイを含む、いかなるサプライヤーも排除しない方針を固めた……ファーウェイはこの分野で多くの特許を保有している。彼らを排除したなら、我が国の5Gネットワーク整備が遅延することになる」と述べました。

ドイツ政府の決定は「ファーウェイが中国政府の要請を受けて、スパイ行為を行っているという明確な証拠はない」とする通信業界の意見を聞き入れたもので、ホーマン長官はファーウェイやその他のベンダーの製品の導入にあたり、独自の厳格なセキュリティ基準を適用すると宣言しました。

数日前、ドイツの情報セキュリティ担当官庁、BSI(Bundesamt für Sicherheit in der Informationstechnik)が 5Gモバイル・ネットワーク構築にあたって必要なセキュリティ要件を発表しているのですけれども、この要件には入札からファーウェイを排除する明示的条項は含まれていなかったのですね。ホーマン長官の発言はこれを裏付ける形となりました。

なぜそこまでドイツはファーウェイを導入しようとするのか。

意外にもドイツはワイヤレス通信で遅れを取っています。ワイヤレスのダウンロード速度は世界46位に留まっています。そこで5Gへの移行によりデジタル分野での大幅な遅れを取り戻したいと考えていると見られています。

既にファーウェイはドイツ通信会社に食い込んでいます。

2016年7月、ドイツテレコムは、華為、アウディ、トヨタと共同で、コネクテッドカー向け次世代通信技術LTE-Vehicular(LTE-V)の実証実験をインゴルシュタット市の公道で実施。LTE-Vの標準化及び、5G技術を活用した自動車向けアプリケーション開発を共同推進していくことで合意しています。更に、2017年9月には、首都ベルリンで5Gの実証実験を実施しています。

ドイツテレコムは、交通管制や信号、環境モニタリング、スマートグリッドなど様々な用途に5G回線を利用する計画を検討していて、2020年から5Gの実用化を目指しています。

今のところ、5G周波数割り当ての入札にはドイツテレコム、ボーダフォン、テレフォニカ・ドイツ、ユナイテッド・インターネットの4社が参加し、ファーウェイは入っていないのですけれども、もれら入札参加の4社にアンテナやルーターなどの重要機器については、ファーウェイが提供しているのですね。

入札で周波数を勝ち取った企業は98%の世帯や国内の高速道路、鉄道線路に回線を行き渡らせる必要があるそうですから、もうドイツ国内の通信網の殆どを手中に収めることになります。ですから、もしファーウェイがアンテナやルーターなどに「余計なもの」を仕込んでいた場合は、ドイツ中の情報を抑えることが出来てしまいます。

ファーウェイ排除を訴えるアメリカはドイツに何度も警告を発していました。

3月11日、ベルリンの在ドイツ米大使館は、同盟国が5G移動通信網で信頼できないベンダーの製品を使用すれば、将来的なアメリカ政府との機密情報の共有に制限がかかる可能性があると発表しています。

また、4月13日、北大西洋条約機構(NATO)軍最高司令官を兼務するスカパロッティ氏はアメリカ下院軍事委員会で、ドイツを念頭に置いた欧州との貿易交渉に関する質問を受け、「特に5Gについて、周波数帯域幅の情報処理能力や性能は途方もないという点で、電気通信の根幹に関わる」と、防衛通信網内にそうした危険が存在する国とは通信しない考えだと述べています。

ただ、アメリカ国内もファーウェイ排除で一枚岩になっている訳でもないようで、ドイツの地元紙フランクフルター・アルゲマイネ日曜版は、ドイツ政府の匿名筋の話として「アメリカの一部の政府関係者はドイツ政府が5G導入にあたって講じようとしている、セキュリティ対策が十分であるとの認識を示した」と伝えています。

このようにアメリカ政府の一部の高官らは、セキュリティのリスクを抑えつつファーウェイ製品を受けいれることに同意しつつあるとも言われているのですけれども、他の政治家や軍関係者らは、依然として同盟国に対しファーウェイ排除を呼びかけています。

特に、軍事機密などは盗聴されてしまったらバカになりませんからね。慎重になるのも無理からぬことです。

それを考えると、ドイツがファーウェイを排除せず、またファーウェイも自身のルータなどに「余計なもの」を仕込んでいなかったとしても、NATOの軍事通信の枠組みからドイツ軍が排除される可能性もないとはいえません。

アメリカの要請を受けてファーウェイを排除する国と排除しない国が段々と色分けされてきました。EUにも通信分野を切っ掛けに亀裂とはいわないまでも揺さぶりはありそうですね。

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