昨日の続きです。


韓国が特使を派遣しようとしているのは日本だけではありません。文在寅大統領が最も関心を寄せている北朝鮮にも特使派遣するのではないかといわれています。
中央日報は、青瓦台はまず対北朝鮮特使の派遣を推進しているとし、対北朝鮮特使には鄭義溶国家安保室長と徐薫国家情報院長が候補に挙がり、また一部では李洛淵首相が特使になるのではとも囁かれています。
トランプ大統領の訪日日程が来月26日から28日になったと発表されていることから、韓国としてはそれより前に南北首脳会談が実現するよう北朝鮮に働きかけるともみられています。
なぜかというと、4月11日に行われた"2分間の"米韓首脳会談で文在寅大統領が唯一口にできたのが「南北首脳会談」だったからです。その時文大統領は、いつ出来るかも分からないと答え、トランプ大統領を呆れさせました。
けれども、トランプ大統領が来月末に日本にくるのなら、当然、韓国にも来て貰わないと面目が立たない。何かと日本を気にする韓国なら考えそうなことです。
しかしトランプ大統領に訪韓を要請するにしても、何の手土産もなしで受けてくれる筈もありません。
となると、やはりその前に南北首脳会談をやって置かなければならないと焦るのは理解できます。
そんな状況で韓国が、北朝鮮に南北首脳会談を持ちかけたとしても、おそらく北朝鮮は相手にしないでしょう。
実際、17日、韓国統一部の金錬鉄長官は記者会見で「北朝鮮への特使派遣を提案したのに、北朝鮮からは反応がない状況なのか」と質問され「いろいろと検討しているので、整理され次第、申し上げる」と答えるのが精一杯でした。
北朝鮮は、先の米韓首脳会談について、「騒がしい行脚を催促しておせっかいな『仲裁者』『促進者』の振る舞いをするのではなく、民族の一員として気を確かに持って自分が言うべきことは堂々と言いながら、民族の利益を擁護する当事者にならなければならない」と韓国に手下なって働けと要求しています。
それこそ、手土産がなければ、北朝鮮は歯牙にもかけないと思いますね。
かといって経済制裁が緩和できる見込みもありません。
先の首脳会談で、トランプ大統領は金剛山観光と開城工業団地の再開を否定しています。
4月11日の米韓首脳会談でトランプ大統領は文大統領に「3回目の米朝首脳会談では『ディール』を終えなければならない。3回目にあった時はサインをしなければならない」と言ったと伝えられています。
この発言について、外交消息筋は「トランプ大統領は、米朝実務者間の交渉が成功しなければ3回目の首脳会談をしないという考えを明らかにしたものだ」と話し、アメリカ民主党のクリス・クーンズ上院外交委員はメディアのインタビュー対し「首脳級対話は、事前準備と理解が先決で、肯定的な方向に向かっていることを示す土台が整った場合にのみ、目的意識があるものだ」と述べています。
首脳会談の前には実務者レベルで事前折衝があり、合意の枠組みを作ってから首脳会談があるのだ、ということです。
このように「ボトムアップ」と「トップダウン」を組み合わせて国家間合意に持っていくのが普通であり、先のハノイでの米朝首脳会談が決裂したのも、「ボトムアップ」に当たる事前折衝で全く合意に達しないまま首脳会談に臨んだのが原因だとの指摘もあります。
「ビッグディール」になればなるほど、事前の詰めが大事になることは言うまでもありません。
北朝鮮は独裁国家でも、アメリカは民主国家ですからね。
一方、民主国家でありながら、独裁国家よろしく「トップダウン」で物事を決めようとしたがると指摘されている国家元首がいるとの指摘があります。そう韓国の文在寅大統領です。
朝鮮日報は、文在寅政権は、大統領選前から「トップダウン」式を妄信し、今もその考えにとらわれている、と指摘。
ある与党関係者は、2000年6月15日の金大中大統領と金正日総書記が首脳会談で合意した南北共同宣言。2007年10月4日、盧武鉉大統領と金正日総書記とで結ばれた南北共同宣言を切っ掛けとして、今の与党は首脳会談を信奉するようになったとし、「南北関係がどれほど困難でも、ひとたび首脳が会えば全て解決し、周辺諸国もついてくるほかない、と強く信じている」と述べたそうです。
また、トップダウンの中でも南北首脳会談を強く押し出すのは、韓国大統領府・与党の中心人物らが、学生運動時代から心に抱いてきた「ロマン的対北温情主義」とも深い関係があるとの分析もあります。
左派学生運動圏から右派へと移ったある人物によると「386(1990年代に30代で80年代に大学に通った60年代生まれ)世代は、米韓同盟よりも民族の方が優先という考えを確固として持っている。南北関係に執着するので無理筋が続き、4大国外交はおろそかになるのは避けられない」と語ったと伝えています。
これらを見る限り、彼らは理想を優先し、現実を無視する傾向があるといわざるを得ません。
現実を理想に向かって近づけようとすること自体は否定しませんけれども、民主国家で、それを強権的・独裁的にやってしまってはいけない。個々人の自由意志を尊重しないことになるからです。
それ以前に国際政治の現実を無視して外交が成り立つ筈もありません。自分勝手な「首脳会談万能主義」を相手に押し付けたところで適当にあしらわれ、孤立していくだけです。
韓国・元国家情報院第1次長の南柱洪氏は「ハノイ・ノーディール、ワシントン・ノーディールを通して、トップダウン外交の限界が明らかになった」と述べていますけれども、文在寅大統領が「首脳会談万能主義」を掲げる限り、今後、何らかの外交的成果を出すことは難しくなる一方だと思いますね。
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