戦車男と中国リスク
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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
ドイツのカメラメーカー「ライカ」が、1989年の天安門事件における弾圧を扱った5分間のプロモーション動画を公開し、中国国内で反発を受けています。
この動画は、危険な状況下でライカ製のカメラを手にし、世界各地で仕事に臨むフォトジャーナリストたちを描いたもので、天安門事件で人民解放軍の戦車の前に立ちはだかった一般市民の姿を捉えようと奮闘する欧米人ジャーナリストに焦点を当てています。
動画はライカのロゴと、「私たちに見せるために自分の目を貸してくれた人々に、この動画を捧げる」とのメッセージが掲げられて終わるのですけれども、 中国のネットユーザーからはこの動画に対し怒りの声が上がって炎上しています。
4月18日、中国版ツイッター、ウェイボーに「中国を侮辱するライカ」というハッシュタグが表れたのですけれども、当局の検閲が入ったようで削除。
ライカのウェイボーアカウントには、「中国から出て行け」といった動画を批判するコメントが大量に投稿されたようです。
この抗議にライカの広報担当者は香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに対し、この動画はブラジルの代理店が制作したものであり、ライカが公式に認めたものではないとし、「それゆえこの動画の描かれている内容から距離を置かなければならないし、誤解や間違って引き出され得る結論について遺憾に思う」と述べ、早くも白旗を上げました。
4月20日現在、中国のソーシャルメディア上では件の動画やそのコメントについての検索結果が表示されない状況となっていて、大規模検閲が掛かっていると見られています。
件の動画で騒ぎとなった、天安門事件で戦車の前に立ちはだかった無名の反逆者「戦車男」のショットをカメラに収めたのは報道写真家のジェフ・ワイドナー氏です。
ワイドナー氏はアメリカの南カリフォルニアの出身。1978年から新聞社の報道カメラマンとして活動を始め、25歳でUPI通信のベルギー支部の報道カメラマンになります。
「戦車男」を撮ったのはタイのAP通信に勤務していた1989年のこと。ホテルから天安門広場を狙って撮影していましたがフィルムが切れ、友人から借りたフィルムで撮ったうちの一枚が「戦車男」で、アメリカオンラインの歴史上最も有名な写真10枚のうちの1枚に選出されています。
正にこの写真はその時の事実を映したものであり、ライカがプロモ動画にこの有名な写真を使うのはある意味当然の選択であると思いますね。
ワイドナー氏は、この写真はラッキーショットであると語り、「戦車男」の写真が写真家としてのドアを開けてくれた反面、人々が他の作品を知らず「一発屋」にされかねないと心配していると述べています。
いずれにせよ、ワイドナー氏の「戦車男」は事実を捉えたものであり、それに中国が抗議するということはそれが自身に都合が悪いと自覚している事を自白しているようなものです。
昨年秋、イタリアの高級ブランド「ドルチェ&ガッバーナ(D&G )」が、モデルが箸で不器用にピザを食べる中国向け広告動画を配信したことで、中国からの抗議を受け、ブランド創始者のデザイナー2人が謝罪する事件がありましたけれども、表現上の問題ならまだしも、中国に都合の悪い事実を報じただけで抗議・謝罪に追い込まれる。それが中国という国です。
たとえ、企業にとって魅力的な中国市場であっても、その裏には大きなリスクが張りついていることを意識しておかないといけないと思いますね。
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