中国のウイグル弾圧に押し黙るイスラムとひとり気を吐くトルコ
昨日の続きです。
ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。
「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
中国共産党が自分に都合の悪い存在は徹底的に弾圧、洗脳することが世界にも知られてきました。
2月9日、トルコ外務省のハミ・アクソイ報道官は、中国でトルコ系少数民族でイスラム教を信仰するウイグル族に対する人権侵害が懸念されている問題について、「人類にとって大きな恥だ。100万人以上のウイグル人が恣意的な逮捕の危険にさらされ、強制収容所や刑務所で拷問や洗脳を受けていることは、もはや秘密ではない」と指摘し、「再教育施設に収容されていないウイグル人たちも抑圧下に置かれている」と述べ、国際社会やアントニオ・グテレス国連事務総長に、「新疆における人類の悲劇」を終わらせるために有効な措置を取るよう訴えました。
更に、中国当局に拘束されていたウイグル人の民謡歌手アブドゥレヒム・ヘイット氏が死亡したことをトルコ政府は9日に知ったと明らかにし、「この悲劇によって、新疆での深刻な人権侵害に対するトルコ人の反発はより強まった」と強調しました。
アブドゥレヒム・ヘイット氏はウィグル族の楽器ドゥッタルの奏者で、北京の中央民族歌舞団や新疆ウイグル自治区歌舞団で活躍。独自にウイグル民謡と彼自身の作曲をフィーチャーし、2011年に「Duttarim (My Dutar)」と呼ばれる9枚のCDコレクションを発表しています。
ヘイット氏の唱は、ウイグルの民族文化に誇りを持ち、前を向いて生きていこうと呼びかけるメッセージ性の高い曲が多く、特にウイグル人に広く知られる歌謡「お父さんたち」の歌詞が問題視されたようです。
こうしたウイグル弾圧問題について、イスラム諸国の大半は国を批判せずに静観していますけれども、それは、巨額な資金援助によって口を塞いでいるのだという指摘があります。
中央アジアから中東にかけての地域では、イスラム諸国を含む様々な国が中国の「一帯一路」構想に参画しています。これらのインフラ事業の多くで中国は、信用格付けの低い国々に対して巨額の貸付を行い、中にはパキスタンのように返済が難しい状況に陥っている国もあります。
シドニー工科大学で中国政治を研究するシモーネ・ヴァン・ニーウェンハウゼン氏は、ビジネス・インサイダーの取材に「殆どの国と同じ様に、イスラム諸国の多くでも中国との経済的な関係がますます強まっている……新疆ウイグル自治区の状況を批判すれば、中国との経済的な関係を損なう恐れがあるという考え方が広まっている。したがって、批判することに関心を持たない」と述べています。
また、オーストラリア在住の人権活動家で「ウイグル会報ネットワーク」を運営するアリップ・エルキン氏は「一帯一路構想を通した巨額の貿易と投資機会、そして中国からの債務負担によって、イスラム諸国は沈黙を守るのみならず、中国のウイグル人弾圧に積極的に加担すらしている」と一帯一路構想を障害物と断じています。
実際、一帯一路構想に参加しているエジプトは、2017年夏、ウイグル人留学生を相次いで拘束。少なくとも12人の中国籍ウイグル人を中国に送還したとニューヨーク・タイムズが報じています。
こうした現状に世界ウイグル会議プログラム・マネージャーのピーター・アーウィン氏は「イスラム諸国はウイグル人を支援し、中国を批判するだろうというある種の期待はあった。しかし、そうした動きはない。中国が一帯一路構想のもとで示している経済的な野心を考えると、同構想がどれほどの成功を収めるか否かにかかわらず、今後も批判は起きないと考えられる」と指摘しています。
一方、イスラム諸国の沈黙は単なる経済支援だけが理由ではなく、イスラム諸国自身が持つ人権意識にも問題があるという指摘もあります。
シドニー工科大学のヴァン・ニーウェンハウゼン氏は、「中東諸国の多くは、自らも人権問題について悪しき実績を抱えている。これには宗教的少数派への対応も含まれている。多くの国が人権に対しては中国と同様の認識を持っている。つまり、社会の安定は個人の権利に勝るという考え方だ……こうした考え方は、中国政府が再教育キャンプや他の抑圧的な政策について、その存在を正当化する際に拠り所にしているもの」と述べ、イスラム諸国の多くは個人の権利よりも社会の安定を優先していると指摘しています。
また、先に紹介した「ウイグル会報ネットワーク」のエルキン氏も、ペルシャ湾岸諸国は「その大半が極めて独裁的な政治体制をとっており、自国への干渉を避けるために、他国の国内問題には干渉しない」と述べています。
そして、「イスラム諸国がウイグル人に対する恐ろしい弾圧、特に東トルキスタンで行われている文化浄化について沈黙していることは苛立たしいことだが、意外なことではない……イスラム教徒の連帯という理念が、イスラム諸国が国際政治の場で駆使する外交政策の道具として都合よく使われていることは苛立たしい。連帯という真のメッセージが失われている」と批判しています。
そんな中、ひとり気を吐いているのが冒頭に取り上げたトルコです。
イスラム国であるトルコは、過去にも中国のウイグル人弾圧を批判しています。
2009年、当時首相だったエルドアン氏は、新疆ウイグル自治区での弾圧を「ある種の大量虐殺」と表現し、「これだけの事件に対して、中国首脳が傍観者の立場を取り続けていることは理解に苦しむ」と述べました。
この発言に中国は強く反発。中国国営の英字新聞チャイナデイリーは「事実を捻じ曲げるな」という見出しで、エルドアン氏に発言の撤回を迫る社説を掲載しました。
しかしトルコは怯みません。2015年、中国から逃れたウイグル人難民に避難所を提供、これに対してチャイナデイリーは「両国のつながりに悪影響を及ぼし、協力が頓挫する恐れがある」と再び恫喝しています。
トルコは去年の8月、深刻な経済危機に直面したのですけれども、中国国営の英字紙グローバルタイムズは、中国による経済支援を提案しつつも、もう2度と「新疆ウイグル自治区での民族政策に対して無責任な発言」を行わないように警告しました。
こうした背景を抱えながらも、トルコは冒頭で触れたように中国によるウイグル弾圧批判の手を緩めていません。
今回、トルコ政府が、ウイグル人の民謡歌手アブドゥレヒム・ヘイット氏が死亡したことを明らかにしたことについても、中国国営メディアはヘイット氏が「健康状態は良い」と話す映像を公開し、反論していますけれども、それならば、ヘイット氏を解放するなり、トルコ政府の誰かと面会させることも出来る筈です。
映像だけで、十分それは証明されたというのであれば、天安門の「戦車男」とて同じことです。
人権意識が低いと指摘されたイスラム諸国とて、過去に人権問題に声を上げたことがないわけではありません。2017年、ミャンマー軍がミャンマー・ラカイン州に住むイスラム教徒ロヒンギャ達を弾圧した際には、ヨルダンやイランの市民はロヒンギャとの連帯を示す抗議デモを何度も行っています。
また、「イスラム世界の総意」を掲げる国際組織、イスラム協力機構も、2018年5月に。ロヒンギャ危機に対して「適正な調査」を実施する意向を表明しています。
自分の国から遠く離れ、経済的な結びつきも左程強くないミャンマーであれば、イスラム教徒の危機には声を上げるのですね。となると、ウイグル弾圧についても、これら条件を満たせば、或いはイスラム諸国も批判の声を上げてくる可能性もなくはありません。
となると、やはり考えるべきは、中国の一帯一路構想とそれに伴う資金援助を細らせる或は断つことでしょうね。「金の切れ目は縁の切れ目」に持っていくということです。
今、米中貿易交渉が行われていますけれども、この行方は、イスラム諸国含め、世界に大きく影響を与えることになるように思いますね。
この記事へのコメント