日米首脳会談と消費税減税


今日はこの話題です。

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4月26日、アメリカを訪問した安倍総理はトランプ大統領と首脳会談をおこないました。

安倍総理とトランプ大統領の首脳会談は電話会談をのぞき、今回で10回目を数えます。両者の蜜月ぶりが伺えますね。

安倍総理によると、会談では北朝鮮問題と日米貿易問題について時間を割いて議論し、「朝鮮半島の非核化」と「貿易交渉を更に加速させる」ことで一致したようです。

ただ、記者団に公開された会見冒頭ではトランプ大統領が「貿易問題についても徹底的に話す」とし、「日本は農産品に対する関税を上げているが一日も早くなくしてほしい。我々は日本産の車に対して関税をかけていない」と不満を表明すると、安倍総理は「トランプ政権ができて以降、日本の企業はアメリカに230億ドルの投資をした……日本はアメリカ車には間税はかけていない。アメリカはまだ日本の車に2.5%の間税をかけていることは申し上げておきたい」と反論すると、トランプ大統領は「日本の自動車会社が投資していることは大変喜ばしい」と鉾を収めました。

これは単なる筆者の感想ですけれども、トランプ大統領は最初からアメリカが日本社に関税を掛けていることは知っていて、わざと「関税を掛けていない」などとブラフをかましたのだと思います。

そのやりとりを記者団の目の前で公開することで世論を喚起して、少しでも有利なディールをしようとすると共に、アメリカ国民に自身が「タフネゴシエーター」であることをアピールしたのではないかと思いますね。まぁ、中間選挙のことも頭にあるのだと思います。

けれども、安倍総理からそんなことはないといわれて、ひっこめた。半分出来レースみたいなものだと思います。

ただ、非公開で行った本番の交渉では、トランプ大統領は別の角度から車に関する要求と出したのではないかと筆者は見ています。

それは何かというと、消費税です。
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日本では、輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」があります。

これは、各々の部品や製品を他の会社に売った時の消費税は、その製品を輸出する際に、一括でまとめて輸出業者に還付するという制度です。

全国商工新聞によるとその還付金は、約6兆円。消費税の税収は8%増税後、おおよそ17兆円半ばで推移していますから、消費税のおよそ3割以上は戻されているということです。つまり、消費税8%といっても、実質5.25%程度であるということです。

逆にいえば、消費税還付金制度を止めれば、消費増税など不要で5%にさえできるともいえ、大きなカラクリが潜んでいるわけです。

日本の輸出依存度が十数%程度であり、内需の方がうんと高いことを考えると、外需を刺激するよりも内需を刺激した方がより大きな効果が期待できます。

実は、トランプ大統領はこの消費税還付金制度を輸出産業への補助金だと見なしているのですね。

この消費税還付金制度は日本だけのものではなく、他の国でも自国の付加価値税(日本の消費税に相当)について、輸出品に限り付加価値税を還付する仕組みを設けています。

一昨年の2月のエントリー「トランプの国境税調整は吉と出るか凶と出るか」で、取り上げたことがありますけれども、当初、トランプ大統領はこれに対抗するため、輸入品には20%の国境税調整を課す一方、アメリカ内の企業が法人税を払うときは、国内利益だけに20%の法人税を課す、国境税調整(Border Tax Adjustment)と導入しようとしていました。

これについて、筆者は先のエントリーで、WTOで認められている付加価値税の還付とは違い、「国境調整」は関税障壁的なイメージが付き纏う故に、そうすんなりと行く話ではないのではないか、と述べましたけれども、案の定、議会では、公平な税制の機能が不十分で国内消費に低迷をもたらすということで見送られてしまいました。

今現在も、アメリカの輸出業者は日本と比べて相対的に不利のままにあります。

そういう背景から、トランプ大統領は、安倍総理に対し、消費税還付金制度の廃止を要求しているのではないかと思うのですね。

しかも、そんな状況で、消費税率が10%に上がればそれに伴って還付金も増えることになります。トランプ大統領は、これを新たな貿易障壁と見做す可能性は高い。米中貿易戦争をみればわかるとおり、トランプ大統領なら、不平等が是正されるまでの制裁だとかいって、関税引き上げに出ることだって十分考えられます。

先日、萩生田幹事長代行が「消費税増税延期」説を打ちあげて騒ぎになりましたけれども、一部では、増税延期どころか消費税減税というサプライズ案まで取り沙汰されているそうです。

その理由の一つとして先に述べたトランプ政権が消費税の輸出還付金を補助金だと問題視していることです。

消費税増税の悪影響は既に証明されています。ですから消費税減税すれば、それだけで景気対策になりますし、参院選、あるいは衆参同時選にも追い風が吹くでしょう。もちろんトランプ政権からの圧力も躱せます。

トランプ政権は、減税による景気刺激策を取っています。

就任1年目の2017年末には10年で1.5兆ドルの大型減税を実現、法人税を35%から21%へ引き下げ、個人の所得税の最高税率も39.6%から37%に下げています。それによりアメリカの失業率は半世紀ぶりに3%台に低下しています。

ただ、各企業の設備投資は、まだムラがあるようで、今年1月28日に全米企業エコノミスト協会(NABE)がトランプ政権の1兆5000億ドル規模の減税についての四半期企業調査を行い、一部の企業は法人税減税を受けて投資を加速したが、全体の84%は設備投資計画を変更していないとしていると発表しました。

投資を加速したのは製造業で、回答企業の50%が減税を受けて投資を増やしたと回答。20%が雇用・投資を海外からアメリカに振り向けたと答えています。

全米企業エコノミスト協会(NABE)のプレジデントであるケビン・スウィフト氏は「設備投資を増やした企業が、10月と比べて減少した。ただ投資の削減は、情報・通信技術投資ではなく、建造物に集中しているようだ」とコメントしていますけれども、手元に金が残って余裕が出来ると、より儲けられるところに金を回すのは当たり前のことです。

その意味では、製造業がこれから儲けられる分野は情報・通信技術であって、建造物ではないと考えているということであり、これも今の御時勢を考えれば、当然の選択でしょう。

日米首脳会談を受け、安倍総理が消費増税延期または減税でサプライズ解散を仕掛けるのか。要注目ですね。

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