中国のネット規制と官製五毛党

 
今日はこの話題です。

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もうすっかり知られるようになった中国のネット規制ですけれども、近年はますます締め付けが厳しくなっているようです。

2017年6月、新たにサイバーセキュリティー法が成立し、中国政府はネット規制をより厳しく強固なものにしていく方針を打ち出しました。昨年4月から本格的にその法律が施行され、中国国外のネットサービスに対する規制が一段と厳しくなっています。

こちらに昨年7月現在、中国で使えないサイト・使えるサービスが纏められていますけれども、グーグルやYahoo!といった日本で使われている主要な検索サイトはほぼ使えず、TwitterやLINEなどのSNSも遮断。使えるのは中国製アプリがメインのようです。

一方、個人のホームページにはアクセスできるそうですけれども、ネット検索ができない環境であることを考えると、目的のページを探し出すのは相当苦労しそうです。また、ページにたどり着いても読み込みに時間がかかるそうで、件のサイトでは、「ブログの記事に“不適切な”内容が含まれていないか検閲されているのだろう」と推測しています。

では、中国で、日本を含む海外のサイトや日本で使っているようなSNSが全く使えないのかというと、そこはそれ、多少の抜け道があることはあります。VPNです。

VPNとは「バーチャルプライベートネットワーク」の略語で仮想ネットワーク空間の事です。これを使えば、日本やアメリカなど外国のIPアドレスを取得することができます。

外国のIPアドレスを取得すれば、中国にあるパソコンやスマホ・タブレットが外国のパソコンとして認識されるので、中国の検閲に引っかからないという訳です。

これはつまり、外国人には海外サイトへのアクセスを許可する一方で国内にはそれを許していないということです。それだけ国内の人民には海外情報には直に触れさせてはいけないと中国政府が考えているということですね。

けれども、このVPNに対しても中国政府は規制を掛け始めました。

2017年6月に成立したサイバーセキュリティー法で中国政府は、今後、政府機関に登録し認可を受けたVPNサービスのみしか利用できないようにするというコメントを発表。10月には無料のVPNに規制が入り、全く使えなくなりました。

2017年12月、浙江省烏鎮で行われた「第4回世界インターネット大会」で、習近平主席が祝辞の書簡を送り、その中で「インターネットは各国の主権や安全、発展、利益に新たな課題をもたらしている」とし、サイバー空間を中国の主権がおよぶ領域と位置づけ、統制を強化すると宣言しました。

それを受け中国当局は、2018年3月31日にVPN取り締まり強化を宣言。未認可のVPNを全て締め出すとして、政府未認可のVPNサービスを一網打尽的に規制を始め、2018年4月からは、有料版VPNにも規制が入り、現在使えなくなっていたり、不安定になっているものも多数あるようです。

そして更に、2018年6月にベトナムで開かれた米朝首脳会談以後、政府によるVPNの規制もより一層厳しいものとなっていると報告されています。

中国のネット統制は規制だけではありません。ネットを使った情報操作もあります。「五毛党」もその一つです。

「五毛党」とは、中国共産党配下のインターネット世論誘導集団を指すネットスラングで、正式名は網路評論員。2005年ごろまでは書き込み1件当たり5毛(約8.3円)が支払われていたことからこの蔑称が名づけられました。2015年時点で、約1050万人程度いると見られています。

狭義の意味での「五毛党」は各地の党や政府の宣伝部門、教育機関などに雇われ、専業あるいは兼業で書き込みをする人を指します。「網絡評論員」の身分を堂々と公開する人もいるますけれども、大多数は普通ユーザーを装い複数のIDで投稿しています。

広義の意味での「五毛党」はネット上で中国政府や共産党を賛美・支持・弁護する傾向のあるすべてのユーザーのことを指します。要するにステマ書き込み要員ですね。

ハーバード大学の研究チームがこの「五毛党」についての調査を行い、中国政府は1年間に推定4億4800万件弱の「ニセのソーシャルメディア投稿」を行っていることを明らかにしました。

この調査結果は、ハーバード大学のゲイリー・キング教授、元大学院生のジェニファー・パン氏とマーガレット・ロバーツ氏が、ハーバード大学の計量社会学研究所(IQSS)の支援を受けて、大量の投稿内容を分析することで得られました。

彼らは2010~2015年の中国のソーシャルメディアに投稿された内容と2013年から2014年までに江西省のインターネット・プロパガンダ事務所に送信された電子メールからリークした文書を分析。この流出した電子メールは、ニセの投稿作業の完了を報告する公務員によるものでした。

これまで、この種の「ニセ投稿」は、雇われの「五毛党」によるものとされていたのですけれども、キング教授の調査チームによる分析の結果、リーク文書から発覚したニセ投稿の99.3パーセントに、税務署や人的資源部門、司法関係といった200を超える政府機関のいずれかが関与していることがわかりました。しかも、それらの投稿の20パーセントは、インターネット・プロパガンダ事務所で働くスタッフが投稿したものでした。

調査チームは電子メールの情報とSNS上の名前を照らし合わせて、五毛党の人物を特定するところまでこぎつけている。現在、多数の五毛党に関する氏名や連絡先、写真に至るまでの情報を入手しているが、公開は避けるとしています。

ただ、調査チームによると、これら五毛党によるやらせレビューが書き込まれる時期には、ある一定の規則性が見られるという。通常、社会不安や何らかの抗議行動が一旦生じれば、五毛党は直ちに書き込みを始め、「その問題に関係のない興味を引く話題」を提供して民衆の注意をこちらに誘導しようとするそうです。

調査チームは、2013年7月に起きた新疆ウイグル自治区での暴動後に、五毛党がネット上に1100個もの書き込みを投稿し、こぞって地方経済の発展を称賛し、「中国の夢」を賛美していたことを突き止めています。

更に、調査チームは五毛党のニセ投稿には、ある規則性があることを指摘しています。それは次のとおり。
1、論争になりそうな話題は避け、巻き込まれないにようにする。
2、民衆の関心から逸れるような別の話題を積極的に提供することより、集会や街頭抗議活動に関する議論を鎮静化させようとする。
3、徹底的な封鎖は民衆の怒りをあおるだけとなるし、逆に当局にとっては、反対意見を知ることにより、それらを参考にして地方の指導者を評価することができるというメリットがあるので、ある程度の異論は容認する。
平たくいえば、これらは議論の矛先を他所に逸らすという手法です。

よく、ワイドショー番組で、芸能スキャンダルが大々的に取り上げられているときは、その裏で重大な何かが行われているのだと指摘されることがありますけれども、五毛党のニセ投稿にもそれに通じるものがあるように思います。

まぁ、情報操作の秘訣はどれも同じということなのかもしれません。

ネット規制に官製五毛党。中国の情報統制はより一層厳しくなるように思いますね。

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