ヒラメのサイレント制裁

 
今日はこの話題です。

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5月30日、厚生労働省6月1日から韓国産のヒラメと、韓国など複数の国から輸入される生食用冷蔵むき身アカガイ、タイラギガイ、トリガイ、ウニについて、全国の検疫所で検査体制を強化すると発表しました。

韓国産ヒラメについては、検査量を全輸入量の20%から40%に引き上げ、他の貝類などについては10%から20%に引き上げられることになります。

これは、厚労省が毎年行っている、「輸入食品等モニタリング計画」を改定するものです。

今年の実施期間は、平成31年4月1日から令和2年3月31日までで、検査方法は次のように定められています。
3 検査方法
(1) 検体の採取
別表第4から別表第6により、ロットを代表するものとなるよう、食品衛生監視員の判断により無作為に抽出した検査対象から検体を採取する。
別表第4から別表第6に示されていないものは、検疫所検査課、輸入食品・検疫検査センター及び試験実施機関(以下「試験担当課」という。)と調整を図った上で検体を採取する。
また、試験品取扱標準作業書に基づき実施し、採取方法、採取した貨物の形態、表示事項等について、詳細に記録する。

(2) 試験方法
次の試験法のうちから、各食品等の特性に応じ、適切な試験法を選択し、標準作業書に基づき正確かつ迅速に行う。
ア.食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に定められた試験法(以下「告示法」という。)
イ.乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)に定められた試験法
ウ.部長通知等で定められた試験法
エ.「食品衛生検査指針」に記載された方法
オ.日本薬学会編「衛生試験法注解」に記載された方法
カ.その他A.O.A.C.法等の信頼できる試験法
なお、試験に当たっては、上記以外の試験法であっても、通知等で示している試験方法と比較して、真度、精度及び定量限界において同等又はそれ以上の性能を有するとともに特異性を有する試験方法により実施して差し支えない。
このように検査は、無作為に抽出したサンプルを所定の方法で検査することになっています。6月1日からこれを改定し、モニタリング検査の数量を増やすのですね。

改定の理由ですけれども、厚労省によると、韓国産ヒラメについては、韓国産ヒラメを原因としたクドア食中毒が年間10件程度、発生し、貝やウニについては輸入むき身ウニを原因とする腸炎ビブリオ食中毒が国内で発生したからだとしています。

クドア食中毒とは、ヒラメに寄生するクドア属の寄生虫(粘液胞子虫)の一種が引き起こすもので、ヒラメの刺身等に関連するものが多く、 食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し、軽症で終わる症状が特徴です。

このため、筋肉1グラムあたりのクドアの胞子数が1.0×10^6個を超えることが確認されたヒラメは、食品衛生法第6条に違反するものとして取扱うことになっています。

腸炎ビブリオ食中毒とは、河口部、沿岸部などの海に生息する病原微生物の一種で、室温でも速やかに増殖します。特に3%前後の食塩を含む食品中でよく増殖する反面、真水や酸には弱いとされています。

潜伏期は8~24時間で、腹痛、水様下痢、発熱、嘔吐の症状があります。生食用鮮魚介類については、腸炎ビブリオの最確数は、検体1gにつき100以下と成分規格で定められています。

検査の強化がなぜ6月からなのかというと「韓国産ヒラメの輸入が増加する月」だからということのようです。

今回の検査強化について、菅官房長官は記者会見で「近年、対象の輸入水産物を原因とした食中毒が発生しており、食中毒が増加する夏場を控え国民の健康を守るという観点から行う」と説明していますけれども、先般、韓国による日本産水産物の輸入禁止をめぐってWTOで敗訴したことに対する対抗措置だと見られています。

まぁ、それはそうでしょうね。

今月16日、自民党が開いた水産部会などの合同会議で「外務省は韓国と交渉すると言っているが、対抗措置なしに交渉しても1ミリも前進はできない」といった対抗措置を求める意見が相次いでいました。

外務省幹部は「表向きにも裏向きにも政府が『対抗措置』だと言うことはない」と含みを持たせていますけれども、自民党中堅は「事実上の対抗措置だ」と言っています。

これに慌てたのが韓国です。

韓国の2018年の対日水産物輸出は、金額ベースで7億5797万ドル(重量ベースで9万4343トン)。このうちヒラメは2553万ドル(1878トン)あります。

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対日水産物輸出金額に占めるヒラメの割合は3.4%で、魚肉、水産加工品、ノリなどに次ぐ主要水産輸出品目です。2018年の韓国の対世界ヒラメ輸出4891万ドルのうち日本向け輸出は全輸出の52.2%を占めています。

5月30日、韓国海洋水産部は文成赫長官主宰の対策会議を開き、水産物輸出業者の被害を防ぐため、自主的な衛生管理の強化を呼びかけることを決定。懇談会などを開催し、漁業関係者の意見や要請を取りまとめるほか、輸出検査や衛生設備の設置などで政府が積極的に支援するとしています。

韓国政府関係者は「韓国産ヒラメはアメリカなどほかの国にも輸出しているが、クドアを検疫基準としている国は日本だけだ」とコメントしていますけれども、刺身にして生で食べる上に、現に食中毒が出ているのですから、検査は当然です。

先日の日本の海産物を巡るWTO裁判でも韓国は自国の国民感情に配慮しろと主張していましたからね。日本も同じく「国民感情として食中毒の危険があるものはしっかり検査すべきだと考えるのは当然だ」と答えることだって出来る訳です。

ヒラメを日本に輸出するには、出荷前にクドアの有無を検査して証明書を添付しなければならないのですけれども、韓国海洋水産部は日本の検疫が強化されれば、検査段階での不適合判定の増加や、検査時間の長期化による商品価値の下落など、日本向けの水産物の輸出に支障が出る可能性があると見ているようです。

また、韓国海洋水産部は在日大使館の担当者に、日本政府の意図をしっかりと把握するよう要請し、「日本政府の方針に対する対応策を用意する」としています。

まぁ、日本の報復措置ではないか、その「意図」をしっかり確認しろ、ということですね。

意図を確認したところで、日本政府が「報復だ」などというわけがなく、検査の強化だといって門前払いされるのがオチでしょうね。

まぁ、ナマモノですから仕方ないのかもしれませんけれども、出荷前検査量が増えただけで、経済的打撃を受けるのであれば、これも事実上の経済制裁です。

30日には、韓国外交省当局者が「わが国の業界に与える影響など関連動向を注視しながら、必要な措置を検討していく予定だ」と述べていますけれども、あるいは何かの産品に報復関税を掛けてくるのかもしれません。

ただ、ここで一つ面白いと思うのは、厚労省は今回の改正で、違反が確認された場合、更に検査強化する可能性があるとしているところです。

厚労省のサイトには「違反の蓋然性が高いと認めた場合は、検査率100%の適用が可能(命令検査)であり、今後の検査結果を踏まえて、検査率の更なる引き上げを視野に順次措置します」となっています。

今回の20%から引き上げで40%。これでどれくらい打撃を受けるのか分かりませんけれども、あと60%も残っているわけです。トランプ大統領ではありませんけれども、段階的に更なる制裁を掛けることも可能です。

表向き制裁ではない「ヒラメのサイレント制裁」。どれくらいの効果があるのか。要注目です。

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