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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.100万人香港デモ
香港が大変なことになっています。
6月12日、条例改正を巡って香港で起きた大規模デモで混乱が続いています。
デモ隊に参加した一部の市民が配備された警官隊に鉄柵などを投げ付け、警官隊も催涙弾を発射するなど現場は騒然。デモ隊と警官隊が衝突して70人以上の怪我人が出たと報じられています。
デモは犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に反対するものです。
「逃亡犯条例」改正案とは、香港が犯罪人引き渡し協定を締結していない国・地域の要請に基づいて、容疑者引き渡しを可能とする改正案です。
現在、香港はアメリカなど20ヶ国と犯罪人引き渡し協定を結んでいるのですけれども、中国本土やマカオ、台湾との間では結ばれていません。
昨年2月、香港人の男が台湾で恋人を殺害し、逮捕される前に香港に戻るという事件が起きた為、香港政府は、犯罪人引き渡し協定がない台湾への身柄移送ができないことを理由に、条例改正へと動き出しました。
ところがこれが、香港の中国返還後、「一国二制度」として50年保障したはずの高度な自治が崩壊するとして、反対派の市民が声を上げ、大規模なデモにまで発展しています。
反対派は、香港で活動する活動家など中国政府に批判的な人物が、容疑を作り上げられて中国本土へ引き渡される危険性を挙げ、それは香港を訪れた外国人ビジネスマンや観光客も、例外ではないとの指摘もされています。
中国共産党なら如何にもやりそうな事ですけれども、香港人にとっては喉元に刃を突き付けられた如く背筋が凍ったに違いありません。なぜなら彼らは数年前にそれを目の当たりにしているからです。
2.民主の女神
6月10日、香港の政治団体「デモシスト(香港衆志)」に所属する周庭(アグネス・チョウ)さんが来日し、東京の日本記者クラブで会見を行いました。
周さんは、22歳の現役大学生ながらも、2014年の「雨傘運動」に主要メンバーの一人として関わり、当時「民主の女神」として注目された人物です。
周さんは今回のデモに参加してからの来日でした。
会見で周さんは、「『逃亡犯条例』改正案は最も危険な法案だと思います。犯罪人を中国に引き渡されることになる。中国の司法制度は香港とは異なり、中国では恣意的な拘束、逮捕、拷問がある……昔から中国は政治犯を作り上げることが上手です。過去にはたくさんの弁護士、記者、活動家が、経済的罪、腐敗、交通などの罪で逮捕されている。……また、拘束中に一生障害が残る怪我を負わされたり、不可解な形で死んでしまった人もいました。今後、香港人や香港訪問者にも捕まる可能性がある。数年前、香港で銅鑼湾書店事件という、中国政権に反対する本を売る香港人の5人が逮捕される事件があった」」と、香港の人々がなぜ「逃亡犯条例」改正案を危惧しているのかを訴えました。
周さんが触れた銅鑼湾書店事件とは、2015年、中国政府を批判する書籍を多数そろえていた香港の書店の関係者5人が突然、失踪するという事件のことです。
この時、失踪した人達者たちはやがて香港に戻ったのですけれども、4番目に戻った香港銅鑼湾書店の店長・林栄基氏が、香港で記者会見を開き、この失踪事件が「中央専案組」と呼ばれる特別捜査チームによって実行されたもので、中国当局によって仕掛けられた事件であると暴露。中国当局による「一国二制度つぶし」であることを告発したのですね。
この会見によって香港は大騒ぎとなり、親中香港メディアが林栄基氏の発言が民主派議員に操られた嘘であると批判する一方、香港市民の間では林栄基擁護デモも発生しました。
たった4年前の出来事です。
香港政府は今回の「逃亡犯条例」は政治犯を対象としていないとしていますけれども、こんな事件を見せられたら、信じられないと考えるのも当然です。
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3.デモはこれで最後と覚悟する香港人
香港政府は更に遡ること2003年に、今回と同じような法案を通そうとしたことがあります。
当時香港行政長官だった董建華氏は、2002年9月から中国共産党の支持を受け、香港基本法第23条を具体的に執行する法令である 「国家安全条例」の制定を行おうとしたことがあります。
香港基本法第23条とは「香港で国家分裂や反逆などを禁じる条例を制定することを定めた法律」です。その内容は次のとおり。
香港特別行政区は、反逆、国を分裂する、叛乱を煽動する、中央人民政府を覆る及び国家機密を盗む行為を禁ずる法律を、自ら制定するべし。それで、海外の政治的組織あるいは団体の香港特別行政区での政治活動を禁止し、香港特別行政区の政治的組織あるいは団体が、海外の政治的組織あるいは団体と接触することも禁ずる。
(香港特別行政區應自行立法禁止任何叛國、分裂國家、煽動叛亂、顛覆中央人民政府及竊取國家機密的行為,禁止外國的政治性組織或團體在香港特別行政區進行政治活動,禁止香港特別行政區的政治性組織或團體與外國的政治性組織或團體建立聯繫。)
この23条に「国家分裂や反逆などを禁じる条例を定めよ」とあることから、これを根拠に 「国家安全条例」を制定しようとしたのですね。
国家安全条例の法案は、 香港市民からの意見聴取を経て若干の修正を施した後、 2003年2月に香港の立法機関である立法会に提出されました。
この時、立法会は、董行政長官を支持する民主建港聯盟と自由党などの 「親中派」 議員が過半数を占めていたことから、法案の採決は確実と見られていました。
ところが、採決が間近に迫った2003年7月1日、 法案に批判的な民主党を中心とする民主派の政党及び団体を中心とした、 参加者50万人以上にのぼるとされる大規模なデモが発生。国家安全条例法案の撤回のみならず、董建華行政長官や香港政府閣僚に対する辞職までもが要求されました。
董行政長官はそれでも立法会で強行採決をしようとしたのですけれども、親中派政党であった自由党の田北俊主席までもが採決延期に転じたことが決定打となり、採択を断念。9月5日、董行政長官は国家安全条例法案の撤回を宣言しました。
このように香港の人達は自らの行動で政治を動かした経験を持っているのですね。
今回の「逃亡犯条例」改正案は、このとき「国家安全条例」に近い効果をもたらすと危惧されているのですけれども、あれから16年。中国共産党政府と香港政府の力関係も当時とは大きく変わっていることから、今回のデモが成功するかどうかは不透明です。
先に取り上げた周庭さんは、今回のデモについて「改正案が可決されたら、これから香港でデモができなくなる場所になるかもしれないという気持ちを持っている香港人がたくさんいます。今回の改正案を反対するデモ、運動に参加している香港人は、これが最後という考えを持っている香港人も……可決されたら、香港でデモするだけで中国に引き渡されるかもしれませんという考え方が多いし、これが事実になるかもしれません」と述べています。
その意味では香港は、正に中国共産党に飲みこまれる瀬戸際にあるのかもしれませんね。
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