問題を先送りした香港と曖昧な日本

 
更に続きです。

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6.逃亡犯条例改正案の審議を延期した香港政府

6月15日、香港政府の林鄭月娥行政長官は、中国への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案について立法会での審議を延期すると表明しました。

林鄭行政長官は、記者会見で「改正案を撤回したのではない……異なる意見に耳を傾け、双方の溝が埋まるまで対話していく」と強調していますけれども、その裏では、今月末のG20までに事態を収拾するよう中国共産党政府の差し金があったのではないかと囁かれています。

香港メデイアによると、中国共産党最高指導部メンバーで、香港を担当する韓正・政治局常務委員が深セン入りし、林鄭行政長官と対応を協議。その後、林鄭行政長官が審議の延期を決定したようです。

林鄭行政長官自身は、韓氏との会談の有無については回答を避け、「延期は自らが決定した」と述べていますけれども、会談はしていないと否定できない時点で、怪しいと疑われても仕方ありません。

民主派の区諾軒・立法会議員は産経新聞の取材に「G20の場で習近平国家主席とトランプ米大統領が会談すれば、香港の逃亡犯条例の改正案をめぐる問題も話題になる」とし、中国当局がそれを避けたとの見方を示しています。

実際、アメリカ政府高官は、抗議デモに、香港の警察に代わって実力でデモ隊を鎮圧するといった事態ともなれば、米中の貿易交渉に影響を及ぼし得ると警告。アメリカの対応は「中国の動き次第だ」と釘を刺しています。

それに、改正案は撤回ではなく「延期」しただけです。いつでも、再開できる余地を残しているのですね。

評論家の石平氏は「延期になったのは中国政府の指示によるものであろうが、それはおそらく、習近平のG20出席の環境整備のためであると思う。あのまま事態が悪化すればG20では習近平は袋叩きに遭うのであろう。しかし逆にいえば、G20が終わったら中国が巻き返してくる可能性は大である」とツイートしています。

筆者も、石平氏と同じく、G20で叩かれて埃塗れにならないよう、取り敢えず、一時的に手を引っ込めただけと見るのが妥当ではないかと思いますね。


7.香港の中国化を狙う共産党政府

表向きには、条例改正案の延期を表明した香港政府ですけれども、ネットでは、いろんな怪しい情報が飛び交っています。

デモで怪我をした一般の人が病院に送られたまま、家族でさえも連絡が取れなくなったとか、13日から14日の昼にかけて、グーグルの翻訳機能を利用して「香港が中国の一部になるのはとても悲しい」と英語から中国語に翻訳しようとすると、「悲しい」の部分が「うれしい」と逆の意味に翻訳されるといったことなどです。

その真偽や背景・意図は定かではありませんけれども、あらゆるものが戦争の手段となり、またあらゆる場所が戦場となりうる、所謂「超限戦」を連想させます。

更には、2018年、中国全国重点小中学校の教師に向け、人民解放軍の徐焔将軍が香港について語った映像までネットで流れています。

曰く、「香港が返還され20年経つが教材はイギリスのままだ。教材を変えようとしたが保護者が反対した。若者よりも親世代が悪い」とか「現状のまま植民地化していかないといけない」などと述べています。

そして、林鄭月娥行政長官について、騒いだ者に刑罰を下したこと。今年から教材を変更したことの2つの偉業を成したと賞賛しています。

中国共産党政府は、教育を変え、長期計画で香港を中国化しようとしています。例え、今回の条例が延期ではなく、撤回されたとしても、10年、20年経ったらどうなるのか。



8.揺れる台湾と曖昧な日本

香港のデモは日本にとっても他人事ではありません。

香港が中国化されたらその次は台湾、そして沖縄と迫って来ることが容易に予想されるからです。

無論、台湾はそのことに気づいています。

6月13日、台湾の蔡英文総統は総統府で談話を発表し、香港の大規模デモに言及。モは台湾人に「一国二制度」が実施不可能であることを痛感させたとし、台湾を政治の切り札にすることは「蔡英文がいる限りさせない」と強調しました。

台湾の主要メディアは香港デモを大きく報道し、台北市内では抗議活動に同調する街頭運動も行われています。

丁度、台湾では与野党の総統選挙の予備選が行われていたこともあり、各候補は台湾デモについて取り上げていました。与党民進党は蔡英文総統が勝利しましたけれども、蔡総統は元より、対抗馬であった頼清徳・前行政院長も「中国は暴行をやめるべきだ……台湾は第2の香港にならない。頼清徳だけが台湾を守れる」と反中姿勢を強調していました。

一方野党の中国国民党は、総統候補を目指す韓国瑜・高雄市長が10日、記者団からデモの感想を問われ「よく知らない」と回答したものの、批判を受け、翌11日に声明を発表。しかしその内容は、「香港政府は民衆を安心させる決定をすべきだ」と中国への批判を避けるものでした。

ただ、国民党のもう一人の有力候補で中国当局との近さが指摘される鴻海精密工業の郭台銘会長は「香港の一国二制度は失敗だ」と中国を批判しています。

香港デモにより、中国共産党のヤバさが台湾に広く周知されることは、台湾の今後にとっても重要なことだと思います。

さて、日本政府はというと、13日、菅官房長官が「平和的な話し合いを通じて事態が早期に収拾されることを期待する……邦人保護の観点を含め大きな関心をもって注視している」と半ば他人事のようなコメントをするだけで、中国への直接批判をさけました。G20を考えて波風を立てないようにしたのかもしれませんけれども、ちょっと危機感が足りないと思います。

産経新聞は、安倍政権が価値観外交を掲げてきたのだから、曖昧な姿勢ではなく、改正案への強い懸念と、撤回を求める香港市民に連帯を表明すべきだと批判するのも道理です。

強いていえば、河野外相が13日にツイッターで「香港の友人として、最近の情勢を大変心配しています。特に多くの負傷者が出ていることに心を痛めています。平和的な話合いを通じて、事態が早期に収拾され、香港の自由と民主が維持されることを強く期待します」と、自由と民主を守れと気を吐いたくらいです。

香港政府はとりあえずの混乱から逃げただけで、根本の問題は何一つ解決していません。世界は今以上に香港の動向に目を光らせておく必要があると思いますね。

この記事へのコメント

  • 心配性のおばさん

    まさに中国共産党は「悪の帝国」ですね。侵略と弾圧を止むことなく繰り返しながら膨張しています。一握りの共産党員のために。
    昔、勤めていた会社に研修生として中国の人々がいました。
    物珍しさも手伝って、彼らから中国語の手ほどきを受けたりしていました。
    彼らは、いわゆるエリートで、英語はもちろん日本語も流暢にはなします。
    ですから、(中国語の手ほどきの甲斐なく)会話は日本語だけになってしまいました。
    彼らが困るのが分かっていたので、私は政治の話を避けていたのですが、ある日、経済躍進目覚ましい上海のことが話題にのぼり、誰かが「故国に戻りたい?」と聞いた時、彼らは互いを見合いましたが、何も答えませんでした。
    が、部屋を出た私を追ってきた一人が唐突に「私は、中国人ですが、共産党員ではありません。」とすれ違いながら言って立ち去りました。
    その言葉に何をどれだけ込めたかったのかは、今となっては知る由もありませんが、彼にとって、中国共産党が支配する故国は決して幸福な場所ではないのではないでしょうか。
    私は、決してトランプ氏のことを支持している訳ではありませんが、アメリカが中国共産党を瓦解させることができればいいな。と思っております。
    2019年06月16日 09:11

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