ホルムズ海峡でのタンカー襲撃と公平を貫く日本

 
今日はこの話題です。

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1.ホルムズ海峡で攻撃を受けた2隻のタンカー

6月13日、ホルムズ海峡近くで日本の海運会社が運航するタンカーなど2隻が攻撃を受けました。

攻撃を受けたのはノルウェーのフロントラインが所有する「フロント・アルタイル」と、日本の国華産業が運航するパナマ船籍の「コクカ・カレイジャス」。

「フロント・アルタイル」では爆発が起き、火災が発生。乗組員は避難し、付近を航行中の船舶に救助された後、イランの救命艇に乗り移りました。関係筋によると、フロント・アルタイルは磁気機雷による攻撃を受けた可能性があるとしています。

一方、「コクカ・カレイジャス」は、正午頃と約3時間後の2回攻撃を受け、1発目は右舷後部に着弾。外板を貫通してエンジンルームに到達。2発目は右舷中央部の外板を貫通しました。甲板にいた船員が2発目が飛来する様子を目撃していて、着弾箇所が水面より上であることから、国華産業は、魚雷や機雷ではないとみているようです。

「コクカ・カレイジャス」の21人の船員は2度目の攻撃後に救命艇で脱出。1人が軽傷を負ったものの回復しているそうです。「コクカ・カレイジャス」自身は沈没の恐れはなく、現在、米海軍の護衛を受けながらタグボートに曳航されてアラブ首長国連邦のコール・ファッカン方面に向かっているそうです。入港できれば積み荷のメタノールを別の船に積み替えて修復に入るとしています。

タンカーへの攻撃について、13日、アメリカ中央軍のビル・アーバン報道官は声明を発表。イラン革命防衛隊が「コクカ・カレイジャス」に接近したとし、タンカーから不発機雷を取り除く姿が観測されたとしその記録映像を公開しました。

関係者の1人によると、映像はアメリカ軍機が上空から撮影したもので、イラン艇が攻撃を受けたタンカーと並んで航行し、船体から「リムペットマイン」と呼ばれる水雷を取り除く様子を捉えています。映像には、この艦艇に乗った人物が水雷をつかむ場面も映っているそうです。更に、タンカーに接舷した艦艇はイランの革命防衛隊が使用するボートと同じだと指摘されています。

「リムペットマイン」とは、艦船などに対する破壊工作に用いられる水雷のうち、船底に磁力などで吸着・密着させ、時限ないしは遠隔操作によって爆発させるタイプのもので、別名「吸着爆弾」とも呼ばれています。一般に人が運搬できる程度のサイズで、爆発の威力もそれほど大きくはないとされています。

本来、ダイバーが停泊している船の船底に取り付け、離れてから爆発させることで船を沈める吸着機雷が、喫水線上に取り付けられたのは、航行中の船底にダイバーが取り付けることは無理だったからだと見られています。

ただ、それでも、水面近くには取り付けできたのに、そうしなかったのは、タンカーを沈める意図はなく、警告の意味合いが強いという指摘もあるようです。

そして14日には、イギリス政府も「イラン革命防衛隊の一派が2隻を攻撃したことはほぼ間違いない」と発表。5月にアラブ首長国連邦沖でタンカー4隻が攻撃された件も「イランに責任があると確信している」と批判しています。

米英足並み揃えた形です。

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2.吸着爆弾を取り外す革命防衛隊

アメリカは、タンカーから「吸着爆弾」を取り外した映像を公開していますけれども、アメリカ軍が問題の艦船についてその後の足取りを追っていないはずがありません。おそらく、その「吸着爆弾」を回収した船がイランなりどこかの港に戻るまで追跡している筈です。

6月14日、シャナハン国防長官代行が「情報の機密をさらに解除し、より多くの情報を共有したい」と、関係国に機密情報の開示を行う可能性について言及していますから、日本にもその証拠は提示されるものと思われます。

ここで重要なのは、米英がイランの責任だと非難しているものの、実行はイラン軍ではなく「イラン革命防衛隊」と名指ししていることです。

イラン革命防衛隊は、ホメイニ師らによるイラン革命の後に創設された軍事組織で、イラン正規軍によるクーデターから革命後の体制を守るために生まれました。その設立目的から創設以後、拡大が続き、現在では正規軍と大差ない装備を持つようになりました。ただし、正規軍でないこともあってか、彼らはテロに近い不正規戦や非対称戦を得意としているとされています。

従って、イラン革命防衛隊にも、今回のような吸着爆弾による攻撃能力は十分にあると見られているのでしょう。

ただ、革命防衛隊は、ホメイニ師や、その弟子である現在のイランの最高指導者であるハメネイ師などに対して強い忠誠心を持っていることから、ハメネイ師が安倍総理と会っている最中に攻撃を行うことを革命防衛隊の司令官が命じるとは考え難いとの声もあります。

けれども、革命防衛隊の総数は12万人を超えていますし、ハメネイ師よりもさらに強硬な思想を持つものも少なくなく、跳ね返りによる暴走の線も捨てきれません。




3.公平を持って事にあたる日本

一方、タンカーへの攻撃はイラン軍ではなく、テロ組織の犯行だ、という指摘もあります。

6月13日、対テロ作戦などを担当する精鋭部隊、イラン革命防衛隊のキャナニモガッダム・ホセイン元司令官は、テヘランでの産経新聞の取材に「安倍晋三首相の訪問を反イラン宣伝に利用する狙いで行われたもので、テロ組織が関与した」と述べています。

ホセイン氏は、米・イランの軍事的緊張を高める目的で、分離主義を掲げるイラン南東部の反政府組織「ジェイシ・アドリ」やイランと敵対関係にあるイスラム教スンニ派過激組織「ISIS」や国際テロ組織アルカーイダ系などが関与した可能性を指摘。更に現場海域はテロ組織のほか、船に積み込まれた金や原油を奪う海賊集団も暗躍していると述べています。

ただ、攻撃後に行われた不発弾の回収はタンカーの周囲にアメリカ軍艦艇などの脅威が存在しないことをレーダーで確認する必要があることまでを考えると、テロ組織では無理ではないかともいわれているようです。

ホセイン氏はイラン軍の関与について、政府の救難当局がタンカーの乗組員44人を救助したとの報道があることを指摘。「衆人環視の状況であり不可能だ……現場海域はイランの軍艦が常時監視している。犯行集団を特定することもできるのではないか」と、イラン政府が調査に乗り出すことに期待を示しています。

果たして、真相が明らかになるのかどうかは定かではありませんけれども、日本政府は、アメリカに対し、イランが攻撃した裏付けとなる証拠を示すよう求めています。筆者は日本政府のこの態度に注目しています。

というのも、日本がアメリカ追従ばかりではないと世界に示しているからです。これはイランにとっても、アメリカの使い走りで仲介に来た訳ではないというメッセージにもなります。要するにアメリカ相手であっても「公平」を持って事にあたると宣言している訳です。

これは、今後の日本の中東外交に大きな意味を持ってくるのではないかと思いますね。

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