最低賃金の無闇な引き上げは景気低迷を招く

 
今日はこの話題です。

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6月15日、韓国統計庁は、5月の雇用動向を発表し、更なる経済悪化が明らかとなりました。

就業者の増加数は7万2000人と、2017年5月の37万9000人から大幅に鈍化。失業率も4%と同0.4ポイント悪化しました。悪化の度合いは若年層に顕著で、15~29歳では失業率は10.5%と1.3ポイント上昇しています。

また、5月下旬発表の家計動向調査でも、下位20%の低所得者層の家計所得が1~3月期に8%減と過去最大の落ち込む一方、高所得者層は増えたようです。二極化の加速が浮き彫りとなりました。

文在寅大統領は、就任当初は中道層と20代、自営業者などに支えられ、80%に近い圧倒的支持率を誇っていたのですけれども、蓋をあけてみれば、その支持層を痛めつけただけでした。

韓国の経済が失速した最大の理由の一つとして挙げられているのが最低賃金引上げです。「20年に1万ウォン(約1千円)」を目標に18年1月に前年比で16.4%も引き上げたのですね。

けれども、その結果は悲惨なものでした。コンビニやファストフードの加盟店、街の食堂など零細事業者が人件費負担増に耐えきれず、従業員を減らした。雇用そのものが激減した訳です。

筆者は文在寅政権発足直後の2017年6月のエントリー「文在寅大統領の『ポピュリズム経済政策』」で文在寅大統領の経済政策によって「非正規職の正規職化ではなく、正規職そのものの人数を減らす方向に動くだろう……この政策は、長期的に見れば経済縮小の方向に向かうことになる」と述べましたけれども、その通りになった訳です。

その危険は日本も変わりません。

5月28日、東京商工会議所は、日本政府が年3%以上の賃金引上げを目標にすることに反対する緊急提言を出しました。

その主な内容は次のとおり。
<最低賃金に関する緊急要望(主な要望内容)>

①足元の景況感や経済情勢、中小企業の経営実態を考慮することなく、政府が3%を更に上回る引上げ目標を新たに設定することには強く反対する。

②最低賃金の審議では、名目GDP成長率をはじめとした各種指標はもとより、中小企業の賃上げ率(2018年:1.4%)など中小企業の経営実態を考慮することにより、納得感のある水準を決定すべきであり、3%といった数字ありきの引上げには反対である。

③余力がある企業は賃上げに前向きに取り組むべきことは言うまでもないが、政府は賃金水準の引上げに際して、強制力のある最低賃金の引上げを政策的に用いるべきではなく、生産性向上や取引適正化への支援等により中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備すべきである。

<最低賃金引上げの影響に関する調査結果のポイント>

○昨年度の最低賃金引上げの直接的な影響を受けた中小企業は38.4%と昨年度から(33.0%)5.4ポイント増加した。最低賃金の大幅な引上げにより、中小企業への影響が広がっている。

〇仮に、今年度の最低賃金が10円~40円引上げられた場合における経営への影響と対応策を聞いたところ、30円および40円の引上げとなった場合、過半数の企業が「影響がある」と回答した。

○今年度の最低賃金が30円および40円引上げられた場合に「影響がある」と回答した企業に対応策を聞いたところ、「設備投資の抑制等」が最も多く、次いで「正社員の残業時間を削減する」、「一時金を削減する」との回答が続いた。
この調査で明らかなように、中小企業は、最低賃金が引き上げられると、投資を抑制し、残業時間とボーナスを削減すると回答しています。例えば、最低賃金が40円引き上げられたとすると、8時間労働換算で月額6400円。年間76800円の賃金増になりますけれども、ボーナスでそれだけ減らされたら、行って来いでプラマイゼロ。可処分所得は増えません。

厚生労働省が7日発表した毎月勤労統計調査の速報では、4月の実質賃金は1.1%のマイナスと4ヶ月連続で前年同月を下回りました。

最低賃金を上げるためには、その企業が儲かって成長していなければ中々できるものではありません。ですから、肝心要の経済成長が第一であって、賃金上昇は二の次にすべきだと思います。

やるべき経済政策をやらずに、強権発動して最低賃金だけ上げたところで、その行く先は破滅であることは、韓国が身を持って証明しています。

6月20日、立憲民主党は参院選に向けた経済政策「ボトムアップ経済ビジョン」を発表していますけれども、その中身は、最低賃金を5年以内に時給1300円引き上げるというもの。

現在の最低賃金はおよそ985円前後ですから、5年で1300円にするためには、年率で5.7%以上の引き上げが必要になります。韓国の年率16.4%に比べれば三分の一程度ですけれども、今の政府が打ち出して東京商工会議所から猛反発を受けている3%に対しては倍近い値です。

これが実施されようものなら、残業代なし、ボーナスカット、設備投資凍結などが行われ、景気は逆に冷え込むことは容易に予想されます。

景気押し上げを民間に押し付けるのではなく、政府自身が経済回復の手立てを積極的に行うべきだと思いますね。

この記事へのコメント

  • 匿名

    日銀と政府のデフレ脱却目標が一人歩きして、政権の政策が視野狭窄に陥っていますね。
    インフレを起こそうと賃上げしてますけど、供給過剰の是正はまだ道半ばで、
    世間にモノは溢れています。また需要は購買動機がないので盛り上がりませんし、
    少子高齢化が節約に拍車をかけます。

    最低賃金を上げるよりも、可処分所得を安心して消費出来る社会にしなければなりません。

    いま庶民は不安定な雇用に、住宅ローンをはじめとする借金返済、年金不足への貯蓄など、
    教育費も含め、生活に余裕はありません。

    住宅は持てないけれども、生活は出来るなど、国民に我慢を強いますが、
    手元に資金が残り、人生の安定は保証される等のトレードオフが無ければ
    消費は復活しないでしょう。

    政府主導の賃上げも全て徴税と生活防衛としての貯蓄と借金返済に霧散しますので。
    2019年06月22日 08:09

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