今日はこの話題です。


6月21日、アメリカのトランプ大統領がアメリカ軍の無人偵察機を撃墜したイランに対する報復爆撃をいったん承認してから、間もなく中止していたとニューヨークタイムズが報じています。
複数のホワイトハウス高官によると、アメリカ軍はイラン国内の21日夜明け直前にレーダー施設やミサイル発射施設など、複数の目標を爆撃する計画でした。
作戦はすでに「初期段階」で進行していて、爆撃の時刻が夜明け前としたのはイラン軍や民間人の被害を減らすために設定されたとしています。それが攻撃実施10分前に撤回されました。
爆撃については、マイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン大統領補佐官が強硬策を主張する一方、国防総省幹部はむしろ爆撃に慎重で、ドローン撃墜に軍事行動で対応すれば事態は一気に悪化し、中東地域に配備されているアメリカ軍に危険をもたらしかねないと警告。また議会指導者らも慎重な対応を求めたようです。
20日、トランプ大統領は安全保障問題担当の補佐官らや議会の指導者らと長時間にわたってイラン情勢を協議し、爆撃の中止を決めたと報じられています。
これについてトランプ大統領は「月曜には公海で飛ぶ無人ドローンを撃墜した。こちらは夕べ、3つの別々の地点に報復すべく、撃鉄を起こして弾込めよしの状態だったが、そこで僕が何人死ぬんだと質問した。150人ですと将軍が答えた。そこで攻撃10分前に僕がやめさせた。無人ドローンの撃墜に対して相応じゃないから。僕は何も急いでいない。この国の軍は再建と刷新ができて、準備万端だ。群を抜いて世界最強だ。制裁の成果は出ているし、夕べはさらに追加した。イランは絶対に核兵器を手にしない。アメリカに対して。世界に対して!」とツイート。報道内容を認めました。
トランプ大統領のツイートで筆者が注目したいのは、無人機の撃墜と150人の人命は釣り合わないから攻撃を止めたとトランプ大統領が述べていることです。
「RQ-4Aグローバルホーク」は機体本体は1機約25億円で、司令部機能を持つ地上施設の整備などと合わせて初期費用の総額は数百億円と言われています。
人命とお金を天秤に掛けるのは元よりナンセンスな話ですけれども、少なくともトランプ大統領は無人機よりもイラン人150名の命が重いという判断を下した訳です。
つまり、今後、万が一、アメリカがイランを先制攻撃するような場合でも、アメリカ軍兵士の命が失われることがない限り、極力人命を奪わない形で行うことが予想されます。
米軍無人機の撃墜についてイランは、高空飛行を行っていた「RQ-4Aグローバルホーク」を、国内で開発した中距離地対空ミサイル「Khordad3」で撃墜したと主張しています。
「RQ-4Aグローバルホーク」は攻撃能力を持たない純粋な偵察機で、2004年から運用開始され、イラク戦争で実戦投入された機体です。
撃墜についてはアメリカ中央軍が声明で「無人偵察機『RQ-4Aグローバル・ホーク』が6月20日、ホルムズ海峡上の公空で飛行していた際に、イラン領の陸からミサイル・システムにより爆撃・撃墜された」と認めているのですけれども、アメリカの無人偵察機RQ-4が撃ち落されたのは、派生型も含めて、今回が初めてです。
そして、それを撃ち落としたのが、イランの主張通りであるなら、地対空ミサイルシステム「ラアド」の派生型になります。
これは、イランの国産地対空ミサイルがアメリカの無人偵察機を撃墜する力があることを証明したことになり、もしもアメリカがイランへの武力行使を計画したとしても、事前の偵察が出来ないとなると、一気にそのハードルが上がることを意味します。
先に述べた様に、アメリカがイラン人含めた人的被害を極力避ける戦争を行う為には、人の居ない施設のみをピンポイントで攻撃する精密爆撃が不可欠です。其の為には事前の偵察を行い、ターゲットとなる設備を特定し、データを収集しておかなければなりません。
無論、攻撃後も戦況把握にも無人偵察機は運用されています。
けれども、今回イランが主張するように、「RQ-4Aグローバルホーク」がイランの国産ミサイルで撃ち落とされたのが本当であれば、それら一連の運用を見直す必要が出てきます。
まぁ、大型レーダーなど、動かせない軍事施設であれば、偵察衛星からの情報でもなんとかなるかもしれませんけれども、自走式地対空ミサイルあたりになると対応は難しいでしょう。
トランプ大統領は、「RQ-4Aグローバルホーク」の撃墜について、記者団に「アメリカは容認しない」と警告する一方で「意図的だと信じるのは難しい。無責任で愚かな人間が行った可能性がある」と、イラン指導部の指示なしに実行されたとコメントしています。
けれども、これは逆にいえば「意図的」であったなら、報復するということでもあり、その「意図的」であるかどうかの判断が下されたら、事態は一気にエスカレートしてしまうことを意味します。事態は全く楽観視できません。
ただ、先日安倍総理がイランを訪問し、ロウハニ大統領とハメネイ師との会談を行いましたので、安倍総理を仲介としたイランとアメリカのパイプがかろうじて繋がりました。
28日からの大阪G20で、安倍総理はトランプ大統領と首脳会談を行うことになりましたけれども、当然イラン情勢についても話し合われるものと思います。
直ぐに解決しないまでも、事態が拡大しないことを望みたいですね。
この記事へのコメント
匿名
瀬取りされているのでしょうか?人工衛星から証拠は既に抑えられ
ているのでしょうか?核物質とのバーターが明らかになれば、新たな
展開がありそうですね。
心配性のおばさん
しかし、今回のトランプ政権の中東作戦は違います。イランとの仲介に赴いた安倍総理の訪問時にタンカー襲撃、ホルムズ海峡監視のために稼働していた無人偵察機の撃ち落し。のイラン側からの攻撃と疑われる件に報復を踏みとどまっています。
それは、決して弱腰から来る判断ではありません。イランは、北朝鮮や中東テロ組織と深い関係を結んでいます。また、現在進行している米中経済戦争の一手としての石油供給路の遮断という理由もあります。
イラン合意離脱に始まるトランプ政権の中東作戦は、中東-中国-北朝鮮と繋がったものです。
アメリカは今回の中東作戦と決して感情的には運ばない。しかし、決して引くこともない。と感じています。