中朝会談のすれ違いと効かない「北朝鮮カード」

 
今日はこの話題です。

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6月20日、中国の習近平国家主席は、国賓として北朝鮮を訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長と会談しました。中国国家主席・総書記の訪朝は2005年の胡錦濤氏以来14年ぶりのことで、勿論、習近平主席の訪朝は2012年の総書記就任後初めてです。

習近平国家主席は、実に北朝鮮に27時間滞在。27時間のうち睡眠時間と移動時間を除く16時間で習近平主席と金正恩委員長の2人は終始行動を共にしたようです。

金正恩委員長は習主席のため初日に3回歓迎式典を開催し、最終日には空港で歓送式まで行いました。

労働新聞も紙面の殆どを割いて習主席訪朝の様子を紹介。南北、米朝、朝ロ首脳会談の時とは比べものにならない破格の扱いです。

けれども、歓迎の扱いとは裏腹に肝心の会談はぱっとしないものでした。

中国国営中央テレビによると、習金平主席は「朝米対話の継続と成果を国際社会が望んでいる」と前向きな対応を求めたのに対し、金正恩委員長は「朝鮮半島の緊張緩和のために積極的な措置を取ってきたが、関係国から前向きな反応を得られなかった……われわれは忍耐心を保ちたい。関係国もわれわれに歩み寄ることを望む」と答えました。

習近平主席は「中国は安全保障と発展に関する懸念を解決するため、力の及ぶ限り援助を提供したい」と述べたそうですけれども、習近平主席が米朝対話を進めろと促したのに対して、金正恩委員長は、やっているが周りの国が動かない、周りがこっちに歩み寄れ、と、もう北朝鮮は動かないぞと言い放った訳です。

習近平主席は訪朝前、朝鮮労働党機関紙である労働新聞に、「地域の恒久的な安定実現のための遠大な計画を共に作成する用意がある……(地域の平和や発展のため)積極的に寄与する」と、朝鮮半島問題の対話による解決と、金正恩党委員長の経済集中路線に支持を表明する旨の寄稿をしています。

つまり、経済援助するから言うことを聞け、と前もって地均しをしていたのですね。けれども、金正恩委員長は、俺はやることはやった、これ以上は周りが歩み寄るべきだ、と不満を漏らした訳です。事実上のゼロ回答に近い反応だった訳です。

当初は「対米強硬路線」で盟約を結ぶのではという見方もあったそうなのですけれども、蓋を開けてみれば、何の盟約も声明もなく、会談内容も通り一遍というか、目立った何かがあった訳ではありません。

まぁ、金正恩委員長がは昨年3月以降、中国を4回訪問し、習氏の早期訪朝を促していたとはいえ、習近平主席のこのタイミングでの訪朝は急な話でした。

神田外語大教授の興梠一郎氏は、習近平主席の訪朝はG20で行われると見られる米中首脳会談に向けて、外交カードの一枚として北朝鮮を使ったのではないかと指摘しています。

興梠氏教授は、今の米中貿易問題で不利な立場にある習近平主席が膠着状態に陥っている米朝協議、半島非核化に対して、中国の影響力を見せつけようとしたのではないかと推測。更にそれに加えて、香港の「逃亡犯条例」改正問題についてほじくり返されたくないよう世界の目を北朝鮮に逸らさせようとする狙いがあるのではないかと指摘し、北カードを手にトランプ大統領と対等なイメージで首脳会談を行う状況に持ち込めれば中国としては成功といえると述べています。

つまり、あくまでもイメージづくりだという訳です。

まぁ、このタイミングでの訪朝をみれば、誰もがそう考えるのが普通です。逆にいえば、それだけ習近平主席が追い込まれているとも言える訳です。

けれども、いくらイメージづくりが成功したとしても、中身が伴わなければ意味がありますありません。肝心の中朝会談では目立った成果がなかった訳ですからね。現時点では中国とて、金正恩委員長と会って話が出来る以上の意味は持っていないということです。

それでトランプ大統領が中国への報復関税を待ってくれる保証はありません。トランプ大統領は米朝協議について急いでいないといっているのですから、中国の「北カード」がそもそもにしてどこまで効果があるのか分かりません。

また、香港の「逃亡犯条例」改正案を巡る問題についても、6月16日、ポンペオ国務長官がFOXニュースのインタビューで「大阪でトランプ氏が習氏に会う機会がある。議題になると確信している」とG20での米中首脳会談で議論するとの見通しを述べています。

ですから、所詮はトランプ大統領の胸先三寸次第であり、中国の「北カード」は気休め程度にしかならないと思いますね。

いうのも、既にトランプ大統領は、北朝鮮の金正恩委員長と、直接親書のやり取りをしているからです。

6月23日、朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は「金正恩委員長にトランプ大統領の親書が寄せられた」と1面で報じています。

また、北朝鮮の対外宣伝サイトの「我が民族同士」も「最高指導者金正恩国務委員長にアメリカ合衆国大統領から親書」というタイトルで「敬愛する最高指導者は、トランプ大統領の親書を読んで立派な内容が盛り込まれていると述べ、満足の意を表した。敬愛する最高指導者は、トランプ大統領の政治的判断能力と並々ならぬ勇気に謝意を表すると述べ、興味深い内容を慎重に考えてみると語った」と伝えています。

これについて元日本経済新聞社編集委員の鈴置高史氏は、トランプ大統領は親書で「米韓同盟と、形式的には残る中朝同盟を同時に廃棄して半島全体を中立化しよう」と呼び掛けたのではないかと指摘しています。

もし、この内容が本当で、金正恩委員長がこれに満足の意を示したとするのなら、半島情勢は一気に進む可能性があります。

この親書が、習近平主席の訪朝以前に金正恩委員長の下に届けられていたとするなら、金正恩委員長が「我々は忍耐心を保ちたい。関係国もわれわれに歩み寄ることを望む」と突っぱねたのも頷けます。

それを考えると、やはり習近平の「北カード」は切り札にはならないのではないかと思いますね。

この記事へのコメント

  • 心配性のおばさん

    日比野庵様 間違いみっけ(笑)。

    >けれども、いくらイメージづくりが成功したとしても、中身が伴わなければ意味があります。

    意味があります。→意味がありません。うふ。

    それにしても、習近平さん、見苦しい程の狼狽えぶりですね。戦う前から負け感半端ないです。
    心配なのは、半島もそうですが、小者ほど暴発しやすい。ということです。
    追い詰められた中国。鄧小平さんなら、何食わぬ顔で一旦引く。でしょうが、習近平さんの力量では望めない気がします。
    嫌な感じですね。
    2019年06月26日 08:48
  • 日比野

    心配性のおばさん様
    おはようございます。
    誤字訂正ありがとうございます。修正しました。

    トウショウへイの100年は野心を隠せとしていたのを我慢できずに顕にしたのが、失敗のはじまりかとオモイマス
    2019年06月26日 10:13

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