在韓米軍の衣替えと半島有事

 
昨日の続きです。

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6月2日、アジア歴訪中でアメリカのシャナハン国防長官代行は次の訪問地、韓国のソウルに向かって飛行中の機内で、記者団からの米韓合同演習は再開するのかとの質問に「その必要はないと考える」と返答。在韓米軍は北朝鮮との「外交が失敗した際の準備」がすでに整っており、「われわれに求められている即応体制、作戦部隊、態勢は整っていると確信している」と答えました。

その理由は翌日に明らかになりました。

翌3日、韓国の鄭景斗国防部長官とアメリカのシャナハン国防長官代行はソウルの国防部庁舎で米韓国防相会談を行った後、米韓連合軍が持つ有事作戦統制権の韓国軍への移管に伴い、作戦統制権を行使する「未来連合軍司令官」に韓国軍大将を任命する旨を盛り込んだ共同報道文を発表しました。

会談では、ソウル・竜山の米軍基地の移転により、米韓連合軍司令部本部をソウル南方、京畿道平沢の米軍基地キャンプ・ハンフリーに移転することにも合意しています。

今後は、従来行われていた合同指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン」に代わる合同演習を下半期に行う計画を立てるために協力を強化するとしています。

けれども、よくよく見ると、合同演習を下半期に行うとしているものの、具体的な計画も立っていない段階であり、本当に下半期に行われるとも決まっていません。進展次第では無期延期にならないともいえません。

作戦統帥権をアメリカが持つに至ったのは、70年近く前の朝鮮戦争にまで遡ります。朝鮮戦争中の1950年7月14日、当時の李承晩大統領は国連軍総司令官のマッカーサーに書簡を送り、韓国軍の作戦指揮に関する権限を委譲する旨を伝え、16日にマッカーサーが受諾したことにより、国連軍を主導するアメリカ軍が韓国軍の作戦指揮に関するすべての権限を行使することになりました。

朝鮮戦争停戦後、韓国軍は国連軍総司令部の作戦統制権の下に置かれ、徐々に権限の返還が行われることになります。

1994年12月1日に、韓国軍に対する作戦統制権が戦時と平時に分けられ、そのうち平時の作戦統制権が国連軍総司令部から韓国側に移管されました。

そして、今回ようやく戦時作戦統帥権が韓国側に戻されたということになります。

では、戦時作戦統制権が移譲された後、在韓米軍はどうなるのか。

現在、米韓連合司令部は司令官がアメリカ、副司令官が韓国からという構成になっていますから、韓国軍の最終的な司令権限は実質的にアメリカが握っています。

けれども、作戦統制権が返還された後、新たに設置する「未来連合軍司令官」では、韓国軍の大将が司令官、アメリカ軍の将軍が副司令官を務めることになります。

そうなると、在韓米軍は韓国が指揮することになるのか。というと、そうとも限りません。

韓国への作戦統制権返還交渉自体は昨年から行われていたのですけれども、これについて著名ブロガーであるシンシアリー氏が昨年11月に興味深い記事を上げています

シンシアリー氏は作戦統帥権の返還について、驚いたこととして次の2点を指摘しています。
1)いま韓米同盟の状態が、とても「韓国軍の指揮下に在韓米軍を置く」に合意できる状態ではないにもかかわらず、すんなりと合意できた点。
2)もう1つは、戦時作戦統制権の移譲後の在韓米軍の「規模」に関する内容がどこにも見当たらない点です。
筆者はこの中の、「2)在韓米軍の規模に関する記述がない」という指摘に注目しています。なぜなら、これが本当であれば、事実上の在韓米軍撤退になるからです。

在韓米軍の規模に指定がなければ、極端な話、最低一人でも良いわけです。米韓連合軍司令部本部を京畿道平沢の米軍基地キャンプ・ハンフリーに移転させたとしても、そこに米韓連合軍副司令官兼在韓米軍駐在武官一名だけ任命し、残りの実戦闘部隊は在日米軍所属にして、米軍内の作戦の都合上「たまたま」キャンプ・ハンフリーに居るということにすればよいからです。

つまり、命令書一枚で、一夜にして在韓米軍は在日米軍へと衣替えすることになるのですね。

そうすれば、キャンプ・ハンフリーの実戦闘部隊は、韓国軍の指揮下に置かれることなく、フリーハンドでの行動が可能になります。在韓米軍として所属するのが駐在武官だけでは、戦力にならないし、戦場に出す訳にもいきません。しかも、それがそれなりに階級のある人物だったとしたら、無碍にも扱えません。

こう見てくると、シャナハン国防長官代行が語った在韓米軍は北朝鮮との「外交が失敗した際の準備」がすでに整っており、「われわれに求められている即応体制、作戦部隊、態勢は整っていると確信している」というセリフが何やら意味有り気なものに聞こえてきます。

はっきりいえば、朝鮮有事の際に、在韓米国人と在韓邦人含めた撤退に注力するもあり、逆に北朝鮮への先制空爆も出来るということです。

作戦統帥権を返還すると共に、在韓米軍を形骸化させれば、半島有事における軍事作戦もアメリカ軍は韓国軍と共有する必要もありません。その意味では、逆に半島有事の準備が整い、戦争が近づいてきているような気さえします。

これは、筆者の勝手な想像ですけれども、今、それを最後に食い止めているのは、おそらく安倍総理です。

先日の、日米首脳会談後の共同記者会見で安倍総理は、北朝鮮の金正恩委員長と条件を付けずに会う、と繰り返しました。当然トランプ大統領も承知の上でしょう。

そのあたりも、先のトランプ大統領来日時に話し合われたかもしれません。なんとなれば、トランプ大統領は、「シンゾーの件がどうなるか見てみよう」ということで、攻撃を待っているだけなのかもしれません。

もしも、安倍総理と金正恩委員長との日朝首脳会談が実現し、拉致問題解決および非核化への道が開かれれば、金正恩委員長は、しばらくは今の地位にいられるのだろうと思われます。

その意味では安倍総理の金正恩委員長への呼びかけは「最後通牒」になっている可能性があります。

そして、会談が実現しないか、あるいは会談しても決裂した場合は、いよいよアメリカの先制空爆が見えてきます。

となると、その時期は早ければ参院選が終わり、内閣改造をした後あたり。防衛大臣も、アメリカの信任厚く、連携獲れる人に交代になるのではないかと思います。
※6/5追記 戦時統帥権移管が完了する時期ははっきりしていませんけれども、2022年までには行われるのでは、と中央日報が報じています。そこまでかかるとも思えませんけれども、移管完了時期は大きなファクターになると思います。

参院選後は、東アジア情勢は大きく動くかもしれませんね。

この記事へのコメント

  • ヘイジ

    日比野さんへ

    毎日、執筆ご苦労様です。

    おっしゃる通りですね。

    たった一人の在韓米軍

    うけますね。笑えます。

    アメリカが韓国を見捨てたことは確実ですね。

    ただ、私はアメリカは先制空爆はしないと思います。

    なぜなら、アメリカにとって朝鮮半島は政治的にも地政学的・軍事学的にも無意味なものになりましたから。

    その理由は、やはり「海」の存在ですね。

    北朝鮮が弾道ミサイルを日本の領海に撃ち込んだら、さすがにアメリカは黙ってはいませんが。

    アメリカはいつも「先に手を出させてオーバーキル」戦法ですから。
    2019年06月05日 11:03
  • 愛国的日本人

    反差別を標榜するCRACがユダヤ人差別投稿でアカウント凍結に

    CRAC(C.R.A.C. 旧称しばき隊 代表野間易通さん)のTwitterアカウントを「反ユダヤ主義(ユダヤ人差別)」ツイートで通報したら、アカウント凍結の報告が来ました

    https://taguchikei.hatenablog.com/entry/2019/06/04/163201
    (1)クリックで通報
    (2)書面で、米国のTwitter社に説明文を添えて要請
    (3)各種人権団体(在米)にも通報趣旨を説明

    差別と戦うはずことを標榜ていたはずのC.R.A.C.(旧称しばき隊 代表野間易通さん)のアカウントを ”abusive behavior (濫用的ふるまい)” で凍結処分した旨の回答がTwitter運営から来ました

    濫用=本来の目的以外に使うこと
    2019年06月05日 20:20
  • のえる

    これって 在韓米軍費用 全部出せってことかな
    2019年06月06日 13:24

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