

1.N国党立花代表と高須医院長の対談
8月19日、高須クリニックの高須克弥院長が24日、15:30からのニコニコ生放送で、N国党の立花孝志党首と直接対談することが決まったとツイッターで明かしました。
これは、N国党の立花代表がTOKYO MX「5時に夢中!」の番組内でのマツコ・デラックス氏の発言に激怒し、12日、TOKYO MX局前に突撃。同番組の生放送中だったガラス張りのスタジオの外で、支援者らと約1時間抗議したことに対し、高須院長が「立花孝志先生に申し上げます。僕は日本では言論の自由が認められていると信じております。不快な言論に対する抗議も自由です。しかし営業中の仕事場にアポイントもなく押し掛け妨害する自由までは認められないと存じます……僕がマツコさんの立場なら迷わず警察に通報します。間違っておりますか?」と苦言を呈していました。
これを受け、立花代表が「対話をして頂けるとのことなので、是非直接お会いして対話させて下さいませ。場所と時間は高須様のご都合に合わさせて頂きます」と返信。タレントのフィフィ氏も「これは面白そうですね!ぜひこの高須医院長と立花議員の対談動画の司会をしたい」と乗り出し、今回の対談が決まったようです。
ネットでは「面白そう」など、早くも盛り上がっていて、注目を集めています。
2.兵は神速を尊ぶ
このように、何かと注目を集めているN国党の立花代表ですけれども、いくつかの動画を見て、筆者なりに彼の動きと言動をちょっと兵法的な観点から見てみたいと思います。
政治家の方々を戦国乱世の大名として仮に捉えてみると、立花代表には、他の政治家(大名)と比べて特徴的な点が大きく二つあるように思います。
それは突出した機動力と新兵器です。
12日にTOKYO MX局前に突撃し、マツコデラックス氏を叩いていたかと思えば、19日の二回目の突撃では、マツコ氏については、これ以上攻撃すると苛めになるからやらないとし、MXテレビが放送法に違反していると思われるから見解をだせ、と矛先を変えています。
そして、崎陽軒の不買運動については「勇み足だった」と釈明しています。立花代表はわざわざその場で崎陽軒のシューマイを持参して、そう発言する辺り、最初から計算づくの行動だったのではないかとさえ思わせます。
立花代表の発言や攻撃対象の変更・修正の速さを機動力として捉えるならば、恐ろしいまでの速さだと言えます。他の"凡百な"政治家の10倍は速い。
今のところ、立花代表は自軍の機動力を活かして、戦場を次々と変え、ゲリラ的に攻撃する戦術を取っているように見えます。相手が、立花代表に応戦しようと、迎撃態勢を整え、弓を構えた時には、もう"立花軍"はそこにはいない。逆に背後に回られ、奇襲攻撃を受けかねないほどの劣勢に追いやられています。
「兵は神速を尊ぶ」といいますけれども、立花代表の機動力は群を抜いています。
そして、もう一つの特徴である新兵器ですけれども、これはもう言わずとしれた"Youtubeでの動画配信"です。youtuberである立花代表は、いつでもどこでも、ノーカット編集で、"弾"を撃てる武器を手にし、効果的に活用しています。他の政治家はまだ十分にこの力には気づいてないかもしれませんけれども、戦国の世で例えれば、ネット動画は、ちょうど"鉄砲"にあたるのではないかと筆者には思えます。
立花代表は自身の動画配信で多数のユーザーを抱えていますから、他の大名を大きく上回る何千、何万の"鉄砲"を使って"弾"を撃ち続けているといえるのではないかと思いますね。
3.N国党が敷く「楽市楽座」
更に立花代表の戦の特徴を上げるとすれば、現時点では「自分の土俵で勝負する」ことに徹底しています。自分がその場で反論できない、一方通行の取材は一切断り、その場で反撃できる戦場でしか勝負していません。
まぁ、兵力という面でみれば、立花代表はまだまだ吹けば飛ぶような小大名にしか過ぎません。まともにぶつかっては潰されることは目に見えています。だから勢力が大きくなるまでは、決して相手の土俵では戦わない。立花代表は動画や記者会見でよく「合理的」という言葉を使いますけれども、非常に理に適った戦い方をしています。
以前、筆者は、立花代表のことを、その成りあがり振りから秀吉的なものを感じると述べたことがありますけれども、戦の仕方や、動画配信、記者会見での応答を見てきて、今は、秀吉よりは信長ではないかと感じています。
立花代表の動画か会見を聞くと、自分のことを「品性がよい訳がない」とか、「N国党の運営は自分の独裁でやる。そうでないと政治はできない」と開き直りとも取れる発言をしています。また、自分を裏切った者には容赦しない苛烈さも持っている。更には、TOKYO MXテレビ突撃のように、自ら最前線に立って戦っている。このあたりも弱小勢力の時の信長に似ています。
はっきり言って、敵味方をどちらも作るタイプだと思います。立花代表を毛嫌いしたり、「うつけ」と見る人がいても当然だと思います。その反面、熱狂的な応援団も作っている。両面を持った人物です。
ということで、申し訳ありませんけれども、筆者は、立花代表について、秀吉ではなく「信長的である」に訂正したいと思います。
憲政史研究家の倉山満氏は、ワンイシューを貫くN国党を、かつて自民党が「日米安保体制と資本主義経済に賛成さえすれば自由」としていたが今や見る影もないことを指摘して、N国が自民党のパロディーである、と述べた上で、立花代表は意図的に「バカ」を演じている。本物のバカは、バカを演じることはできない、と述べています。
立花代表は「スクランブル放送の実施」の一点さえ同意すれば、他の政策のすり合わせは全く行わないとしていますけれども、これも見方によっては、政治家にとっての「楽市楽座」みたいなものでしょう。次の選挙ではこの「楽市楽座」が選挙互助会的な役目を果たし、選挙に弱い野党議員がこぞってN国党に雪崩れ込んでこないとも限りません。
立花代表が本物の「うつけ」なのかそうでないのかはこれから分かるかと思いますけれども、いずれにせよ、型破りであることは間違いないと思いますね。
4.勢力拡大に臨む立花代表
では、立花"信長"は今なにを目指しているのか。これについて、筆者は"兵集め"をしているのだと見ます。
今回の参院選では、ネットを中心に無党派層、特にこれまで一度も選挙に足を運んだことのない人たちがN国党を見て、初めて投票したという声が多く見られます。
「NHKをぶっ壊す」という幟を立てて、これまで戦を遠巻きに見ているだけだった、そこらの農民に決起を促し、戦に参加させることに成功している。立花代表は自分が"目立つ"ことで、農民に声をかけ、雑兵に仕立て上げたというわけです。

立花代表はこれを更に推し進め、自分に投票してくれる"雑兵"を増やそうとしているのだと思います。当然、立花代表を毛嫌いし、参加しない人も相当数出てきますけれども、そんなのは「捨て置け」とばかり相手にしない。自分についてきてくれる者だけを相手にして兵を集めている。
そのためにはもっともっと目立つ必要がある。だから、マツコデラックス氏を攻撃したり、崎陽軒を不買だと騒ぎ立てるなりして、"わざと"目立とうとしているのだと思いますね。
実際、TOKYO MX局前に突撃したことについても、大阪の松井一郎市長に「仕事場に押しかけて実力行使するのはやり過ぎ」と言わせ、アルピニストの野口健さんも「自民党総裁が一々、そんな事をやりますかね」とコメントしています。
また、崎陽軒についても、大リーグのダルビッシュ有投手が「崎陽軒に罪はない気がする笑 てか良く新幹線乗るとき買ってたなー。また食べたい」とツイートするなど、有名人を続々とネット空間に引きずりだすことに成功しています。彼らはもうこの時点で、立花代表の策に嵌っています。
そして、立花代表は、目立つという当初の目的を達成したら、マツコ氏を苛めるのは止めると得意の機動力でさっと撤退。この速さに、既得権益側、古い"大名"達はまったくついていけていません。
更に付け加えるならば、マツコデラックス氏をやり玉に挙げても、同じく自分を批判した爆笑問題の太田光氏はスルー。週刊文春に対し訴訟を起こすための弁護士をネットで募集するといって、色んな方の名前が挙がったにも関わらず、最後に橋本徹氏を指名して依頼したりしています。もう最初から計算づくでやっているのだと思いますね。
立花代表は、このように、ネットを使って全国各地から"雑兵"を集めることに注力しています。おそらく、これからその"雑兵"達の中から、発信力のある人を取り立てて"仕官"させ、立花家臣団を作っていくのではないかと思います。
過去の経歴、学歴、コネなど一切関係なく、"実力"さえあればどんどん取り立てていく。信長もそうでしたけれども、そんなことをやってくるのではないかと思いますね。
5.第六電波王・立花孝志
今、日本で公共に使われている電波には、AMラジオの「中波」、短波放送の「短波」、FM放送やテレビの「VHF」、テレビ放送の「UHF」、衛星放送の「マイクロ波」と大きく5つの電波がありますけれども、立花代表はネット動画配信を引っ提げて、ここに割り込もうとしています。広く知らしめるという意味では第6の電波といえるかもしれません。
かつて、武田信玄は、信長が比叡山延暦寺を焼き打ちしたことを理由に信長に敵対することを決意し、「天台座主沙門信玄」と署名した手紙を信長に送りました。
※実際は焼き討ちしていないのではという説もあり
これに対し信長は、売り言葉に買い言葉で、「第六天魔王」と署名した手紙を返したとも言われています。
当時、延暦寺などの大寺院は、領地や兵力、財力を兼ね備えた一大勢力でした。けれども、その裏では、寺の権威をかさにきて、女を連れ込んだり、金貸しに手を染めるなどやりたい放題で、延暦寺は浅井家や朝倉家に協力していました。その意味では、比叡山延暦寺も当時の既得権益勢力の一つだと言えなくもありません。
信長はそれを討って、既得権益を破壊した。
なにも、NHKや既存マスコミが"比叡山延暦寺"だという積りはありませんけれども、N国党の立花代表を"信長"とみるならば、同じ構図が起こっているように筆者には見えます。
果たして、立花代表が、第六の媒体であるネット動画を駆使する「第六電波王」になるのか、それともただの「大うつけ」で終わるのか分かりませんけれども、既得権益を持つ側にとっては、相当の脅威になるかもしれませんね。

この記事へのコメント
ス内パー
みんなの党の勢力を譲るに足る相手か、それに値しない併合すべきうつけか
いずれにせよ先行投資気味に会派結成(同盟であり下にはついていない)して様子見とか
ほかの政党よりは踏み込んでますし。
さんさん
NHKに勤めてた経験が有るのでメディアの使い方と視聴者に訴え掛ける手法が長けてるんでしょう。
立花代表の手法は見慣れた劇場型政治のポピュリズムにしか過ぎません。
この手法と立花さんがベストマッチングで観客受けしてるだけですよ。
この道は既に何度も通た道、最近では小池知事誕生を後押ししましたね
正直、アホくさい気にしか成りません
低い城の男
NHKスクランブル化ですが、2012年の地上波デジタル化に際して、産経新聞社が世論調査したところ、88パーセントの回答者がスクランブル化に賛成だったそうです。 立花さんとNHKとどちらに分があるのかよく分かりませんが、もう1つ、別のやり方もあるのではないでしょうか。
受信機保有者に対する契約応諾義務は存続させたまま、フリーライダー対策としてスクランブル化を実施する方法です。 大がかりな法改正は不要ですし、一部の地方放送局のエリアだけを実験的に先行実施すること可能だと思われます。 受信料を払ってきた人には影響ないし、これまで払ってなかった人はNHKを見たければ受信契約に応じるしかなくなります。 契約者の数はむしろ増える可能性が大です。 その分をスクランブル化の原資にあてたり、さらには受信料を値下げできれば、NHK批判も沈静化するかもしれません。
日比野
こんばんは。御無沙汰してます。
そうですね。今の段階で立花氏に食い込むのは立ち位置的に斉藤道三になっちゃいますね。
衆院選での政見放送は「真面目にやる」といってますけど、そこでビシッと決めて「うつけ」の綽名を吹き飛ばしてしまうようなことがあれば、それこそ、正徳寺での道三との対面になりますね。
立花氏の人となりを一言でいうなら、「正義感の物凄く強い、徹底した合理主義者」というところでしょうか。だから、噛みつくにせよ、取り入るにせよ、"数字"を持っている人しか相手にしないのでしょうね。
彼の言動を見ていると、やっぱり信長を連想してしまうんですよね。
既得権益者はうかうかしていると、全部ぶっ壊されてしまいそうな感じがありますね。
日比野
こんばんは。コメありがとうございます。
>無責任男の立身出世伝で、売名の為に労を惜しまずですよ
そういう見解も当然あると思います。
劇場型政治のポピュリズムであっても、票を集めて議席を取れば、それなりの力を持ちますから。
立花氏が、天下を取るとこまでいくかどうか別として、今の勢いならば、N国党はもう少し議席を伸ばすと思いますけれども、しばらくは世の中を賑わしそうですね。
日比野
こんばんは。コメありがとうございます。
契約応諾義務は存続させたままのスクランブル化ですか。
受像機を持っていてもNHKを見たくない人についての契約解除出来るかどうかがポイントになるような気がします。
面白い案ですね。