安保体制に穴が開く韓国

 
今日はこの話題です。
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1.北朝鮮弾道ミサイル発射

8月24日、日本政府は北朝鮮から弾道ミサイルが発射されたものとみられると発表しました。ミサイルは「わ我が国領域には飛来せず、また、我が国排他的経済水域内にも落下しないものとみられる」としています。

防衛省幹部によると一連の短距離弾道ミサイルとは異なる軌道で発射された可能性があるということで、防衛省で分析を急いでいるとのことです。

一方、韓国軍の合同参謀本部も北朝鮮が東部の咸鏡南道宣徳付近から日本海に向けて飛翔体を2回発射したと発表しました。

在韓アメリカ軍司令部は「北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射したことは把握している」としたうえで、韓国と日本と緊密に連携して状況を注視している旨の声明を出していますけれども、韓国のGSOMIA破棄宣言直後の発射はどうみても、日米韓の情報共有に関する反応と連携具合を試そうとしたのだと思われます。

実際、これまでだと、ミサイル発射後しばらくしたら、どのくらい飛んで、どの辺りに着弾したなどという発表があったのですけれども、今回は日本の方が韓国より30分早く発表し、各々の内容にも違いがあります

GSOMIAがあれば、日本側が探知したミサイル情報を韓国側に提供できたのですけれども、GSOMIAが切れる11月以降はそういう訳にはいかなくなりますし、今回の発表も日本の方が早かったことを考えると、早くも連携が崩れているのではないかと懸念されます。


2.偵察衛星を持たない韓国

北朝鮮が、日本海北東にミサイルなどを発射すると、地球の丸みによって韓国軍の弾道弾早期警報レーダーが探知できない「死角地帯」が発生します。

しかし、韓国側からみた「死角地帯」は日本側の陸上レーダーや海上配備のイージス艦からは探知できるため、相互の情報を突き合わせることでカバーすることが可能になります。

実際、7月25日に北朝鮮がKN-23新型SRBM2発を撃った際、韓国軍は射程距離をそれぞれ430km以上、690km以上と発表したのですけれども、翌日両方600kmに訂正しています。これは、日本からのミサイル追跡情報が提供されたからだと言われています。

ところが、韓国がGSOMIA破棄をしたことで、こうしたミサイル追跡情報が共有出来なくなります。これは、韓国の安全保障にとっても問題になる筈です。

こうした陸上レーダーによるミサイル追跡において問題となる死角地帯の問題を解決するには、先に述べたように、他のレーダー情報を共有・活用することになるのですけれども、その一つの方法としてあるのが偵察衛星です。

偵察衛星は衛星軌道という真上からレーダー観測しますから死角地帯をカバーすることが出来ます。

けれども、現在韓国は自前の偵察衛星を持っていません。


3.安保体制に穴が開く韓国

2017年4月、韓国国防部は「2018~2022国防中期計画」を発表し、その中で北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応するため、北朝鮮のミサイル・核攻撃の兆候を探知した際に、先制攻撃する「キルチェーン」と、ミサイルを迎撃する「韓国型ミサイル防衛」および、北朝鮮が核攻撃をした場合、北朝鮮指導部などに直接報復する「大量応懲報復システム」の3つを軸とする防衛体制の構築を当初の2020年代半ばから2020年代初めに繰り上げるとしていました。

この中の先制攻撃(キルチェーン)体制には、発射場所を特定するために偵察衛星が必要不可欠である為、レーダー搭載衛星4機と赤外線センサー搭載衛星1機の計5機の偵察衛星を2021年から3年間で打ち上げ運用する計画を立てています。

けれども、この計画でも偵察衛星を打ち上げ完了するまでは、北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知することは出来ません。それまでは先制攻撃(キルチェーン)体制が取れないという訳です。

そこで、韓国はあろうことか、偵察衛星を「レンタル」するというアイデアを思いつき、諸外国に打診したのですね。

韓国軍はイスラエル、ドイツ、フランスに打診したのですけれども、打診された各国はいずれも貸せないと門前払い。それどころか映像の貸与や販売もできないと、けんもほろろの対応だったようです。

イスラエル、ドイツ、フランスにとって、偵察すべき地域は東欧や中東であって、北朝鮮は偵察対象ではありません。当然、衛星軌道は東欧や中東を偵察するためにチューニングされています。北朝鮮を偵察するためには、軌道を変更しなければならず、燃料を余分に消費してしまいます。

偵察衛星が軌道変更するのは、有事などで詳細情報を取らなければならない場合に高度を下げるような時であって、自国の安全保障に影響が小さい他国の為に、そんな手間を掛けるいわれなど更々ない訳です。

また、解像度など偵察衛星の能力も韓国に筒抜けになってしまうリスクも考えると、レンタルなど出来る筈がありません。当然のことです。というか、他国の偵察衛星を借りるなどという発想自体が非常識も甚だしいというべきでしょう。

ということで、GSOMIAを破棄した韓国は偵察衛星情報含めた、安保に関わる情報はアメリカに頼るしかなくなることになります。

けれども、文在寅政権は、事前にGSOMIAを延長するとアメリカに伝えておきながら土壇場で引っ繰り返すとう裏切りをかました。

どう考えてもタダですむ訳がないですね。

23日、GSOMIA破棄について、「今回の措置は韓日の2国間関係の流れで検討・決定されたものであり、韓米同盟とは関係がなく、北の核問題を含む領域内の安全のための韓米連合対応態勢は堅固に維持されるだろう」と、アメリカとの緊密な意思疎通を強調していますけれども、どういう思考をすれば、そんな虫のいい台詞が吐けるのか、理解の斜め上をぶっとんでいます。

アメリカ防総省のデーブ・イーストバーン報道官は声明で、「国防総省は、韓国が日本と結んでいたGSOMIAの更新を文政権が差し控えたことに対し、強い懸念と失望の意を表明する……安全保障上の連携は他の分野での摩擦に関わりなく、維持されるべきだと信じる」と強く批判。文政権と名指しで批判しているところにアメリカの怒りの程が窺えます。

アメリカは日本のように甘くはありません。何らかの形で、"報復"があるのではないかと思いますね。

この記事へのコメント

  • Naga

    しろうとの考えですが、もし韓国がGSOMIAを延長いていたとしても、韓国のような国とのそのような取り決めは本当に有効なのでしょうか?
    他の取り決めは一方的に次々に破ってきていますし、おまけに自衛隊に戦闘用レーダーを照射したような国です。普通の感覚ならGSOMIAが延長されていても信用できないと思うのですが。
    2019年08月25日 08:49
  • 日比野

    Nagaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

    そうですね。信用出来ないですし、またGSOMIA結んでから数年ですから、本当に重要な情報は渡してないと思います。

    日本が提供した機密情報が韓国経由で中国などに漏れるリスクが減るなど利点もあると見る向きもあるようですね。
    http://matometanews.com/archives/1949516.html
    2019年08月25日 19:42
  • 低い城の男

    北朝鮮の弾道ミサイルなどミサイル防衛にかかわる情報の交換に活用されてきたようですが、韓国のミサイル防衛システムは、保守政権の時点でロシアのS400システムを導入し今年から改良版が実戦配備につくそうです。 
     このS400をめぐっては、最近、トルコがアメリカの猛反対を押し切ってロシアからS400を導入してしまい、NATO同盟から追放されかねないほどの大問題になっています。 
     ところが、韓国の保守政権が何年も前に、サムスンとタレス(フランス政府資本)の合弁会社(サムスン・タレス)がS400のライセンス生産をしてミサイル防衛網を構築したことは、なぜか問題にはならないままのようです。
     防空ミサイルシステムがアメリカだよりでは、韓国軍や韓国政府としては、日本との間で紛争になったとき、アメリカの妨害をはねのけて機能してくれるか不安が残ります。 韓国がS400の導入を決めたのは10年以上前のことと思われますが、そのころから韓国政府や韓国軍はサムスンを主幹会社として手を打ってきたのでしょう。
     高純度フッ化水素の「管理強化」によって最大の打撃を受けかねないのはサムスンです。 サムスンの株主の多くはアメリカの会社です。 だから、アメリカの積極的な同意なしにできることではなさそうです。
     アメリカのトランプ政権、あるいは、いわゆる「奥の院」は、経済的に多少の損害を被っても、中長期の安全保障を重視する決断をしたのではないでしょうか。
     安全保障の根幹にかかわる半導体技術や生産力をサムスンに過度に依存するのはリスクが多すぎる、という判断のもとに、手を汚す役は日本政府にやらせて、サムスン・ディカップリングを実行しようとしている、というのは、私の考え過ぎでしょうか。
     親韓派の一人として、何とかこれ以上、ひどいことにならないよう祈るばかりです。
    2019年08月26日 11:49
  • 低い城の男

    引用を忘れていました。

    「一方で、M-SAMはサムスン・グループと、フランスの電機企業で軍需企業のタレス・グループにより共同開発されている。ハドソン研究所の政治・軍事分析センター所長のリチャード・ワイツは、次のように論じている。「M-SAMには、S-400の多機能Xバンドレーダーから得られた専有機密情報を含め、アルマズ・アンテイ合弁株式社団から供与されたS-400のミサイル技術が採用されている。」
    (S-400の技術を採用した韓国
    2016年7月01日 ラケーシュ・クリシュナン・シンハ、ロシアNOWへの特別寄稿)
    https://jp.rbth.com/politics/2016/07/01/607979

     まだ朴クネ政権のころの記事ですね。 文一派がどうこう、というレベルの問題ではないということのようです。 安倍さんが対韓「管理強化」を検討している、という記事が文春に出たのはずいぶん前のことだったし。
    2019年08月26日 12:14
  • 低い城の男

    訂正 サムスンタレスは2015年7月にハンファに譲渡されてハンファタレスになっていました。 とはいえ、サムスンがそれまではロシアと手を組んでいたという事実は残りますが。
    2019年08月26日 12:26
  • 日比野

    低い城の男さん、こんばんは。コメントありがとうございます。

    >サムスン・ディカップリングを実行しようとしている、というのは、私の考え過ぎでしょうか。

    はい。私もアメリカ・日本の連携による「サムスン・ディカップリング」(SKハイニックスも)だと思います。

    7月4日のエントリー「安倍とトランプの連携プレーと三重の戦略」
    で述べたことがありますけれども、私は、アメリカの対中圧力、特にファーウェイの5G支配を阻止するために、サムソンを叩こうと、安倍総理とトランプ大統領との間で握っているのではないかと見ています。

    ファーウェイにはサムソンやSKハイニックスのDRAMが使われてますから、サムソンやSKハイニックスをサプライチェーンから切り離すことで、ファーウェイへの圧力を掛ける狙いがあるのだろうと思います。

    あと、一部で噂されている、駐韓米軍撤退、米韓同盟破棄に伴い、韓国を経済焦土化するというのも睨んでいるかもしれません。
    2019年08月26日 21:27

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