今日はこの話題です。


1.如才ない茂木新外相
9月11日、安倍総理は内閣改造を行いました。
改造の中身は既に色んなところで報じられていますから、詳細は述べませんけれども、初入閣は13人で2012年の第2次安倍内閣発足後、最多となりました。
それでも、総理、副総理、官房長官は、安倍総理・麻生副総理・菅官房長官の安定のスリートップです。流石にここは動きませんでした。
それ以外に注目を集めているのは、なんといっても、河野外相の防衛相への横滑りと茂木経済再生相の外相就任でしょう。
茂木氏はハーバード大学大学院、河野氏はジョージタウン大を卒業した国際派です。
河野氏の英語力と発言の強さについては、この2年の外相時代で大分知られたように思いますけれども、茂木氏も相当のキレ者です。
先日も日米通商協議をまとめ上げていますし、自民の青山繁晴議員によると、茂木氏はアメリカからの評価もすこぶる高く、タフ・ネゴシエイターとして知られているそうです。
2016年に自民党は総裁任期を「連続3期9年」へと延長しましたけれども、その当時、ポスト安倍といわれた岸田氏や石破氏、小泉進次郎氏らから異論が噴出しました。
このとき茂木氏は、G7の政党党首の任期制限が日本より緩やかである事実を示したり、各都道府県連から期数制限の撤廃に賛同する旨の“言質”をとるなどして、批判を封印し、安倍総理任期延長の下準備を仕上げています。
また、昨今話題に上がる「働き方改革」でも、自らトップを務める「働き方改革特命委員会」で議論を主導しました。茂木氏は、7兆円超の剰余金がある労働保険特別会計に目をつけ、女性や若者の就業支援強化に3年間で8000億円の財源を確保。経済官庁幹部をして「予算に精通した茂木氏ならではの実績」と言わしめました。
その一方、所得税改革では、配偶者控除を廃止し、共働き世帯に適用する「夫婦控除」の創設をぶち上げたものの、官邸が難色を示すと持論をあっさり撤回するなど、如才ない働きぶりを示してきました。
まぁ、安倍総理や官邸にしてみれば、厄介な事案でも、文句を言わずきちんと解決に導いてくれる有能かつ有用な人材ということです。安倍総理の協力な懐刀とみていいかもしれません。
茂木氏は選挙や政策決定過程で事態が停滞していても「自分にはゴールが見えている」と話すことが多いそうで、豊富な知識と頭の回転の速さ、高い説明能力は党内随一との専らの評判です。無茶苦茶頭が良いのでしょうね。
その反面、いわゆる「無能な人」に対する当たりは相当キツイようで、霞が関の複数の官庁幹部は、「最も怖い政治家の一人。わずかなミスも許されない」と茂木氏を評しています。
そんな彼が外相に就任した。一部には茂木氏自ら外相を望んだとも言われていますけれども、彼があの"常識"の全く通じない韓国を相手にどんな外交を見せるのか。良い意味で期待と不安の入り混じった気持ちがしますね。
2.対外交渉では一歩も引かない河野防衛相と茂木外相
河野氏と茂木氏の人事について、文芸評論家の小川榮太郎氏は、「外交と安全保障が一体化するなか、司令塔となるNSCに入れる人材をどう確保するかが、政権運営上、非常に重要な課題となっている。『強い外交づくり』は安倍首相一人だけでは厳しい。他国とタフに交渉でき、首相を支える国際派の人材が、いまこそ必要なのだ。安倍首相のそうした強い意欲が、茂木、河野両氏の人事に現れている」と指摘していますけれども、その意味では対外発信力と実務交渉力を重視した布陣だといえるのかもしれません。
小川氏は「茂木氏は日米貿易交渉で米国と対等に渡り合った。河野氏には強い発信力がある。2人とも、『対外交渉では一歩も引かない』ことを体現してきた。良い意味で『実務面で“けんか”ができる人材』と証明した。安倍首相からすれば、『やっと2人が、ここまで勝ち上がってきてくれた』という思いではないか……茂木、河野両氏ともタフ・ネゴシエーターだ。対韓国でも、ブレずにやるはずだ。期待したい」と語っています。
外相と防衛相に実務と発信力に優れた"喧嘩"ができる人材を配置したということは、見方を変えれば、対外との喧嘩に備えたともいえる訳で、その意味では今回の内閣改造には「有事」を想定し、それに備える狙いが隠されているといえるかもしれません。
3.内閣改造に秘められた裏のメッセージ
ここからは筆者の妄想ですけれども、安倍総理が「有事」を想定していると見た場合、今回の改造内閣の日付に少し引っかかるものを筆者は感じています。
もう20年近く前の話ですけれども、9月11日といえば、2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロ事件。所謂「9.11」を連想させます。
安倍総理はこの日に内閣改造を持ってくることで、有事が近いぞと暗に国民に知らせているのではないか。そして同時に、アメリカに対しても、「有事の時はよろしく」あるいは「脅威に対し一緒に立ち向かおう」とのメッセージも送っているのはないかとさえ。
通常、内閣改造は国政選挙が終わるとすぐに行うものですけれども、それを1ヶ月以上先送りして、9.11にぶつけてくる。やはり、穿って見たくなりますね。
そして、更に妄想を逞しくすると、この安倍総理のメッセージにトランプ大統領はさりげなく返答した可能性も考えられます。ボルトン大統領補佐官の解任です。
9月10日、トランプ大統領はツイッターで「私は昨夜、ジョン・ボルトン氏にホワイトハウスにはもう要らないと伝えた。私は彼の提案の多くに強く反対してきた。他の政権メンバーも同意しなかった。だから私はジョンに辞任を促し、今朝辞意が私に伝えられた。私はジョンの仕事に大変感謝している。私は新しい国家安全保障担当者を来週にも指名するつもりだ」と述べ、ボルトン大統領補佐官を解任したと公表しました。
ボルトン補佐官は、強硬派として知られ、北朝鮮に対する強硬姿勢やイランへの武力行使を訴えてきた人物です。最近では、北朝鮮と対話を重視するトランプ大統領との溝が指摘されていましたし、直近ではアフガニスタンの反政府勢力タリバンとの和平協議を望むトランプ大統領に反対していたことが伝えられていました。
ホワイトハウスのグリシャム大統領報道官は、トランプ大統領とボルトン氏が「非常に多くの問題で」見解を異にしていたと語ったそうですから、政権内でも浮いていたのでしょう。
その意味では、遅かれ早かれ、解任は免れなかったのではないかと思われます。
トランプ大統領がボルトン補佐官の解任を発表したのが9月10日です。
当然トランプ大統領は、安倍総理の内閣改造の日が「9.11」であることは知っていたでしょう。トランプ大統領は、北朝鮮の建国記念日である9月9日を避け、9.11に挟まれた10日に解任を発表したわけです。
これも穿ってみれば、安倍総理の「有事の時はよろしく。共に立ち向かおう」とのメッセージに対し、「その手には乗らないよ」と躱して、水を指したと受け取れなくもありません。単なる偶然だと思いたいですけれども、ちょっと出来過ぎたタイミングで気になってしまいます。
本当にそのような意図で、内閣改造と補佐官解任が行われたとするならば、意外と、安倍総理とトランプ大統領の間でも水面下で牽制というか駆け引きをやっているのかもしれませんね。
ま、妄想はさておき、安倍改造内閣がどんな仕事をするのか。注目です。
この記事へのコメント
インド辛え~
隙間の無い!+機動力が有る!、お二人様ならば、その下の副大臣と政務官と事務方の人事にも注目が必要なのは、
私個人の「穿ち過ぎな見方(笑)!」
でしょうか?。岡目八目的に後は、経済産業大臣と副大臣とのバランス(対韓国、対アメリカへの考え?)次第でしょうか?。
低い城の男
これ、ひょっとしたら安倍さんも、微妙に嚙んでるかも。 ボルトンって、さっさとテヘランを爆撃しろ、という御仁でしょ。 ところが、わが安倍首相は、そのテヘラン詣でどころか、国連総会でもイラン大統領と会談の予定とか。 トランプとしては、おお、あのミスター安倍がそう動くのか、とすると、うちのボルトンは、ちょっとズレてるな、てなふうに。
いや、これは冗談ですが、安倍さんの外交について、左巻の皆さんがそう言うのは分かるとしても、いくらか保守っぽい方々まで親米ポチ外交だと信じ込んでるのですが、親トランプではあっても、いわゆるアメリカの奥の院とかネオコンが喜ぶような外交ではなかった。 むしろミアシャイマーとかルトワックといったリアリストの系譜に近い。 安倍さん自身がすごいというわけではないのでしょうが、誰がすごいのかを見抜く才能はあるのでしょうね。
低い城の男
北朝鮮では、南は、今でも「傀儡政権」なんだそうです。 文さん一派がいくら親北コールを送ろうが、しょせんはアメリカ様の傀儡。 傀儡といえば、日中戦争(一応これでもリベラルな方なので日支事変とはいいません)の南京国民政府というのがありましたが、中国人にはそれないの人気で、終戦間際で日本が負けるというのが誰の目にも明らかなころ、あの李香蘭が上海でお別れ公演をしても、ブーイングらしいブーイングもなかったとか。 何が言いたいかというと、北にしてみれば、今の南朝鮮なんてのは、日本が真珠湾攻撃をせず、中国が蒋介石の国民党支配地域(あるいは中共)と南京国民政府支配地域に分割されていたが、その南京国民政府もいつもまにか民主化されて、日本と同盟を結んで時々軍事共同演習はしているが、口先だけは蒋介石派の皆さんと一緒にやりたい、と言ってるようなものだ、ということでは。
この点、韓国の軍事政権は、軍人というのは好むと好まざるとによらずリアリストです。 かつて北朝鮮に秘密工作をしたそうですが、それが仰天するような内容。 というか、リアリスト的にはいちいち納得なのですが。 それは、「南に民主親北政権なんかできたら北としてはかえって困るだろ、だからちょっと南に仕掛けて南の国民が親北に流れないよう、適当にちょっとだけドンパチ仕掛けてくれないか、カネは送るから」というのだったとか、、、記憶が曖昧なので、あまり正確ではないかもしれませんが。
こうなると、南朝鮮としては、中国と組むしかなくなるのですが、朝鮮というのがどういうとこかを3000年の歴史で身にしみて分かっているのが中国なわけで、それはノーサンキューということかもね。 ま、ロシアとでも組めばいいのでは。 S400システムとかイスカンデルミサイルは既に導入済みですが。
三角四角
はっきり言って、早く辞めて呉れないかなと云うのが、国民の一人としての感想です。
首相4選と悪夢の様な事を言う人も居ます。
これだけ長い間、恙無く政権を維持すると云うのも、一つの国益です。
しかし、憲法改正、拉致問題解決、北方領土問題解決と日露平和条約締結と大きな事を言いながら6年経っても何の進展も見られません!
これは、安倍総理が大きな政治課題を是非とも成し遂げると云う覚悟が足りないのが原因です!
これ等の政治課題はどれも難しいもので、在任中に3つ解決するのは困難です。
またどれか一つでも達成できたら良いなと云う料簡でも、解決するのは容易では在りません。
安倍総理は6年間、この3つの政治課題を代わり番子に、齧っては捨て、齧っては捨てて居ただけでは無いでしょうか?
本当にやる気が在るなら、どれか一つに的を絞り、失敗しても諦めず、何度も何度も挑戦して初めて、道が見えて来るものだと思います。
ボンボンの二世政治家には所詮執念を期待しても無理なのでは無いかと思います。
実は、憲法改正のチャンスは在ったのでは無いだろうかと思われます。
2015(平成27)年の平和安全法制の成立です。
2015(平成27)年の前年まで、毎年の様に、北朝鮮がミサイル発射実験を行っていました。
日本国民の間にも相当危機意識が共有されていたと思います。
この時に、憲法改正を突き進めたら、改正出来ただろうと考えます。
三角四角
しかし、安倍総理は憲法改正の千載一遇の機会を捉えられずに、ピンを目指さず、平和安全法制と手前に刻んだのです。
その後、2018(平成30)年6月12日にシンガポールで開催された、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員会委員長による史上初の米朝首脳会談が開かれたり、平和安全法制の成立により、改憲の必要性は大きく減退しました。
第4次安倍晋三再改造内閣の際、安倍総理は、「(憲法改正を)必ずや成し遂げる。」と言ったそうですが、寝言では無いでしょうか?
憲法改正には、両議院の総議員の3分の2以上の賛成による改正の発議と国民投票の過半数の賛成による承認が必要です。
安倍総理の卓越した政治手腕による両議院の総議員の3分の2以上の賛成によって改正の発議は可能としても、国民より企業を優先する安倍総理の下では、国民投票の過半数の賛成による承認は困難だと思います。
消費税増税による国民生活の逼迫、カジノ開設による風紀の乱れ、移民政策による日本の伝統・良風の危機が憲法改正にマイナスに働くと思います。
そして、再度言いますが、2018(平成30)年6月12日に始まった米朝対話、平和安全法制の成立により、憲法改正の必要性が減少しました。
「鉄は熱いうちに打て!」です。
国民が北朝鮮のミサイルに脅威を感じて居る時に、改憲を進めるべきだったのです!
北朝鮮のミサイルの脅威が無くなってから、「(憲法改正を)必ずや成し遂げる。」と寝惚けた事を言っても、国民の心に刺さらないと思います!
以上を勘案すると、改憲は、駱駝を針の穴に通すより難しいと思います!
日比野
副大臣と政務官以下の人事には、まだあまり調べてはいませんが、茂木外相については、意外と外務省内部の改革も期待されているのかな、という気もしています。
日比野
やはり、トランプ大統領は北朝鮮を取り込みに掛かっているような気がしてるのですよね。
イランに対してもちょっとトーンダウンしてますし。
金正恩もトランプの考えに乗っかっている節がある。
あとは、核保有をどこまで認めるかなのですけれども、核を持ったままの半島統一は日本にとって危険ですから、北朝鮮が核を捨てないのなら、韓国の力をもうちょっと弱めないと危ないと見てます。裏ではそういうシナリオがあるような気もしますね。
日比野
安倍総理は、もう憲法改正を強くは考えてないのではないかと見ています。
以前、田原総一朗氏に「憲法改正をする必要は全く無くなった」と話したという話もありますし。
正直なところでいえば、安倍総理が今後を見据えた新たな国家ビジョンを出せないのなら、4選しても「惰性」になる危険があると見てます。
さりとて、では他がいるかとなると、それも頼りない。総理ともなれば、内政も外交もこなさないといけませんからねぇ。悩ましいところです。