今日はこの話題です。


1.引用しただけのセクシー発言
小泉進次郎環境大臣の「セクシー発言」が話題になっています。
これは、小泉環境大臣がニューヨークの国連本部で開かれた環境関連の会合で「政治にはさまざまな問題があって時に退屈だが、気候変動のような大きな問題への取り組みは、楽しく、かっこよく、そしてセクシーでもあるべきだ」と発言したことから急に注目を浴びた言い回しです。
セクシー(sexy)という単語は「性的魅力のある、性的な、挑発的な」という意味ですけれども、経営コンサルティング業界では「セクシー」という言い方はよく使われるのだそうです。
小泉環境大臣は、報道陣から自身の発言について問われると「それを説明すること自体がセクシーではない。あの場で私と一緒に同席してくれた人の会合の中での言葉の一つであり、野暮な説明はいらない」と答えていますけれども、実際の発言は次のとおり。
「……とてもエキサイティングな会合だった。ある会社の出席者の最後の発言が気に入った。彼が言ったのは『この問題に取り組むには全てが楽しくなければいけない』と、そして彼女が付け足した『セクシーにね、と』。僕は全くの同意見です。……気候変動のような大問題には楽しくなければならない。そしてクール、そしてセクシーにね。若い人が鍵になります。彼らを動かし勇気づけるためには楽しくなければならない」小泉環境大臣が件のセクシー発言をしたとき、その前段で「セクシーにねと付け足した」と紹介した彼女というのは、会見の席で、小泉環境大臣の隣に座った国連気候変動枠組み条約の前事務局長であるクリスティアナ・フィゲレス氏です。
要するに、小泉環境大臣の「セクシー」発言は、フィゲレス氏の発言からの引用だった訳です。
まぁ、日本の政治家が政策について「セクシー」という言葉を使うのは珍しいことでもあり、それゆえ余計に注目されたのかもしれませんけれども、経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏によると、セクシーという言葉は、経営コンサルティングの現場では多様されるものの、それは、複数の具体策があり、どちらがいいかを議論するような場合に使われるのだそうです。
甲乙つけがたい案の中から一つを選ばなければならないとき「この案がセクシーだから、こっちにしよう」という使い方をするのですね。まぁ、ちょっと気取った言い回しというところでしょうか。
鈴木貴博氏は、セクシーという言葉は具体策があるときに使う英語であり、具体策がなく「これからセクシーな政策を考えますよ」というのは「今からおもしろい話をします」というのと同じくらいダサい言い方でマイナスになってしまうと指摘しています。
小泉環境大臣は、環境問題への取り組みは「楽しく、かっこよく、そしてセクシーでもあるべきだ」と言ったはいいのですけれども、少なくとも、英語圏の記者にとっては、"セクシー"という言葉を使った以上、その後に具体策が提示されてしかるべきということになります。
2.踏絵の前に立たされた進次郎環境大臣
では、小泉環境大臣に環境問題に対する具体策があるのか。
件の会見には外国メディアも参加していて、フィナンシャルタイムズのパトリック記者が、すかさず「今後半年、1年で石炭火力発電をどう減らしていくのか」と質問し、小泉環境大臣は「削減します」と答えました。
ところが、記者から「どうやって」と更に畳みかけられると、しばし沈黙。数秒経ってからようやく、先週大臣になったばかりと言い訳をしてから「同僚や環境省の職員と議論した。環境省としてだけでなく、政府として『削減していく』と表明している」と答えられず逃げています。
大臣になる前であれば、「削減する」だの「環境に配慮する」だの好き勝手言えたかもしれませんけれども、いざ所管の大臣となるとそれで許してはくれなくなります。これは一週間前に大臣になろうが、昨日大臣になろうが同じです。
まぁ強いていうならば、政治の世界で一般的なハネムーン期間である100日くらいまでは、辛抱してくれるかもしれませんけれども、来年になっても、今の受け答えをするようであれば、バシバシ叩かれるのではないかと思います。
筆者は、安全性を高める条件で原発推進の考えを持っていますけれども、石炭火力を減らすのであれば、その代替電力として原発は必須だと考えています。太陽光発電は曇りや雨で効率が落ちますし、風力は台風がくれば一発で駄目になります。地熱発電や海洋温度差発電も考えられなくもあることはありますけれども、日本の電力を賄うだけのベース電力にはなり得ません。
次の図は、経済産業省エネルギー庁が発表している「2018年度エネルギー白書」に記載されている日本のエネルギー・発電の供給量割合のグラフですけれども、2011年を境にして、原子力発電が急減し、その穴を石炭とLNGで埋めているのが現実です。

小泉環境大臣は、以前より脱原発を訴えていますけれども、脱原発して、石炭火力も減らしたら、国民生活が成り立たなくなるのは明らかです。
昨年の北海道大停電、先日の千葉台風災害による停電などを見ても明らかなとおり、今の日本で電気がないということがどれほど致命的なことなのか、小泉環境大臣はもっと現実のものとして受けとめる必要があると思います。
小泉環境大臣は、フィナンシャルタイムズ記者からのどうやって石炭火力を減らすのかの質問に「政府として削減すると表明している」と躱しましたけれども、その答えは、現実解で考える限り、原発再稼働しかないと思います。
その意味では、小泉進次郎議員にとって、環境大臣は、実は現実を直視できるかという踏絵のポジションになっているのではないかと思いますね。
この記事へのコメント
詠み人知らず
のえる
みんなに 示せてよかったと 逆に思ってます