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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.実は撤回されていなかった
香港デモが続いています。
ただ、ひところの何百万人ものデモ当時と比べると香港は大分落ち着きを取り戻し、現場にさえ行かなければ、香港の日常はほぼ回復しているそうです。
とはいえ、街には、所々にスプレーで書きなぐられた落書きや、破壊された監視カメラ、割られた窓ガラスなどがそのまま放置されていますし、実際、毎年開催されていたビクトリア湾の花火大会も、激しいデモが懸念されることから、安全を考慮して中止となっています。デモがは、まだ現在進行中であるのですね。
夜にはショッピングモールに、デモに参加している若者達が集まっては、「香港に栄光を、革命を!」とか「5大要求は1つも欠かさない!」といった、シュプレヒコールをあげているのですけれども、不思議なことに、シュプレヒコールの音頭を取る若者はいても、中心人物がいるというわけではなく、コールの文句も、どのデモでも叫ばれているスローガンで、誰もが諳んじられているものなのだそうです。
香港のインターネット掲示板には、匿名のデモ支持者たちがデモで歌うために作曲・編曲した「願栄光帰香港(香港にまた光あれ)」という曲がアップされ、モールに集ってきた若者達がその曲を歌うこともあるようです。
9月4日、香港の林鄭行政長官が、デモ隊の5大要求のひとつ、「逃亡犯条例の改正案の完全撤回」を表明したとされていたのですけれども、ここにきて、実は撤回されていないという報道がちらほら出てきました。
筆者は9月9日のエントリー「香港に介入する米英と香港民族」で、林鄭行政長官の「逃亡犯条例」改正案の撤回は、「正式な撤回ではなく、撤回の提案を立法会に送るだけ」で、まだ撤回が決まった訳ではないと述べましたけれども、やはり本当だったようです。
要するに、香港立法会が再開したら、林鄭長官が逃亡犯条例改正案の撤回を提出し、その後立法会議員によって審議され、最終的に投票の結果で撤回するかどうかが決まるということです。
けれども、今やメディアの注目は、デモの拡大やデモ隊と香港警察の衝突。そして今後中国共産党が今後どう動くかであって、条例案の撤回提案の行方については、置き去りにされているのが現状です。
デモとて、暴徒と化した一部デモ隊が市街地や地下鉄などで破壊行動に至っている様子を報道こそすれ、一般市民や中学生・高校生も参加するルールにのっとったデモ行進も行われていることや、「警察と衝突している最前線に近寄らなければ、危険ということはない」という現地の生の声を伝える報道は多くありません。
2.三種類のデモ参加者と水の革命
また、香港デモに参加する人達は皆一律という訳ではありません。
香港政界では中国に融和的な体制派(建制派)と見做されている、立法会議員の一人に田北辰という人物がいます。
彼は、中国大陸に店舗多数を展開している現地の有名アパレルブランド「G2000」の創始者としても知られ、北京の全国人民代表大会の香港地区代表も務めています。
この田北辰氏は、今回の抗議運動の初期段階である6月14日に逃亡犯条例改正案の慎重な検討を求める声明を出すなど、建制派としては、デモに理解を示しているのですね。
その彼は、デモ参加者には「数百~1000人の極端に暴力的な人々」と「数千人から数万人の血気盛んな若者達」、そして「数十万人の普通の人達」の3種類の人達がいるとして、警官隊との衝突を伴う抗議運動は、まず一握りの「極端に暴力的な人達」が騒ぎを起こし、そこに「非暴力的だが彼らの思想を支持する若者達の集団」が加わる形で起きているとし、そしてその後ろに数十万人の普通の人達が続くとして区分しています。
ほんの少数の”過激派”に率いられた、非常に多くの普通の人達。それが香港デモ隊の姿かといえば、そうともいえません。
今回の香港デモについて、識者から「リーダーがいない」ということがの最大の特徴であるとの指摘があります。
デモ活動に参加する多くの若者達は、ロシア人が作った携帯電話用の通信アプリ「テレグラム」を使用しています。「テレグラム」のユーザーはチャットを通じて情報交換をし、警官隊の配置や脱出ルート、デモのターゲットなど、随時情報を更新し、シェアしては活動しているのだそうです。
これにより、8月の香港国際空港の占拠などでも、ターゲットを絞った活動を迅速に決めて実行したり、更に異なるグループ同士が連携して、同時多発的にデモを行うことも可能となりました。正に変幻自在。
実際、今の抗議デモはときに香港域内の数ヶ所~10ヶ所近くで同時多発的に発生し、それが3ヶ月以上も続いているのですね。
今回の香港の抗議活動は、リーダーの顔が見えず、誰が動かしているかも分からないが、ハイテクによって多くの人が「水のように形がなく」動いていることから、「水の革命」と呼ばれるようになっているそうです。
3.外国の陰謀説を宣伝する共産党政府
この民衆の自発的かつ統制のとれた行動をみた中国政府は、デモの背後に外国の「黒い手」があると主張し、それが中国本土では広く信じられていると伝えられています。曰く、「CAIが、騙されやすい香港人にお金を払ってデモに参加させている」とか、「深夜便の飛行機に外国人の扇動者をもぐり込ませている」といった噂が広まっているそうです。
7月末、香港海運界の有力者で、中国返還後の初代行政長官を務めた董建華氏は、抗議運動が「うまく組織化」されているのは「動乱の背後に黒幕がいる」証拠であり、「様々な兆候」がアメリカと台湾を指していると語っています。
更に、共産党の管理下にある新聞各紙は、アメリカの星条旗や植民地時代の香港旗を掲げて行進しようとする一握りのデモ参加者を大きく取り扱い、スマートフォンを使ってデモ隊を指揮する「外国人司令官」のなる画像を拡散させました。けれども、後にこの「外国人司令官」とされた人物は、ニューヨーク・タイムズ紙の記者で、同僚にメッセージを送信しているところだったことが判明しています。
また、新聞各紙は、香港のアメリカ総領事館の外交官で地元の政治家との連絡を担当するジュリー・イーデー氏が、香港でもよく名の知られた民主化運動の活動家たちと昼日中にホテルのロビーで話をしている写真を掲載しています。中でも「大公報」紙はイーデー氏を「謎めいた身分の人物で、ひそかな破壊活動の専門家」と報じています。
「大公報」は1949 年に中国政府によって創刊された新聞で、前身は1902年に天津で発行された「大公報」。中国で最も歴史ある新聞です。ところが、そのニュース記事は、中国共産党寄りかつ政治色が濃く、香港では信頼度が低いメディアとして扱われています。
ただ、本土の中国人民のみならず、中国共産党の幹部らがある程度信じている様子が見られるらしく、北京に駐在する欧米諸国の外交官らは、中国政府から、デモに関連して、各国が香港を支持するとしたら、それは中国に損害を与えようとする米国タカ派の動きに連携するものである筈だと説明されたのだそうです。
中国共産党にしてみれば、なんの指示も工作もなく、数多くの人間が統一的な行動を取ることなど信じられないのでしょうね。
4.火種は消えない
先に取り上げた立法会議員の田北辰氏は、数多くのデモ参加者との対話を行った経験から、今のデモ隊は、もはや条例改正案の撤回についての関心は薄くなっており、逆に「香港警察の暴力を検証する独立調査委員会の設置」が多くの人が望むようになっていると述べています。
田北辰氏は、現在の香港にある警察の監査機関である独立監察警方処理投訴委員会は、多くの市民から香港政府の一部分だと信頼されていないが故に、法曹関係者が参加する独立調査委員会が必要だと指摘しています。
田北辰氏によると、今の抗議運動は警察や香港政府への批判という点で広く市民の賛同を得ていることから、前回のいわゆる「雨傘革命」とは異なって社会運動の基礎があるとし、それだけに抗議運動は、香港の民主化の発展の必要性を強める事態となったと述べています。
それでも、田北辰氏は、普通選挙を通じた行政長官の選出については、北京の全人代が2014年に決定した行政長官に立候補するルールに反するという理由で、在り得ないと述べています。まぁ、これが体制派としての限界なのかもしれません。
田北辰氏は、「香港警察の暴力を検証する独立調査委員会の設置」を香港政府が同意すれば、問題の多くは解決すると述べています。仮に調査委員会の設置されて、香港警察の罪が明らかにされ、何らかの処分が下されたとしても、それで解決するのは香港警察に対する不信感くらいであって、普通選挙を勝ち取れるわけではありません。
ですから、仮にそうすることで、今のデモ活動を鎮静化することが出来たとしても、依然として火種は残ったままになる可能性は十分にあると思います。
ただ、今後、その火種が再び燃え上がるのかどうかは、香港の人々がどれだけ民主化を求めているのかに掛かっているともいえ、まだまだ予断を許さないと思いますね。
「この3カ月間、私たちは5つの要求を掲げて戦ってきましたが、香港政府はずっと無視し、警察はどんどん暴力的になっていきました。他の国だったら200万人ものデモが発生したら普通、政府は終わりますよ。それでも終わらないのが香港政府です」周庭(アグネス・チョウ)氏
この記事へのコメント
さんさん
大紀元でも数年も前から其の事を指摘して記事にしてますし、中国問題に詳しい川添敬子さんも度々、同様な発言を繰り返してますね。
習派VS江沢民派と云う構図も有り、単なる民主化運動と考えるのは短絡的な考えに感じますけど。
一説には犯人引き渡し条例が成立すれば江沢民の資金源が潰されると云う声も聞かれます。
大体、あの様な大規模なデモを長期に渡り出来ると云う事も不自然に見えますけどね。
確かに香港の異常な貧富の格差や失業者が高い数字を見れば不満が爆発する傾向が有りましたが、その不満を利用して自分の利権を守りたい勢力が居るのは当然だと思います
アラブの春や色革命にも似た物を感じてしまいますし、民主化のヒロインと山本太郎やシールズとの関係を見てても胡散臭く見えますね。
故に単純な民主化運動とは捉える事が出来ません。
おちおちしてたら山本やシールズ等のサヨクが絡む沖縄独立運動も民主独立運動だと宣伝され、その通り見てしまう危険性を感じますけどね。
それだけ今回の香港デモは怪しい運動だと見た方が適切です