

1.チョ・グク法相電撃辞任
10月14日午後、韓国のチョ・グク法相が辞任しました。辞任に際しての声明はこちらにありますけれども、チョ氏は「私の家族のことで大統領と政府に負担をかけてはいけないと判断しました。 私が席から降りてこそ、検察改革の成功的な完遂が可能となる時間が来たと考えます。 私は検察改革のための「焚きつけ」に過ぎません。「焚きつけ」の役割はここまでです」と辞任の理由は、辞任しなければ大統領と政府に負担がかかるとし、検察改革も、迅速推進検察改革課題を発表するなどその緒に手をつけた、としています。
チョ氏を巡っては娘の不正入学や家族ぐるみの不透明な投資など多数の疑惑が取り沙汰されていて、チョ氏の妻は私文書偽造の罪で在宅起訴されていますけれども、実際のところは、15日から行われる法務部の国政監査で、偽証すれば罪に問われることから先に逃げたのではないかという意見が取り沙汰されているようです。
9月6日に行われた人事聴聞会で、チョ氏は「大部分は知らなかった内容だ」と否定していたのですけれども、一部は完全に嘘だったことが明らかになっています。その状況で、嘘をつけば偽証罪になる国政監査に出れば、逃げることはできないと観念したのでしょうね。
実に法相就任35日での辞任は、任命した文在寅大統領も当然、その責を問われるでしょう。
2.慌てた青瓦台
この日の午前にチョ氏は検察特捜部の縮小を骨子とする改革案を発表し、その僅か数時間後の午後2時に辞意を表明しました。ネットの一部には、支持率低下に苦しむ文大統領がチョ氏を切ったのではないかという声もあります。
朝鮮日報系列のケーブル放送局のTV朝鮮は、チョ氏が13日の合同会議直後の時点では「行くべき道はまだまだ長い……今回こそは最後までたどり着いてやる……最後まで責任を取る」と言っていたのが、14日に配布した辞任表明文では「ここまでが私が役目だ」という態度に変わったことから14日に大統領や与党関係者から辞任を催促されたとのではと解説。
実際、チョ氏の辞任声明文は、慌てて作成したのか「法務部」が「法部務」になっているなど、スペルが間違っていたと東亜日報系列のケーブル放送局のチャンネルAが指摘しています。
それども、文大統領はこの日の午後2時から行う予定だった首席秘書官・補佐官会議を1時間延期。大統領府の職員も予定時刻の午後2時になって会議の延期を知ったそうですから、韓国大統領府にとってもチョ氏の即時辞任表明には慌てたようです。
文大統領は、1時間延期したこの首席・補佐官会議で「今回韓国社会は大きな鎮痛を経験した……その事実だけでも大統領として国民に非常に申し訳ない……私はチョ国法務部長官とユン・ソギョル検察総長の素晴らしい組み合わせによる検察改革を希望した。夢のような希望になってしまった」と謝罪の意思を明らかにしていますけれども、14日発表の世論調査で、「チョ法相は辞任すべきだ」とする声が過半数を超えていた事を考えると、文大統領は内輪の会議で謝罪するのではなく、国民に向かって記者会見して謝罪すべきではないかと思います。
というのも、韓国世論が分裂しているからです。
3.分裂する韓国世論
文大統領はチョ氏を法相に任命した後、「チョ氏への疑惑提起や妻の起訴で、任命への賛成と反対が激しく対立している……国民の分裂が続きかねない状況を見つつ、大統領として深く心配をせざるを得なかった」と述べていますけれども、10月3日には韓国の保守派によるチョ氏の辞任を求める大規模デモが、10月5日には、チョ氏を支持する進歩派の大規模デモが、それぞれ行われ、12日には左右両派が瑞草洞で集会を開いています。
これらについて、元日経新聞編集委員の鈴置高史氏は、過去韓国では国論が分裂して議会では収拾がつかなくなり、左右が街頭での勝負に賭けた時、クーデターが起きている、と指摘。その恐怖がチョ氏の辞任につながったと述べています。
鈴置氏は韓国のクーデターは2回あったと指摘しています。
1度目は1961年5月16日に朴正煕(パク・チョンヒ)少将らが敢行した軍事クーデターです。前年の1960年4月19日の四月革命により李承晩大統領が下野しました。
2度目はこのクーデターで政権を握った朴正煕大統領が、1979年10月26日に暗殺されたどさくさの中、力を溜めていた全斗煥国軍保安司令官らが1979年12月12日、不安定な政局を収めると称して粛軍クーデターを成功させています。
鈴置氏は、今回のチョグク法務部長官の任命問題も本質は左右の権力闘争であり、双方の支持者を動員する大衆集会とデモを駆使する最終戦争に突入したとして、過去2回のクーデターと似てきていると述べています。
4.攻勢に出る野党と韓国を逃げ出す人達
では、実際にクーデターが起きるかというと、鈴置氏は、起きないと断言はできないとしながらも、韓国では「高級軍人もすっかりサラリーマン化して、将官にしてもらえるか、大将・中将で退役できるかに小心翼々。人事権を持つ青瓦台をヒラメのように見上げてばかり」というのが定説だとして、ネガティブな見方をしています。
仮にクーデーターが起きなかったとして、このままチョグク疑惑は鎮静化するのかというと、そうとも言えません。検察の捜査は続いていますし、野党は文大統領の責任を問うとして、追及の矛先を曺国氏から文大統領へと変えています。
チョグク氏の辞任直後、自由韓国党の黄教安代表は声明文を発表し、「次は文大統領の番だ。国民の傷と憤り、国家的混乱を招いた人事惨事、司法破壊、憲政蹂躙について、大統領が国民の前で痛烈に謝罪しなければならない」と糾弾しています。
野党からみれば、デモと結託してチョグク法相の首を獲った訳ですから、文大統領の任命責任なり、経済政策の失敗なり、いくらでも別のンネタで攻勢をかけてくることは十分考えられます。
筆者なら、いきなり文大統領の弾劾などはせずに、来年4月の総選挙に向けて、文大統領周辺の側近を糾弾して、”タマネギ”を向くように、、追い落とすことを考えますね。正しい未来党は。文大統領による国民への謝罪と、大統領府秘書陣の解任を要求しているそうですから、そちらに流れることになるかもしれません。
ただ、鈴置氏は「今後、再びクーデターが噂されるほどに社会が混乱したら、戒厳令を敷いてデモを抑える手もある」と警鐘を鳴らしています。
既に、韓国経済に対する不安と社会への不満を理由に韓国の富裕層から、外国に移民する動きも出ているそうです。
半島の人達は敏感に情勢を察知し、有事に備えようとしています。日本も安穏としていられないと思いますね。
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