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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.米朝実務者協議決裂
11月5日、米朝両国はスウェーデンのストックホルムで北朝鮮の非核化などを巡り実務協議を行いました。
協議後、北朝鮮側の代表であるギムミョンギル外務省巡回大使は北朝鮮大使館の前で声明を発表。「交渉は、私たちの期待に応えず決裂した……私は非常に不快に思う」と交渉は決裂したと宣言。その理由として、「全面的にアメリカが旧態依然の立場と態度を捨てられないことにある」としました。
続いてギムミョンギル大使は「アメリカはこれまで、柔軟なアプローチと新しい方法、創発的な解決策を示唆して期待感を精一杯膨らまたが、何も持って出ておらず、私たちを失望させ、交渉意欲を落とした……我々はすでにアメリカ側にどのような計算が必要なのかを明確に説明し、時間も十分に与えたにもかかわらず、アメリカが手ぶらで交渉に出てきたのは、最終的に問題を解く考えがないことを示している」と主張した上で、年末までに熟考せよと勧告したと述べ、「対話再開の火種を生かすのか、対話の扉を永遠に閉じてしまうのかは完全にアメリカの態度にかかっている」としました。
キム大使は記者から「ICBM・核実験停止については、年末までに維持するか」と尋ねられると、「議論された内容を具体的に言うことはできない」としながらも「明白なのは、アメリカが私達が要求したものを一つ持って来なかったことだ」と強調しました。
更に、キム大使は「私達は問題解決の突破口を開くことができる現実的な方途を提示した」とし「核実験と大陸間弾道ロケット試験発射を停止し、北部の核試験場の廃棄、米軍遺骨送還のように、私達は先に行った非核化措置と信頼構築措置に大使、アメリカが誠意をもって応えるならば、次のステップの非核化措置のための本格的な議論に入ることができる……朝鮮半島の完全な非核化は、私たちの安全を脅かして発展を阻害するすべての障害が、清潔で、間違いなく削除されるときにこそ可能である」と付け加えています。
2.ハノイの意趣返しをした北朝鮮
これについて、コリアレポート編集長の辺真一氏は、通常2日は必要な実務交渉なのに、1日しかセットされてなかったこと、北朝鮮側が先日発射したSLBMについて、もうしばらく開発期間が欲しいこと、アメリカも今回で合意できるとは想定していなかったこと、そして、交渉が決裂して会場から出てきた北朝鮮のキム大使が10分後には北朝鮮大使館前に外国記者らを集め、記者会見を開いて声明文を読み上げる手回しの良さから、北朝鮮側から交渉を打ち切ったのではないかと指摘しています。
キム大使は「朝鮮半島の問題を対話と交渉を通じて解決しようとする私たちの立場は不変……アメリカが独善的で一方的で旧態依然な立場にぶら下がっなら百で千回で直面座って会話が意味がない」と述べていますけれども、アメリカ国務省は、「北朝鮮のコメントは、8時間半におよぶ今日の協議の内容や精神を反映していない。アメリカは複数の工夫されたアイデアを提示したし、我々は良い議論を行った」と反論。2週間後の再協議に意欲を示しています。
米朝双方の発表が食い違っている訳ですけれども、北朝鮮がこの種の声明を出すのはいつものことですし、その主張も前と変わっていません。
第一、北朝鮮は年末までに答えを持ってこいとアメリカに言った以上、交渉の場で何等か具体的要求をしたと考えられますし、先に紹介しやように北朝鮮側は今回の交渉を最初から決裂させるつもりで、北朝鮮から交渉を打ち切ったのだとすると、アメリカ国務省のコメントにも齟齬はきたしません。要するに条件闘争的な意味合いが強いのではないかと思われます。
あるいは、前回の首脳会談でトランプ大統領から交渉を打ち切られたことの意趣返しとして、北朝鮮側から交渉を打ち切ってみせ、アメリカと対等であると内外に見せつけるパフォーマンスの一環でそうしたことも考えられます。
3.安全保障の危機を迎える韓国
さて、北朝鮮がSLBMを持ったと宣言したことで俄然、安全保障に問題を抱えることになったのが韓国です。
10月2日、アメリカのランド研究所のブルース・ベネット上席研究員は、ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」の取材に対し「今回のミサイルは韓国に大きな脅威を加えることができる……韓国に配備されたパトリオットやTHAADシステムなどは主に北を向いており、潜水艦から発射されたミサイルが東海から飛んでくる場合、防げないこともあり得る」と述べています。
また、ジェームス・マーティン不拡散研究センターのジェフリー・ルイス上席研究員は「自由アジア放送」の取材に「射程が2000キロある北極星系列の固体燃料弾道ミサイルと推定される……北朝鮮は、アメリカとの対話を通して制裁緩和を追求しつつも、依然として固体燃料ミサイルの開発を続けていることを示している」と懸念を示しています。
筆者は「北朝鮮のSLBM発射について」のエントリーで、今後、北朝鮮は韓国を脅すために太平洋側から韓国沖にSLBMを撃つ可能性がある、と述べましたけれども、ランド研究所のベネット上席研究員のコメントにあるように、専門家も同じ危惧をしているということです。
もはや韓国はアメリカからも北朝鮮からも米朝協議の邪魔者扱いされている存在に落ちぶれています。それでいて自国の安全保障がどんどん怪しくなっている。そんな現状をどこまで自覚しているのか分かりませんけれども、韓国は、在韓米軍駐留経費交渉やGSOMIAなどでアメリカ相手に駆け引きなどしている場合ではないと思いますね。
4.有事に備え国防体制の充実を図れ
米朝実務協議が行われる直前の3日、トランプ大統領は北朝鮮が2日にSLBMを発射した後でも「彼らは話したがっている。我々は間もなく彼らと話す」と述べただけで、SLBM発射自体を非難することはありませんでした。アメリカにしてみれば、北朝鮮に譲歩したともいえる訳で、北朝鮮のいう「手ぶら」ではないと言い返すことだって出来た筈です。
アメリカはそれをせずに「良い議論を行った」とコメントした訳ですから、それなりの進展はあったと期待したいところです。
そもそも、アメリカとしては経済制裁がきちんと継続する限りにおいて、時間をいくらかけても良いわけで、時間が経てば経つほど首が締まるのは北朝鮮の方です。ただ、SLBMは、発射位置によってはアメリカ本土への脅威となる可能性もある訳ですから、どこまでなら我慢するといったレッドラインは設定しているのではないかと思いますけれども、既に同盟国である日本や韓国は脅威に晒されている訳で、同盟国を守るという御題目を立てて、更に北朝鮮を制裁する口実は得ている訳です。
金正恩がどこまでトランプ大統領の腹を呼んでいるかで、今後の"挑発"の度合いも変わってくるのではないかと思いますけれども、民主主義防衛財団のデビッド・マックスウェル上席研究員は、「ドナルド・トランプ大統領が短距離ミサイルを容認するかのような発言をすることで、状況は北朝鮮に一段と有利になった……北朝鮮の金正恩は、トランプ大統領が再選のため外交政策で勝利を望んていることを見抜いている……金正恩は、自分が有利な立場にあるので、ミサイルのテストもでき、また自分が望む合意も得られると考えている」と述べています。
もっとも、アメリカ軍は本当にSLBMだったのかどうか疑っているようで、10月3日、アメリカ統合参謀本部のライダー報道官は「我々は潜水艦から発射されたという兆候を得ておらず、海に設置された構造物から発射された可能性がある」と述べています。
またワシントン・ポスト紙も国防総省当局者の話として、ミサイルは潜水艦からではなく、北朝鮮軍が海に牽して設置した"はしけ"から発射された可能性があるとの見方を伝えています。
先に取り上げたコリアレポート編集長の辺真一氏も、2015年から2016年にかけて3回行った「北極星1号」の試射を「戦略潜水艦弾道弾水中試験発射」と呼んでいたのが、今回は「北極星3の試験発射を行った」と言う表現に止めていることから、潜水艦から発射されたのではなく、水中に沈めた発射台から発射されていると述べています。
これらを見ると、北朝鮮はアメリカと"駆け引き"をして少しでも自分に有利な条件を引き出そうと懸命になっているように見えます。やはり経済制裁が効いていて、1日でも早く解除させたいという思惑があるのかもしれません。
日本はそうした北朝鮮の動向を注視しつつ、今のうちに憲法改正含めた国防体制の充実を図っていくべきだと思いますね。
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詠み人知らず