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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.わが国の立場は一貫しており、変更はない
10月29日、菅官房長官は、徴用工問題について「わが国の立場は一貫しており、変更はない」と述べ、譲歩しない意向を改めて示しました。
これは28日に、共同通信が、日韓両政府が元徴用工問題を巡り、韓国の政府と企業が経済協力名目の基金を創設し、日本企業も参加する案など、事態収拾に向けた合意案の検討に着手したことが分かった報じていたことを受けてのもので、菅官房長官は「そのような事実はない」と否定し、「日韓請求権協定が今日の日韓関係の基盤であると思っている」と強調しています。
日本政府関係者は「びた一文出さない。出せば韓国の主張を認めることになる」と述べていますけれども、当然です。
韓国の主張は国際法違反であることはいうまでもなく、戦後世界秩序を破壊するものであるからです。韓国に特例的な戦後処理を認めた場合、解決済みとしてきたその他の国との協定も蒸し返されることになります。
日本政府は、安倍総理と文在寅大統領の首脳会談について、元徴用工訴訟問題で、韓国側が国際法違反の状態を是正するか、当面の間、見極める必要があると11月中は見送る方針を固めています。
11月上旬には、ASEAN関連首脳会議がバンコクで開かれ、11月中旬にはAPEC首脳会議がチリで開かれる予定だったのですけれども、チリの方は、地下鉄運賃の値上げに端を発した大規模なデモが続き、治安が不安定となっていることを理由に、開催を見送ることが発表されています。
ということで、文大統領が日韓首脳会談をしたくとも、その機会が物理的に限られている状況です。
2.行動でも韓国に警告を発したアメリカ
11月5~7日にアメリカのデビッド・スティルウェル国務次官補が訪韓しますけれども、10月26日、在日米国大使館でメディアの取材に応じ、韓国が日韓GSOMIA破棄を宣言したことを巡り、文在寅政権に決定の撤回を求める考えを示し、「日韓双方に2国間の摩擦解消に向けて働きかける」としています。
これについて、韓国・東亜日報はスティルウェルの訪韓を「GSOMIAの満了時限を2週間前にしてGSOMIAの延長のために『最後の通牒』の意味合いで訪問するものだ」と伝えています。アメリカに度重なる破棄撤回要請に慌てています。
アメリカは口だけではありません。行動でも韓国に警告を発しているとの指摘もあります。
10月28日、韓国各紙はアメリカのB52爆撃機2機が25日に「異例の飛行」を行ったと報じています。それによると、B52は、グアムのアンダーソン米空軍基地から出撃し、同基地や沖縄嘉手納基地からの空中給油機3機の給油を受けながら、対馬海峡を経て、日本海上空を飛行したとしています。
B52は今年3月、5月、9月と、日本列島の東側からロシアのカムチャツカ半島近くまで飛行したことは確認されていたのですけれども、日本海での飛行は異例とのこと。
朝鮮日報は「北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射など、悪質な挑発を行った場合に備えた警告のメッセージ」と報じ、中央日報は「22日に韓国防空識別圏に無断進入したロシアを牽制しようとする目的」と解説しています。
けれども、B52の飛行経路と25日に飛んだことに着目した意見もあります。
それは、半島が「赤化統一」されることに対する牽制だという見方です。
3.アチソンラインは今でも生きている
今回のB52の「対馬海峡から日本海に抜けた」という飛行経路ですけれども、これはアチソンラインに沿って飛行したという指摘があるのですね。
アチソンラインとは、第二次大戦後、ハリー・トルーマン大統領のもと、国務長官に就任したディーン・アチソンが共産主義を封じ込めるために考案したもので、アリューシャン列島から宗谷海峡、日本海を経て、対馬海峡から台湾東部、フィリピンからグアムにいたる海上に設定されたラインです。
アチソン国務長官は、この防衛線を「不後退防衛線」と呼び、共産主義勢力がこのラインを越えて東に進出すれば、アメリカは軍事力でこれを阻止すると表明しました。
アチソンラインを引いた当時は、韓国や台湾の防衛が明確にされていなかったことから、半島の東側に防衛線が設定されていました。そのため、アメリカが半島に介入しないと解釈した北朝鮮が後の朝鮮戦争に踏み切ったのだという説もあります。
今は、韓国と台湾もアメリカの防衛対象となっていますから、現在のアチソンラインは、アリューシャン列島から宗谷海峡、朝鮮半島の中央を突き抜けて、東シナ海から台湾海峡を通り、南シナ海へ抜けるルートとされていますけれども、実際、アメリカ海軍の艦艇は、現代でも、アチソンラインの線の東側で活動するのが専らであり、西側に進出することは殆どありません。
つまり、アチソンラインは今でも生きているということです。
4.アチソンラインを意識した北朝鮮のミサイル発射
今回、B52が"昔の"アチソンラインに当たる対馬海峡から日本海に抜ける飛行経路をとってことについて、軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「B52の飛行は、文政権が日米韓の3ヶ国連携から、中国やロシア側に軸足を移すことへの警戒感や、『朝鮮半島の赤化統一は座視できない』というメッセージではないのか。中国やロシアの軍用機や核を搭載した原子力潜水艦が太平洋に出る航路の上を飛行したのは、偶然ではないはずだ。文政権に対し、米軍の強い抑止力を見せつける意味もあった」と述べています。
もちろんその意味があるとは思いますけれども、筆者はそれに加えて、「韓国がレッドチーム入りする動きを止めないのなら、アメリカは、韓国を見捨てる、防衛ラインを旧アチソンラインに引き直す」というメッセージも含まれているような気がします。
10月31日午後、北朝鮮が弾道ミサイル2発を発射。日本海の日本の排他的経済水域の外に落下したとみられていますけれども、日本の排他的経済水域のラインと旧アチソンラインは、似たようなというか結構重なっています。
北朝鮮が弾道ミサイルが具体的に日本海の何処に落ちたのか分かりませんけれども、落下位置が旧アチソンラインの外側であれば、北朝鮮がアメリカに対し、半島に介入する意思があるのかどうかの確認あるいは、半島に介入するなというメッセージである可能性もあります。
今回の北朝鮮のミサイル発射はいつものように早朝ではなく、午後4時40分頃というこれまでとは違った時間です。
もし、B52が日本海のアチソンライン上を飛んだ時間がこの時間帯であれば、その可能性は結構あるのではないかと思います。ちなみに、B52は2機飛行し、北朝鮮のミサイルが2発と同じ数というのも、妙な符合を連想させます。
5.崖っぷちの在韓米軍防衛費負担交渉
そうした背景の中、アメリカと韓国は在韓米軍防衛費負担交渉を行っています。
複数の韓国政府消息筋によると、9月24~25日の1度目の交渉と10月23~24日の2度目の交渉でアメリカ側は戦略資産展開費用として、1億ドル以上を請求したことが明らかになっています。これは昨年の戦略資産展開費用3000万ドルの3倍以上にもあたる額で、アメリカ側はグアムのアンダーセン空軍基地から出撃するB-1B戦略爆撃機の場合、昨年基準として韓半島防衛のため5~6回出撃したことを根拠に毎年の戦略資産スケジュールを基に計算した結果だと説明したようです。
これに対し韓国政府消息筋は「米国側は自分たちが算定した防衛費分担金50億ドル相当に合わせるため全般的に項目ごとに3倍以上膨らませおり、戦略資産展開費用も同じこと」とコメントしていて、韓国政府は、人件費と手当てをこれまでより大幅に増やし、アメリカ本土の支援部隊人件費など間接項目を上乗せしたためと分析しています。
韓国側は10月25日にB52が旧アチソンライン沿いに飛行したことについて、韓国側は、北朝鮮だけを相手にする韓国防衛任務ではなく、東アジアなどでの中国・ロシア牽制任務に投じた後に関連費用を韓国に払うよう要求する狙いだと見ているようです。
そうしたことから、韓国交渉チーム内部では、アメリカは、在韓米軍駐留費用ではなく東アジア安保費用に対する分担要求をしているのだから、「戦略資産展開費用を韓国と日本、台湾、フィリピンが分担して出さなければならないのではないのか」という意見まで出ているのだそうです。
自身の国の安全保障が危機に晒されているというのに、ちょっと、都合のよすぎる解釈ではないかと思いますね。
韓東大学のパク・ウォンゴン国際地域学教授は「防衛費分担金交渉の裏には同盟の責任と費用分担を強調するトランプ米大統領がいる。米国の計算書をただ拒否することはできない状況」とコメントしていますけれども、文政権が米韓同盟についてどういう判断を下すのか、その一端が今年の在韓米軍防衛費負担交渉で見えてくるかもしれませんね。
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