11月23日のエントリー「最後にヘタれてGSOMIAを延長した韓国」のコメ欄で、「アメリカは韓国に対して圧迫するのではなく、北朝鮮に対して不利益になるような政治的あるいは軍事行動を要求したのではないか」との御意見をいただきましたので、お返事を兼ねてエントリーします。
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1.GSOMIA延長決定のターニングポイント
韓国がGSOMIA終了宣言を凍結したのは、終了期限の6時間前のことですけれども、韓国外務省関係者によると、前日の21日までは、失効やむなしという意見が強かったところが、当日の22日になって、破棄撤回という雰囲気に変わったのだそうです。一方、韓国の国会関係者は、アメリカ政府高官が日韓両政府に強く働き掛け、21日から状況が変わってきたとのべています。いずれにせよ、21~22日辺りがターニングポイントだったということです。
韓国が急に態度を変えた理由として、元海将の伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授は、21日にアメリカ上院が議決した、GSOMIAの重要性を訴えた議決が大きかったと指摘しています。
伊藤俊幸教授は、議決の意味について次のように述べています。
「文在寅大統領は11月15日にアメリカのエスパー国防長官と会談しても、在韓米軍の危惧を理解していなかったのでしょう。21日に開かれた韓国の国家安全保障会議(NSC)でもまだ理解されていませんでした。業を煮やしたアメリカ務省が主導して上院に決議案を出し、それを超党派で可決したのです。この議決は、在韓米軍がGSOMIA破棄にどれだけ激怒しているのかの現れでした。
アメリカ上院の決議で、特に重要なメッセージだったのは、アメリカ上院外交委員会のジェームス・リッシュ委員長も公聴会で指摘していましたが、『GOSOMIA終了は韓国に駐留した米軍の危険を増大させて韓米同盟を損なわせる』という点です。なぜ日韓のGSOMIAが在韓米軍を危険に晒すのか。それは今、北朝鮮が撃っているミサイルは直接韓国を狙う新型ミサイルであり、リュッシュ氏の言う通り、この性能を知るためには実験場である日本海のデータを一番持っている日本からの核心的な情報が必要不可欠だからです。この一番大事な日本からの情報を止めるという決断は、韓国を危険に晒すのみならず、そこに所在している在韓米軍人たちを危険に晒すことにほかならない。だから、上院の議決に際して『在韓米軍の危険を増大させる』という言葉が出てきたのです。
この決議案の詳報を韓国紙が報じたことで、文大統領周辺もようやく事態の重大さに気が付いた。慌てた韓国はNSCを再度22日にも開くという異例の対応をとりました。『在韓米軍を危険にさらすのか』というアメリカの"本気の警告"に韓国が屈したのです」
伊藤教授は、在韓米軍を危険にさらすのかというアメリカの本気の警告が、文政権を土壇場で翻意させたと分析しているのですね。
2.北朝鮮は敵か味方か
この伊藤教授の分析は、それなりに説得力のあるものだとは思いますけれども、一つとても大事な前提があります。それは、在韓米軍が"味方"であり、北朝鮮は"敵"であるという前提です。この前提があって始めて、在韓米軍を危険にさらすことが拙いことだとなる訳です。アメリカが味方で北朝鮮が敵だという前提が成り立っている限りにおいて、伊藤教授の分析は信憑性が高いと筆者も思います。
けれども、もしも、この前提が成り立たなかった場合はどうなるか。例えば、アメリカが敵であり、北朝鮮が味方であると文政権が考えている場合です。
この場合は、GSOMIAを破棄することは是となります。
韓国がGSOMIA破棄宣言を凍結する前の11月20日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信はGSOMIAをめぐるアメリカの姿勢を非難する論評(KCNA Commentary on U.S. Pressure on S. Korea over Renewal of GSOMIA)を配信しています。
論評では、「アメリカは、南朝鮮に対する日本の経済制裁について『韓国と日本が取り組むべき事柄』と口を噤んだくせに、GSOMIA延長を南朝鮮に強要しているのは、自国の軍事的利益のために南朝鮮を日本の経済植民地、従属物にすることもためらわない米国の腹黒い下心をはっきりと示している」と非難しています。
そして、南朝鮮の世論調査では大多数がGSOMIA終了を求めていることから、大衆はアメリカと南朝鮮の主従関係を終わらせることを求めているとし、「南朝鮮には部外者による圧力に屈するか、大衆の要求を受け入れるかの2つの選択肢がある」と述べています。
なんのことはない、GSOMIAを破棄して、米韓同盟を解消しろと言っていた訳です。
つまり、韓国にとって、北朝鮮が味方だという立場に立てば、GSOMIA破棄は望むところだったということです。
3.文在寅は国益を考えない
では、仮に文在寅政権が北朝鮮を味方とする立場に立っているとして、本来は是とすべきGSOMIA破棄を諦めて延長する理由とは何か。
考えられることは、GSOMIAを破棄することが逆に北朝鮮に不利になるか、あるいは、自分の政権が倒れてしまう危険を招くくらいではないかと思われます。自分の政権が倒れてしまえば、北朝鮮を援助することも出来なくなりますからね。
前者のGSOMIAの破棄が北朝鮮の不利になるケースに何が考えられるかというと、それこそコメント欄で指摘のあったように、「韓国の空軍基地を使って北朝鮮の空爆を実施するとか、韓国軍に38度線を越えて攻撃させるとか」ということになります。
これは「北朝鮮の目前に広がる二つの道」のエントリーで、二択の内の一択として挙げています。
そして後者の、GSOMIA破棄によって文政権が倒れる懸念に繋がるものとして何があるかというと、やはり経済・雇用問題でしょう。
GSOMIAが破棄されて、仮に在韓米軍が縮小・撤退ということになれば、安全上の懸念から韓国から外資が撤退する可能性があります。そうなれば今以上に経済問題が拡大しますし、なんとなれば、トランプ大統領が韓国に経済制裁を掛けてくることだってないとはいえません。
少なくとも韓国経済にとってのリスク要因こそ増え、減ることは考えられません。
まぁ本来は、たとえ、北朝鮮が味方であったとしても、GSOMIAを延長するか破棄するかの判断は、韓国の国益に基づいて行われるべきだと思うのですけれども、どうも文政権はその認識が薄いという指摘があります。
一昨日のエントリーで取り上げた、『反日種族主義』の共著者である李宇衍氏は、文政権について「過去もっとも反日的な政権である上に、自分の政治的利益のために反日的な情緒や認識を利用しようとしている政権です。……文政権は国益を考える政権ではないですから」と述べているのですね。
文政権が国益を考える政権ではない、とするならば、自分の政治的利益のためには韓国のことなど知ったことではないということになります。
そして、李宇衍氏のいう"自分の政治的利益"というのが、北朝鮮の利益、だとするならば、文政権は、北朝鮮の為ならば、とことん反日してくる可能性もあるということです。
成程、ここまで親北政権ならば、韓国が崩壊しようが、日韓関係が悪化しようがお構いなしになる訳です。国益よりも自身の政権維持を優先し、後継政権も自分の息がかかった政権となるように、政権交代させないような仕掛けをしておく、それが文政権の使命だということですね。
その前提に立った上で、文在寅大統領が"苦渋の決断"でGSOMIAを延長せざるを得なかったとするのなら、やはり北朝鮮空爆といった軍事行動、あるいは、韓国の経済リスク上昇による政権崩壊の未来図をアメリカから突き付けられた可能性はないとはいえないのではないかと思います。
ここら辺りについて、ジャーナリストの近藤大介氏は、11月21日、アメリカのポンペオ国務長官が韓国の康京和外相と電話会談を行った際、「ポンペオ長官は、康外相に対して、恫喝に近い言葉で迫ったようだ。『もしも日本とのGSOMIAを終了するのだったら、アメリカは今後、韓国を同盟国とはみなさない。北朝鮮との交渉においても、韓国とは切り離して、完全に米朝だけで進めていく。来年の在韓米軍の駐留経費も、トランプ大統領が主張するように、アメリカ側の総意として5倍を要求していく』。韓国はこうした強圧的なアメリカの態度に気圧され、最後の最後で翻意したのだ」との日本政府関係者からの情報を伝えています。
韓国が北朝鮮と完全に切り離されるばかりか、経済圧力が高まるだけ。文在寅政権は北朝鮮の為でも、韓国の為でもない宙ぶらりんの政権となってしまう。流石の文在寅大統領とて、それには耐えられなかったということなのでしょう。
結論が見えない国家首脳は国を滅亡に追いやる。日本も他山の石とすべきかと思いますね。
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