

1.5G導入促進税制
12月12日、自民党は臨時の総務会を開き、来年度の税制改正大綱を了承しました。
税制改正大綱の中には「5G導入促進税制」として、5G基地局を整備する携帯電話会社などに対して2年間、投資額の15%を法人税から差し引くか、1年間に損金として処理できる額を30%に拡大して法人税を軽減するかを選べる措置を導入しました。
日経新聞によると、携帯各社に限らず、工場内で独自に5G技術を使って無線通信する「ローカル5G」を整備する企業も、税優遇を受けられるとしています。
ただ、この税制を受ける為には、政府の審査で「安全保障上のリスクがある部品が使われていない」と認定される必要があります。
既に日本政府は各府省庁や自衛隊などが使用する情報通信機器から、ファーウェイおよびZTE製品を事実上排除する方針を固めていますから、この政府審査も同様にファーウェイやZTE製品も除外対象になると見られています。
今の所、各携帯会社は、基地局を現行の4Gと同じ通信機器メーカーに発注するとみられていますけれども、それでも、表向きは申告による減税ですから、軽減税を受けなくても構わないと企業が判断すれば、ファーウェイでもZTEでも使えることになります。
仮に、ファーウェイおよびZTEの5G製品を導入しても、政府の優遇税制を上回るケースがあれば、「5G導入促進税制」を申告する必要は無くなります。
例えば、ある企業がファーウェイやZTEの5Gを導入しても、5Gに投資する金額の15%以上約安くつけば、ファーウェイおよびZTE製品を使う事だってあり得る訳です。

2.五年間で三兆円の設備投資
現在、5Gへの参入を申請している日本の携帯会社は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の4社ですけども、「5G」への設備投資額は総務省に提出した計画から、5年間の投資額合計が3兆円弱になることが明らかになっています。
内訳はNTTドコモとKDDIがともに1兆円、ソフトバンクが5000億円、楽天が2000~3000億円で、投資額の多くが基地局の設置関係費用です。
5年間で3兆円を2年に按分すると1.2兆円。その15%は1800億円程度。物凄く単純化していえば、ファーウェイやZTEがこの1800億円分をディスカウントすれば政府の優遇税制はチャラになる計算です。
勿論、総務省や税制調査会とて、その辺の計算はした上で、この優遇税制を仕上げたのだとは思います。ただ、ファーウェイ一社だけを見ても、その売り上げは半端ありません。
ファーウェイの2018年決算は純利益で1兆円弱もあり、米中貿易戦争が激しくなった2019年でも、グループ売上高は対前年同期比24.4%増となる約9兆948億円を叩きだしています。純利益率が8.7%ということですから、利益を計算すると約7912億円になります。
ここまで儲けているファーウェイが2年で1800億円以上のディスカウントなどしないと決めつけるのは少し危険な気もします。
3.5G実証実験
総務省は5Gの参入条件として全国を10キロメートル四方に区切り、5年以内に50%以上のブロックで5G基地局を整備することを求めています。これは5Gで使う電波は4Gに比べて届く距離が短いためで、例えば、5G向けに割り当て済みの28ギガヘルツ帯の周波数は、半径数百メートル程度しか飛ばないといわれています。
そこでKDDI、ソフトバンク、楽天の通信3社は、今年3月に「5G」用のアンテナ設備を共用して通信する実証実験をすると発表しています。
これは、送配電事業者の東京電力パワーグリッド(PG)と共同で、電柱の上に共用アンテナを設置するというもので、このアンテナに各社が共用で使用します。これで投資額を抑えるとしています。
具体的には、東京電力パワーグリッドが電柱に共用アンテナを置き、その下部に携帯各社がそれぞれ基地局を設置する方式で、実験期間は4月~9月なので実験そのものは終わっている筈です。
実験では、主に電波の干渉状況や安定性について調べるとのことですけれども、KDDIはその他にも10月中旬に走行する列車で5Gが使えるかの実証実験を行っています。
インフラは一度設置したら、それなりの期間に渡って使われるものですし、生活の基盤ともなるものです。そこに、安全保障上のリスクがある部品が使われるのは、やはり危険です。
これは携帯だけでなく、企業内通信インフラも同じです。
5Gを巡る覇権争いの中、日本がどのような戦略を描いていくのか。予断を許しません。

この記事へのコメント