

1.こまけぇこたぁいいんだよ!!
12月23日、安倍総理は訪問した中国の北京で習近平国家主席と会談し、来年4月で調整している習主席の国賓来日に向け準備を進めることで一致しました。
安倍総理は会談で習主席の国賓来日について「極めて重視している……日中関係を次なる高みに引き上げ、地域の平和、安定、繁栄に大きな責任を有する両国がしっかり責任を果たしていく決意を明確に内外に示したい」と述べ、習主席は「私と首相が緊密な意思疎通を保ち、中日関係を新しい段階に押し上げていきたい」と語りました。
更に、北朝鮮の非核化に向けた連携の確認と、国連安全保障理事会決議の完全な履行が重要との認識でも一致しました。
その一方で、習主席は中国とロシアが提案した対北制裁緩和に関する安保理決議案への支持を要請したのですけれども、会談に同席した岡田直樹官房副長官は記者団に「制裁緩和は時期尚早だ」と述べたところを見る限りでは、その要請は断ったようです。
また、安倍総理は「東シナ海の安定なくして真の日中関係の改善なし」との立場から尖閣諸島周辺での中国公船の活動の自制を強く要求。東京電力福島第1原発事故後の日本産食品輸入規制の早期解除や拘束されている日本人の早期帰国を求めただけでなく、新疆ウイグル自治区を含む中国の人権状況も取り上げ、透明性のある説明を要求し、更に、香港情勢について「大変憂慮している」と伝えたそうです。
習主席は「中国の内政問題だ」と突っ撥ねたようですけれども、「小異を残して一致点を求め、積極的に協力することが、新時代の中日関係を発展させる共通戦略の手引きになる」と述べたそうですけれども、習主席をして「こまけぇこたぁいいんだよ!!」と言わせた訳ですから、ここが中国の弱点になっていることは間違いありません。
2.国賓をカードにする安倍総理
こうしてみると安倍総理は中国相手にもちゃんと外交をやっていることが分かります。つまり、習主席を国賓として招くことを"餌"としてチラつかせ、尖閣、ウイグル、香港について改善を要求しているからです。
習主席は「内政問題だ」と答えていますけれども、それならば国賓もなしだ、と出来る訳ですからしっかりとカードに使っています。
なぜそれがカードになるかというと、やはり、アメリカとの冷戦が効いているのでしょう。最初は米中貿易戦争だけだったのですけれども、11月に中国政府がイスラム教徒のウイグル人を何十万人も組織的に洗脳していることを示す公文書が流出したことや、香港人権法が成立するなど、人権問題に広がっています。
また、一帯一路を隠れ蓑に、周辺国に巨額の資金を貸し付けて返済できないとみるや領土の割譲を迫るなど圧力を掛けていることが明らかにされ、これも批判を浴びています。
中国が米中貿易戦争辺りから日本に擦り寄ってきているのも、世界からの批判を受け、突破口を見出そうとしているのでしょう。
筆者は「日・イラン首脳会談」のエントリーで、安倍総理は世界中の首脳を繋ぐハブ的役割をしていて、中国とも接近するのもその文脈の上でのことかもしれないと述べましたけれども、増々そんな気がしてきました。
3.囲師必闕
孫子の兵法の一つに「囲師必闕(いしひっけつ)」というのがありますけれども、これは「敵と戦うとき、全部ふさいでしまうのではなく、一方だけ逃げ口を開けておくというもので、四方全部囲んでしまうと、窮地に陥った敵が死を覚悟して戦いを挑んでくるため却って味方の犠牲が大きくなることを避けるための戦法です。
現在、安倍総理はこの「囲師必闕」を中国に仕掛けているのではないかと思えてきます。
つまり、安倍総理は世界が中国を批判し三方を包囲する情勢の中、「習主席の国賓来日」という北門を開けて見せているわけです。けれども、開けた門の外には「尖閣」「ウイグル」「香港」といった弓兵が矢をつがえている。この門から逃げてもよいがその代わり「人権弾圧」「帝国主義」の鎧兜は捨てていけ、という訳です。
ただ、中国は孫子の兵法の本場です。これが「囲師必闕」であることなど、習近平とてとっくにお見通しでしょう。分かった上で、開けた門をくぐるのか。くぐったとしてどうくぐってくるのか。
習主席は「小異を残して一致点を求め」などと「鎧兜を捨てるのだけは見逃してくれ」と懇願しているところを見ると、捨てたフリをして誤魔化すことすら出来ないほど困っているのかもしれません。あるいは「鎧兜を捨てたフリ」を見せるだけでも国内からの突き上げを食らってしまうのかもしれません。
もし、こうした構図、すなわち安倍総理が中国に対して「囲師必闕」の兵法を使っているのだとすると、日本国民はそれをサポートするのが国益に叶うことになろうかと思います。
それはどういうことかというと、何のことはない、「人権弾圧をする習主席を国賓として招くとは何事だ」と大いに反対して見せることです。門の外で弓を構える兵たちが今にも矢を放ちたくて堪らないところを、指揮官の安倍総理が「まだだ」と懸命に抑えている構図を作ってやるということです。
この構図が出来れば、モタモタしていたら、国賓来日も無くなる、門が閉まってしまうと思わせ、そのまま習主席へのプレッシャーとなります。
4.とても低くてショックでした
習主席の国賓来日を控え、中国は日本の世論を気にしています。
9月に「言論NPO」が18歳以上の男女を対象に日中両国で世論調査を行っているのですけれども、中国に「良い」印象を持つ日本人の割合は15%でした。一般的には非常に低い値ですけれども、推移でみれば、8%、11.5%、13.1%と、低いながらも4年連続で上昇しています。
けれども、中国側はこの結果にショックを受けています。
11月8~9日に行われた在日中国大使館と日本人記者の交流合宿で、中国外交官は、「とても低くてショックでした」と零したそうです。
中国は2019年を日中両国の「青少年交流推進年」と位置づけて友好事業に力を入れていることと、習主席の国賓来日を前にもう少し数値が改善するのではという期待があったからだといわれています。
件の外交官は、日本人の中国への好感度が低い原因として「日本の新聞やテレビでは中国に関するマイナス報道が多い」とし、「メディアには社会に対する責任があり、中日関係の改善と発展に向けて建設的な役割を果たしてほしい」と注文を付けたそうですけれども、交流合宿に参加した日本人記者からは、むしろ、日本人が中国に対して「怖さ」や「不安」を感じているからではないかという意見が相次いだそうです。
この世論調査によれば、日本人が中国に「良くない」印象を持つ理由のトップ3は、「尖閣諸島周辺の日本領海や領空をたびたび侵犯しているから(51.4%)」、「共産党の一党支配という政治体制に違和感を覚えるから(43%)」、「国際的なルールと異なる行動をするから(42.3%)」となっています。
これは、中国の行動や政治体制そのものに起因するものであり、メディアが取り繕ったところでどうなるものではありません。メディアをコントロールすればどうにでもなると考えている時点でズレがある。
日本は普通に中国を見て、その人権弾圧と帝国主義を批判し、習主席の国賓来日に反対することで、安倍総理をサポートするでよいのではないかと思いますね。
明日に続きます。
この記事へのコメント
輸入国あるいは労働力輸入国に転換する中国には、支払う外貨はあるのだろうか?素朴な疑問です。
外貨がなければ貿易が滞り、通貨価値も下落して国力も削がれるでしょうから。
日本に頼ってもODAは終ってますし、中国支援を安倍政権として行うのか、突き放すのか。
習近平が日本に金を求めていることは明白ですが、アメリカもそう簡単ではないでしょうから、
資金支援ではなく、国賓来日程度がカードになっているのは良いことかも知れません。
日比野様の仰る通り、日本政府は入口で、日中間の諸問題について懸念を伝え、中国側の本題である
資金調達まで辿り着かないように、中国側に懸案への解決策のカードを切らせる事を試みているのかも知れません。
どうやらそれを餌に最大限利用するようですね。
外交の安倍、面目躍如といったところでしょうか。
ただ、このクーポンは期限付きなので、期限ギリギリまで
徹底的に利用して、少しでも日中関係を有利に進めてほしいですね。
大日本帝国軍人
俺の思考の方が何手も先に行ってますねwww
まあ、これから安倍が”習主席国賓訪日カード”をどう利用するかが楽しみって事だよ、管理人。
管理人も凡人だねwww
気楽でいいね凡人は。
さんさん
所謂、ネット保守界隈で国賓来日がケシカランと喚いてるのが居りますが、何がそんなにケシカラン事なんでしょうか。一寸、私には分かりませんね。
天皇陛下が譲位して直ぐに国家主席が来日して合うのを、屈辱と感じるんでしょうか。
中華思想の元では、皇帝の代替わり時に周辺国の王が祝辞を述べに訪れたそうですよ。其れを持って、ケシカランと怒ってるのでしょうか。多分そうですよ。所詮、似非右翼は戦後秩序の買い犬ですからね。今の左右対立を維持するのが自分達に取っては、美味しい商売なんです。勇ましい事ばかり抜かすのは、実現性が一ミリも無いからで、ヤってる事は左翼野党の何でも反対と同じですよ。
安倍総理と習近平が接近し懸案を片づける事で困る勢力が居るんでしょうね。例えば北朝鮮や江沢民派と云う奴ですね。
香港での逃亡犯条例を批判してた、所謂系は怪しい奴等だと言えます。逃亡犯条例の目的は不正蓄財や賄賂で本土から逃げ込んだ奴を引き渡せと云う物ですよ。その多くは江沢民派でしょうがね。
さんさん
政治とは妥協の産物で可能性のアートで有る。