習近平の国賓来日は中国の野心を挫くチャンスとなるか

昨日の続きです。
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5.国賓をカードにして何を得るのか

昨日のエントリーでは、安倍総理が習近平主席を来春に国賓として招こうとしているのは、国賓をカードにして、「尖閣」「ウイグル」「香港」といった様々な問題解決を要求するためではないかと述べたのですけれども、それですんなりということを聞く中国とも思えません。

日中首脳会談では、安倍総理から香港やウイグルへの対応を問われた習主席は「内政問題」と述べ突っ撥ねました。それでも、日本の要求全てを拒絶したという訳でもなく、日本産食品への輸入規制撤廃問題では、日本産牛肉について19日に中国の輸入禁止令を解除しています。

これは、日中首脳会談直前の措置ですから、外交的にみれば中国からの手土産です。まぁ、中国の"核心的利益"以外であれば土産くらい呉れてやるということなのでしょう。その意味では"国賓"カードが一部功を奏したのかもしれません。

とはいえ、人権弾圧をし、帝国主義を見せる中国の国家主席を"国賓"として日本に招くのは、西側諸国の一員としてははっきりとマイナスです。そのデメリットを考えれば、"国賓"カードを切ってまで得るものが牛肉の輸入禁止解除では、流石に割りに合いません。

本丸は別のところにあると考えるのが普通ですし、日本も当然そのつもりでしょう。

では、その本丸とは何か。


6.第五の政治文書

今回の会談で、安倍総理は習主席の国賓来日について「日中関係を次なる高みに引き上げ、地域の平和、安定、繁栄に大きな責任を有する両国がしっかり責任を果たしていく決意を明確に内外に示したい」と述べています。決意を示すということは何等かの声明なり宣言を出すということです。実際、今回の習主席来日に合わせて、日中両国で所謂「第五の政治文書」の調整が進んでいると言われています。

日中両国は、これまで72年の「日中共同声明」のほか、78年の「日中平和友好条約」、98年の「平和と発展のための友好協力パートナーシップ確立を打ち出した日中共同宣言」、08年の「戦略的互恵関係の包括的推進をうたった日中共同声明」と、4つの政治文書を出しています。

戦後、中国と国交正常化して48年でわずか4つしか出されてないことからも分かるとおり、中国はこれら4つの政治文書を両国関係の基礎として重視しています。

2019年9月10日、中国の孔鉉佑駐日大使は東京都内での講演の際、会場からの質問に対し、「議論を深める中で条件が熟せば、第五の政治文書を結ぶことに異存はない……新しい日中関係を構築する上で極めて重要な1ページを開くことになる……重要なのは文書の中身だ……まず試みる、難しかったら諦める、将来に任せる、という自然体でやっていく……文書の中身に力点を置いて双方で知恵を出してはどうかということで事務レベルで認識は一致している」と政治文書の取りまとめ作業を日中双方の事務レベルで調整していることを明らかにしています。

特に、最近2回の中国国家主席の国賓訪日時には、政治文書を発表してきた経緯もあり、中国側は日本に検討の加速を促しているといわれています。


7.政治文書には野心が埋め込まれている

第五の政治文書は、経済や環境など世界の課題を見据えた内容とみられているそうなのですけれども、事はそう単純ではないと筆者は見ています。なぜなら、中国はその重要な政治文書で自身の中華帝国主義の自己正当化と日本にそれを認めさせたと既成事実化させてくることが考えられるからです。

2008年5月のエントリー「共同声明に潜む中国の領土的野心」で指摘したことがありますけれども、過去4つの政治文書を時系列で追っていくと、初めは相対的に国力(経済力)の劣る中国が歴史認識以外では極力下手に出ていたのが前回の政治文書である08年の「戦略的互恵関係の包括的推進をうたった日中共同声明」では歴史認識を引っ込める代わりに大国になったと自信を深め、領土的野心を露わにしています。

今回習主席の来日時に「第五の政治文書」が発表されるとするならば、当然、過去の4つ政治文書を踏まえてくる筈ですから、「中国の発展は世界に貢献する、世界は中国の正当な台頭を受け入れよ」とかなんとか美辞麗句をまぶして、自己正当化してくるでしょうね。


8.中国の帝国主義にタガをはめよ

中国政府は昨今の米中貿易戦争は長引くと見ています。

「第五の政治文書」を出したい意向を9月の東京での講演で発表した中国の孔鉉佑駐日大使は、その同じ講演で米中貿易戦争について「貿易摩擦が仮に解決してもいろんな問題が出てくる……応酬のドラマは始まったばかりで、我々は20年は続くと想定して脚本を書いている」と述べています。

ここのところ中国が日本に擦り寄ってきているのは、この米中貿易戦争の影響があるからだと指摘されています。つまり日本をしてアメリカ市場の代替をさせたり、アメリカを牽制する狙いがあるということです。

それは、日中関係改善は中国側の事情に依るところが大きいということを意味しますし、また同時に、米中貿易戦争が収束すれば、日中関係に揺り戻しが起きるともいえ、日中関係自体脆弱であるとも言えます。

そうした背景の中、安倍総理は、習近平主席を国賓として招き、「第五の政治文書」を出そうとしているのですね。

おそらく、安倍総理は中国が擦り寄っている今というチャンスを使って、「第五の政治文書」を出すことで日中関係の安定を図ると同時に、中国の帝国主義にタガをはめ、あわよくば人権問題にまで網をかけようとしているのではないかと思います。

つまり「第五の政治文書」自身に中国がこれ以上帝国主義に走らないような文言を埋め込んでおくのではないかということです。

その一方中国は、逆に過去の4つの政治文書から更に一歩踏み進め、中華帝国主義を拡げることを日本を出汁にして宣言しようとしてくるものと思われます。

その意味では、「第五の政治文書」作成において、日中両国の思惑がぶつかる訳で、政治文書として纏まるのか、纏まらないのか、また纏まったとして、どういう文言で決着するのか。「第五の政治文書」の内容は極めて重要です。

日本の世論は、「人権弾圧する習近平を国賓で招くとは何事だ」と反対するだけでなく、「中華という世界観と帝国主義を捨て、真っ当な国にならない限り世界は中国を受け入れない」という意思を示して置くことが大事なのではないかと思いますね。

この記事へのコメント

  • イオンのバベル

    現在の中国問題は、その政治体制が中華思想、中華帝国主義だけでなく、共産主義と合体しているところにあります。ある意味、これは史上最悪の政治体制と言えるでしょう。歴史的伝統だけでなく共産主義の要素が加味されてきます。大局的に見れば中国の政治経済体制は、かつてのソ連の新経済政策、ネップの拡大継続版だと捉えています。政治は独裁体制、経済はある程度自由な資本主義を認めるということですが、当然これは根本的矛盾があり、非常に不安定なものです。本来、資本主義は政治的には自由民主主義でなければ継続しないのではないでしょうか。

     レーニンもネップを導入する時、これは短い息継ぎの期間に過ぎないと言っています。中国の場合は長い息継ぎの期間ということになるのではないか。ネップが行き詰まったときスターリンは躊躇なく資本主義要素を廃絶し、計画経済を導入しました。闇経済を完全に排除することはできなかったにしても、あのソ連の経済体制になったわけです。中国共産党はこのネップを非常に長期にわたって継続し、その間超限戦 、間接侵略によって政治経済的に他国を取り込んでいく。最終的には中国共産党は世界全体を軍事的、警察権力として支配する。その時、経済体制は資本主義から計画経済にスイッチするかもしれません。もちろん、そうなれば西側世界の我々は為す術はない。明らかにこれが狙いであり、またそう明言しています。逆に言えばこのような状態を目指す以外にない、そうしなければ共産党独裁体制は非常に不安定なものとなり、破滅に向かうしかないということになります。

     今回の国賓来日は短期的にはここの本文で書かれてあることだと思いますが、長期的には孫子の兵法「囲師必闕」という逃げ道が中国共産党には存在しない、ということを中国共産党自身知っているし、我々も認識している必要があるでしょう。これは構造的な問題であり、望めば避けられるというものではないのです。

     そして、日本の反日左翼は明らかにこの中国共産党側の勢力だということです。あのソ連の計画経済の失敗など、もう忘れてしまっているかのようです。
    2019年12月27日 12:14
  • 大日本帝国軍人

    じゃあさ、お尋ねしますけど、管理人が云う「西側諸国からのマイナス評価」を跳ね除けるには”習主席訪日カード”をどう利用したら良いと考えるの。
    俺には、今回の主張もガラクタですね。
    どうしたら”習主席の訪日カード”を日本及び西側諸国にとってプラスにするか?
    俺は可能だと思うけどね。
    まあ、安倍は凡人だからね・・・
    2019年12月27日 12:51
  • さんさん

    安倍総理「アジア平和を果たすべき責任を習氏と共有し、その意味を明確にする事が求められてる」日中首脳会談での発言。
    首相、改憲「私の手で」中国主席来賓理解求める。国会閉会後の記者会見で↑
    で、検索すれば動画有り。

    習主席に改憲の理解を求める為に国賓で招待したと思われてます。先に行われた首脳会談では北朝鮮の問題では一致してますから、理解を得られ易いかも知れませんね。
    公明党の賛同を得る必要上の条件でしょうか。親中派を納得させたい必要上の措置かも。

    香港「条例改正」の標的は北朝鮮と江沢民だった、マネロンと武器調達が栄える「魔界」プレジデント•オンライン↑
    検索。前も書いたけど所謂系も商売だし。左翼と右翼は共闘してる部分が有るからね。互いが居てこその商売だし、過激な事を言い煽る奴は胡散臭いの典型ですよ。連中を指して右側のパヨクと言います。
    2019年12月27日 22:08
  • さんさん

    後、私見ですけど。
    日米は、敢えて違う立場で中共、習近平に接してる印象が、前から強いです。
    これが何を意味するかは書きませんが。日米関係は、かって無い程に蜜月だと言われてますし、ほぼ其の通りでしょ。
    2019年12月27日 22:17
  • さんさん

    虎8系の有本はガセネタ発信基地で維新と関わり深く思い込みが強い解説してますよ。しかも大阪維新が選出した大阪改革委員会で委員を勤めてる維新にベッタリ派、隠れ維新応援団で信用出来ません。百田は殉愛騒動で見ても維新信者ですよね。カズヤをけし掛けて青山議員を後ろから撃たせた主犯だと見られてます。他の虎8メンバーも維新に繋がるメンバーが大半ですし、そうで無くとも、番組の演出通りにするでしょうね。商売ですので。虎8の台本を書いてるのは百田氏だと言われてます。DHC系列は怪しいと見られてます。
    チャンネル桜は依り酷いですね、水島節は偏りと思い込みで出来てると云っても過言では有りません、同様に三橋ですか、西部進の一派も信用出来ない妄想派の一派と言えるでしょう、経済でも酷い妄想でMMTに全てを託してるのは共産主義の夢を現代に見てるのと同様です。
    倉山満に至っては、山本太郎を首相にするべきと発言してます。他の大御所評論家も似たような物ですよ。
    戦後レジュームが彼等を食わせ、先生の立場に押し上げてるからですね。
    桜井なんぞまだ信じてる奴が居るのかな?数周遅れか、ヘイト法成立の一番の立役者なのに、面白い事に桜井一派の一番の攻撃相手は、有田ヨシフでも立憲、共産でも無く、可視化法案を人質にヘイト法成立を迫った公明党でも無く、自民党安倍政権と西田議員だと云うのも不自然過ぎますよ。しかも、拉致被害者家族に接触して、出来もしない武力行使での奪回をけしかけ、安倍政権を攻撃してるそうです。拉致被害者の会には、既に北朝鮮系の右翼が入り込んでて、被害者家族の分断が謀られて、蓮池透氏を山本太郎に靡かせた実績有ります。
    れいわ朝鮮組からの蓮池氏の立候補は、そう言う経緯で齎らされた結果です。
    2019年12月28日 00:45

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