自衛隊の中東派遣について

今日はこの話題です。
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1.自衛隊の中東派遣

1月10日、河野防衛相は海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機を中東海域へ派遣する命令を下しました。哨戒機は11日に日本を出発し、護衛艦は来月初めに出港する予定で、派兵の規模はおよそ260人。活動海域はオマーン湾、アラビア海北部、バベルマンデブ海峡東側のアデン湾の公海上の海域です。

これは、昨年12月27日に閣議決定された自衛隊の中東派遣によるもので、防衛省設置法第4条に基づく「調査・研究」目的の派遣です。其の為、武器使用は認められません。従って、日本関係の船舶が攻撃されるなど不測の事態が起きた場合は、自衛隊法第82条の規定に基づき、海上警備行動を発令することとなり、閣議決定にも、不測の事態が発生した場合は「海上警備行動を発令して対応する。迅速な意思決定に努める」と明記されています。

活動期間は2019年12月27日から2020年12月26日までの1年間で、延長する場合は、再度閣議決定を行うことになります。

昨年5月以降、アメリカは日本に対して、中東地域で船舶警護を図る有志連合への参加を日本などに打診していたのですけれども、今回の日本政府の自衛隊中東派遣は、有志連合への参加ではなく、日本独自の派遣という形を取っています。

これは勿論、アメリカとイラン双方に配慮した為です。

アメリカの有志連合に基づいてそのまま自衛隊を派遣すれば、イランからはアメリカに加担したと見做され、さりとて派遣を拒否すれば、日米関係に亀裂が入りかねないからです。

そこで、日本政府は自衛隊を派遣することでアメリカの顔を立てつつ、活動範囲からホルムズ海峡を除外することで、イランにも配慮する形を取りました。この方法は、あくまで「日本独自の判断」で行うという点がミソで、中東安定化に日本も責任を持つが、アメリカのいいなりではないと表向きに見せるという手です。

もちろん、アメリカとイラン双方にいい顔をするこんな方法を通じさせるために、日本政府はそれなりの根回しを行いました。

昨年12月20日に、安倍総理は来日したイランのロウハニ大統領と会談し、海自派遣計画を説明。ロウハニ師は「日本が透明性をもってイランに説明していることを評価する」と理解を得た上で、自衛隊派遣の閣議決定をロウハニ大統領来日日程から外して27日にズラしています。

安倍総理は翌12月21日にはトランプ大統領と電話会談し、ロウハニ大統領との会談結果を伝え、中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に向け緊密に連携していくことで一致。今月11日から15日までの予定でサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン3カ国を訪問しています。

アメリカとイラン双方に根回しをきっちり行った上で、中東地域安定化への外交努力を行っている。こうした外交努力があるが故に、今回の自衛隊中東派遣もそれなりに実行できたのだと思います。要するにアメリカ、イラン両国の理解をきちんと得ている訳です。

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2.ホルムズ海峡に派兵するなら国交断絶だ

これに対し、アタフタしているのが韓国です。

韓国はアメリカからホルムズ海峡への派兵要請を受けているのですけれども、これについてイランが警告を発しています。

1月9日、サイード・シャべスタリ駐韓イラン大使は韓国の「中央日報」とのインタビューで、韓国のホルムズ海峡への派兵について、「韓国が派兵する場合、国交断絶も検討するほどの影響を与えかねない……他国が軍事活動を展開すれば、われわれが静観はしないということは確かだ。韓国とイランの関係は1000年以上前の新羅時代にまでさかのぼるが、いまのこの時期がこれまでで一番の危機だ。韓国がホルムズ海峡に派兵することはないことを願う」と警告。更に「韓国企業はイランという市場を失うことになり、イランの国民が韓国製品の不買運動を繰り広げる可能性もある。すでに韓国はイランへの制裁に参加したため、中国企業などが韓国企業に取って代わっている。いまは制裁のため韓国が原油の輸入をしていないが、イランの方から拒否することもあり得る。経済面はさておき、韓国に対するイラン国民の感情が憤りに変わるだろう」と強調しています。

国交断絶とはかなり強い警告です。

国交断絶について、韓国外交部は、外交部にシャーベスタリー大使を呼び出して、インタビュー内容の経緯を確認したのですけれども、シャーベスタリー大使は、韓国が米国主導のホルムズ海峡の有志連合に参加する時には両国関係に影響を及ぼしかねないという発言をしただけで、断交に直接言及しておらず、間違って伝えられた側面があると釈明したようです。

実際、中央日報のインタビュー記事での該当発言は、断交もあるのかという質問に対しての回答であり、記事によると、シャーベスタリー大使は次のように答えています。
--断交をも可能なのか。

「そこまでも明らかに影響を与え得る。その他にも韓国企業がイラン市場を失う可能性があり、イラン国民が韓国製品の不買運動を起こすかもしれない。すでに韓国が制裁に参加している状況で中国のような国の企業が韓国企業のパイを奪っている。原油輸入も今は制裁のためにどうせしていないが、それも未来に拒否する可能性もある。経済的なことはさておき、韓国に対するイランの国民感情が怒りに変わるだろう。アメリカがイランと韓国の関係を厳しくしている。なぜ第3国が介入をするのか。理にかなわない」
確かに直接的表現はしていません。けれども、仮に韓国がホルムズ海峡に派兵した場合、たとえ断交にまでならなくても、今後イランが韓国に原油を売らなくなる可能性はあります。現にシャーベスタリー大使もそのように発言しています。


3.外交素人の文在寅政権

こうしたイランからの警告にビビったのか、韓国は中東派兵に難色を示しています。

1月11日、韓国の康京和外相は、「我が国は、アメリカのためにイランから手を引くことはできない……韓国は、アメリカの同盟国だからといって、すべての問題でアメリカと歩調を合わせるべきということにはならない。ホルムズ海峡への軍隊派遣に関しても方針は変わらない……韓国は、旧来からイランとの関係は広く、今後もこの関係を続けていく考えだ」とアメリカの派兵要請を拒否する構えを見せています。

これについて、韓国事情に詳しいジャーナリストの室谷克実氏は「文政権は『対米協力はしたくない』『中国陣営に行きたい』が本音とみられ、韓国軍の中東派遣もしたくないのだろう。ただ、最後はトランプ政権に押し切られて、派遣せざるを得なくなるのではないか。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄騒動と似ている。派遣に抵抗して、米国が増額を求めている防衛費分担金交渉で利益を得る狙いもありそうだ」と述べていますけれども、アメリカに喧嘩を売ってただで済むとも思えません。

室谷氏が指摘するように、先のGSOMIA騒動と同じノリで、防衛費分担金交渉での条件闘争をしようとしているのなら、余計に不信感を持たれるだけでしょう。

なぜなら、韓国は自分の都合を並べ立てるばかりで、日本のように「根回し」をやっているようには見えないからです。

第一、根回しをしていれば、イラン大使から断交を示唆する発言などされていないでしょう、大使の発言に慌てて、大使を呼び出して内容を確認している時点で、根回しなど何もしていない証拠だと思います。

外交素人というか外交が出来ていません。

一部報道では、韓国外交部の高官が、ホルムズ海峡派兵について、アラビア半島南西部のアデン湾で作戦中の清海部隊を、アラビア半島東部のホルムズ海峡に移動配置する案を検討していて、アメリカの要請に応じる形ではなく、日本と同じく、韓国独自の決定であることを強調するとしているようです。

日本の真似をするのは勝手ですけれども、その水面下で「根回し」をした上で独自派遣した日本と、そうでない韓国の独自派遣で等しく受け止められるのかは分かりません。

実際、清海部隊の移動派遣案を明らかにした韓国外交部の高官は、アメリカがその案を受け入れるのかどうかを問われ、「必ずしも、嫌だとは言えないように思う」と答えています。この他人事のようなコメントだけでも、やはり韓国の一方的な希望であってアメリカに根回ししていないと感じられてなりません。

まぁ、韓国がアメリカとイランの板挟みになって右往左往しても、向こうの話であって、日本には関係ありません。日本は日本で、慎重に中東外交を進めるしかないと思いますね。

この記事へのコメント

  • まぁ昔であれば、韓国政府が日本の単独派遣に相乗りしたくて、外務省に共同派遣を打診して、
    二階幹事長あたりが日本国内で圧力をかけて、青瓦台とサムスンがアメリカにロビーして、
    韓国軍の自衛隊派遣への帯同が決まったのでしょうがねぇ。

    今の外務省は身動き出来ないでしょうし、レーダー照射で謝罪さえない状況で、自衛隊側も
    許容できないでしょうから、二階幹事長も安倍首相には政治決断を迫れないでしょう。
    2020年01月16日 08:39

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