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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.地殻変動を起こした北朝鮮の党中央委員会総会
1月1日、北朝鮮は年末に平壌で開かれていた朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会の結果を公表しました。
議題は、「我々の当面する闘争方向について」として、対米関係だけではなく党の組織問題や経済建設、更に党や内閣の人事、党創建75周年の行事の進め方なども議題に加わりました。党や内閣人事では、党政治局員や党副委員長ら、実妹の金与正氏を含む総勢77人の人事を発表しています。
長く北朝鮮問題に携わった韓国政府の元高官は「2019年は、金正恩が実質的に国政に参加して10年の節目だ。この機会に、自分の業績の総括をしたかったのではないか」と語り、人事についても「殆どが、金正恩時代に登場してきた人物。世代交代とともに、10年間の業績に照らして人事を決めているという印象を持った」としています。
ただ今回の総会が異例だったのは4日間にも渡って行われたことで、各所で色んな憶測を呼んでいます。
党中央委総会は、党大会と党代表者会に次ぐ規模の会議で、憲法の上に位置する北朝鮮の朝鮮労働党の会議は、憲法の定めに沿って開かれる最高人民会議や内閣などとは別格の存在とされています。
北朝鮮では政策決定は金正恩委員長と僅かな側近だけで行われるのが普通なのですけれども、総会に数百人、数千人規模の幹部を集め、議題についてそれぞれ金正恩委員長が報告して同意を取り付けたのですね。
これについて、朝日新聞編集委員の牧野愛博氏は、「正常な社会主義国家」であることを内外に示す狙いがあったのではないかと指摘しています。
一方、ジャーナリストの篠原常一郎は、金正恩委員長の健康問題から、指導体制をどうするかの会議であったと指摘。龍谷大教授の李相哲氏は、会議中の金正恩委員長の演説写真での髪型の不自然さに着目。金正恩委員長は党会議に出席しなかったとの情報があると述べています。
2.去年から健康不安説が囁かれていた
金正恩委員長の健康問題については去年から指摘されていました。
昨年1月、金正恩委員長は3泊4日で北京を訪問しているのですけれども、滞在期間中に肥満や糖尿病などの生活習慣病に関する精密検査を受けています。
精密検査を受ける切っ掛けは、金正恩委員長の夫人の李雪主氏が夜の習近平主席主催の歓迎晩餐会で、隣席の習氏の夫人の彭麗媛氏に「夫にはいつも、たばこをやめてほしいと頼んでいるのですが、言うことを聞いてくれません」と話しかけたことからです。
彭夫人は習主席にこのことを伝えると、習主席は金正恩委員長に「金委員長は奥様にとってもそうでしょうが、私たちにとっても大事な方ですので、健康を大事にしてください。明日の午前中、同仁堂を視察される際、検査を受けたらいかがでしょうか」ともちかけた。金正恩委員長も「それほど時間がかからなければ」と検査を受け、糖尿病予防の漢方薬を調合してもらい、持ち帰ったそうです。
金正恩委員長の健康状態について、韓国情報機関の国家情報院によると、金正恩委員長の周囲には彼の寿命を延ばすための特別医療スタッフが存在するものの、当人は医療スタッフからアドバイスされるのを嫌がる傾向があるそうで、彼の体重について「2012年に初めて登場したときは90キロだったが、2014年には120キロに、そして最近では130キロまで増えたと推定される」と報告しています。
国情院は金正恩委員長の視察の映像などから、「金正恩氏が気球のように激太りしていること、夫人や妹との外出時に椅子に座る前にすでに大汗をかいていたこと、化粧品工場を視察した際、足に不安を感じているかのように机に寄りかかっていたこと、靴工場視察でも顔が汗で覆われ、手にしていた荷物を降ろす必要があるほどだったことなどが、最近撮影された写真からわかる」と指摘。
昨年1月の訪中でも歓迎式典などの映像では、金正恩委員長が異常なほど多くの汗をかいている様子や、歩くときにも、僅かだが右足をひきずる動作をみせる場面もあったそうです。
3.1月の公式活動は2018年から激減している
デイリーNKジャパン編集長の高英起氏は昨年4月に、北朝鮮の平壌市民の間で金正恩党委員長の「健康不安説」が流れていて、気の合う友達や親しい友人同士の会話の中で金正恩委員長の話題が上ると、「元帥様の健康状態が異常である。顔色も暗く、表情も乏しくなったように見える」と口々に語っていたそうです。
金正恩の顔色がすぐれないことについて、住民たちは「これは全てアメリカのせいではないか」、「米朝首脳会談以後、朝鮮中央テレビに出てくる元帥様の姿を見ると、以前とは違って健康状態が非常に悪いようだ」とこそこそ言い合っているとも伝えられています。
金正恩委員長の1月の公式活動は金正恩政権発足の2012年から2017年までで、平均10回。2018年、2019年はわずか3件しかありません。その意味では健康不安説が取り沙汰されるのも故なきことではないようにも思います。。
もっとも、今年1月7日、朝鮮中央通信が「肥料工場の建設現場を視察した(Supreme Leader Kim Jong Un Gives Field Guidance to Sunchon Phosphatic Fertilizer Factory under Construction)」という記事で金正恩委員長が姿を現したことを写真付きで報じたようですけれども、写真だけならいくらでも加工なり何なりできますから、健康問題どうこうについてはなんともいえません。
4.後継候補・金与正
もしも、金正恩委員長に深刻な健康問題があるとすると、当然ながら、現在のの執政と後継者問題が浮上します。
昨年末の党総会で行われた人事では、党勤労団体部長の李日煥氏、駐ロシア大使を務めた金衡俊氏、弾道ミサイル開発部門を担当してきた李炳哲氏、副首相で経済通の金徳訓氏らを党中央委員会副委員長に選ぶ一方、外交戦略を統括してきた李スヨン党副委員長、李容浩外相など80歳前後の副委員長達は引退させられた可能性が高いと見られています。
また、金正恩委員長の実妹の金与正氏が党中央委員会の第1副部長に任命されたことが、改めて発表されています。
これについて、デイリーNKジャパン編集長の高英起氏は、金与正氏が党第1副部長に就任して久しいのに、改めて同じ肩書に「任命」されたことから、党宣伝扇動部からほかの部署に異動になったことが考えられ、しかも降格させられる兆候がなかったことから、宣伝扇動部より上位に位置する党内の部署である党組織指導部への栄転ではないかと指摘しています。
高英起氏は金正恩委員長が今回の人事を行う上で見据えたのは、単に自分を中心とした幹部構成だけでなく、自分と妹との「相性」を考えた機構作りではないかと推測していますけれども、そうだとすると、北朝鮮は金正恩委員長の独裁から、将来を見据え、金正恩・与正氏のダブル指導体制に移行しようとしているのかもしれませんね。
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