今日は感想エントリーです。
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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.中国が世論コントロールを要求してきた
1月17日、河野防衛相は衆議院安全保障委員会で、中国を訪れた際、中国の国防大臣との話し合いの中で「習近平の国賓待遇について中国が世論コントロールを要求してきたが、日本には報道やSNSの自由がある。尖閣侵犯等が改善されないと良い環境での訪問にならないので努力すべきと言った」と明かしました。
この件について地上波では聞いたことがないのですけれども、ネットでは、「内政干渉なうえに、内容が『公権力による言論統制をしろ』だよ?普段言論の自由ガー、報道の自由ガーとか言ってる連中は怒らないの?」とか「日本は中国の植民地でも香港でも台湾でもないのに、他国である日本の世論をコントロールしろだって?この一点だけでも国賓招聘などとんでもないことだ!」とか大騒ぎです。
先日、台湾の総統選で、蔡英文氏が800万票を超える過去最多得票で再選されましたけれども、その大きな原因として、中国の一国二制度が事実上崩壊していることが香港の民主化運動で明らかになったからだと言われています。
ジャーナリストの福島香織氏によると、蔡英文総統の評判は決して良くはなく、尖ったリベラル政策や、経済の悪化がその要因だとしながらも、それでも総統選で蔡英文氏が勝利したのは「一国二制度による和平統一か否か」という問いにどう答えるかが選挙の争点になっていたからだ、と指摘しています。
そうしたことから、政策評価だけなら敗北もありえた蔡英文氏が圧勝したのは、蔡英文氏の勝利でも民進党の勝利でもなく、習近平主席の敗北であった、と述べているのですね。
福島香織氏は、総統選の1年前のタイミングで「和平統一か武力統一か」という無茶な選択を台湾有権者に迫った習近平主席について台湾理解に甘さがあったとし、「習近平は、台湾人の大多数が中国に統一されて一緒に『中華民族の偉大なる復興』という中国の夢を追い求めたいのだ、と信じていた可能性がある」とまで述べています。
俄かには信じられないことなのですけれども、仮にこれが本当だとしたら、習近平主席は香港の民意ひいては、民主主義というものを殆ど理解していない可能性があります。
2.部下への責任を擦り付ける中国共産党政府
1月10日、中国の国務院台湾事務弁公室・中央台湾工作弁公室(国台弁)は、中央規律検査委員会による出張汚職捜査チームである中央第一巡視組のガサ入れを受け、「一部指導幹部の問題」の手がかりが見つかったことをオフィシャルサイトを通じて明らかにしています。
これについて中国メディアは「国台弁責任者の、習近平主席の台湾一国二制度に関する指示への対応が不十分であり、改善する必要を認めた」と報じています。つまり、中国共産党指導部は、蔡英文氏に勝たせたのは、国台弁に責任があるとしている訳です。
この中国共産党指導部による部下への責任の擦り付けは、香港でも行われました。
昨年11月24日、香港の区議選挙で民主派が圧勝していますけれども、1月4日、中国国務院は、駐香港中央連絡弁公庁トップの王志民氏を解任し、後任に前山西省党委員会書記の駱恵寧を充てると発表しました。
解任の理由は、昨年6月に香港で大規模デモが始まって以来、香港の情勢分析を中国政府に正しく伝えていなかったからとしていますけれども、共産党支配の中国の保身をしようとすれば、共産党政府にとって都合の良い情報だけ上げていればよく、また報道の自由もないお蔭でそれがバレることもない、となれば、そちらに流れるのはある意味容易に予想されることです。
福島香織氏は、おそらく中国の情報官僚は、「有権者は蔡英文政権にうんざりしています」といった、まんざら嘘ではない報告を上にあげる一方、習近平の逆鱗にふれて失脚してしまうかもしれないと恐れ、中国共産党がいかに台湾人から嫌われているかは報告できなかったに違いないと述べていますけれども、確かに、「熊のプーさん」がダブ―視され、主席のポスターに墨を掛けて抗議した女性が粛清されて廃人同様にされてしまう国であることを考えると無理からぬことです。
3.習近平の暴政は官僚機構を機能不全にさせた
言論の自由を奪い、自らへの批判を一切許さないという社会体制は、為政者側にとっては、実に統治しやすい形態なのかもしれませんけれども、それは同時に、正しい報告を妨げ、民の実態を分からなくさせてしまうリスクがあるということです。
これは、為政者の権力が強ければ強いほど、為政者が神格化されればされるほど、その傾向は強くなるでしょう。
習近平主席は「習近平思想」を学校で教えるよう命じるなど、思想統制を強めています。そんな人民だらけの国では、益々耳の痛い報告は上がってこないのではないかと思います。
先述の福島香織氏は、「習近平の暴政は、情報官僚たちを含む中国の官僚システムを委縮させ、機能不全を引き起こしている。習近平は国際情勢も経済情勢も社会情勢も正しい情報を掌握できておらず、政策ミスが連発して止まらない」と指摘していますけれども、香港と台湾の状況を見る限り、なるほどと首肯するものがあります。
習近平主席が自らの失政を認めず、その自覚もないとするのなら、香港の沈静化や台湾の取り込みは、武力弾圧か、これまで通りの浸透工作に頼ることになります。
香港では民主化運動がなお続いていますけれども、今の所、中国共産党政府は強硬策を取る積りはないようです。
というのも、新たに、駐香港中央連絡弁公庁トップに指名した駱恵寧氏が大物だからです。
4.駐香港中央連絡弁公庁主任に任命された駱惠寧
前山西省書記で全人代財経委副主任であった駱惠寧氏は、経済学博士で抜群の処理能力を持ち、「誰もが想定しない意外な方程式で、物事を解決する」と高く評価されているそうです。
駱惠寧氏は既に66歳で定年の65歳を超えているのに、それでも任命されたということは、それだけ期待されているということです。
駱惠寧氏は山西省の汚職スキャンダルを治め、山西省の経済活性化に尽力した実績を持っています。事情通は、駱惠寧氏の駐香港中央連絡弁公庁主任任命について「香港に人脈がないという新鮮さ、しがらみに捕らわれない で任務をこなせるから、安定化への統治を推進し、大いに香港のV字回復と治安の安定化に寄与できるはず」と期待を寄せています。
駱惠寧氏は2020年の旧正月レセプションでの演説で、「香港は故郷だ」と8回口にしながらも、一国二制度を守ることは香港同胞の幸福と明日の香港の希望だとし、一国二制度によって成長の機会を得るのだと強調しています。
果たして、駱惠寧氏が香港でどんな手腕を見せるのか分かりませんけれども、或いは、中国本土から大規模な投資と開発を行って、富裕層を取り込んで彼らの口を塞ぐと同時に民主化運動を金銭面で削っていくのかもしれません。
今年は香港と台湾に増々注目する必要がありそうですね。
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この記事へのコメント
kazusa
政府に世論コントロールを要求するくらいですから、当然民間では当たり前のようにやってるのでしょうね。
法で規制できないものでしょうか。