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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.封じ込めでは止められない
中国肺炎、新型コロナウイルス(2019-nCoV)が猛烈な勢いで感染拡大しています。湖北省では武漢市を初めとする6都市に加え、新たに6都市が封鎖。計13都市が封鎖され、まだ拡大する懸念も囁かれています。
こうした感染地域を隔離するやり方は、現在の公衆衛生の専門家の間では、「社会距離戦略」と呼ばれています。けれども、ジョージタウン大学のラリー・ゴスティン国際衛生法学教授は「社会距離戦略の問題は、それが効果的であるというエヴィデンスがほとんどないことです……よくてもアウトブレイクの発生をわずかに遅らせられる可能性があるだけで、感染の拡大を止められる可能性は非常に低いのです」と指摘しています。
また、人口1100万人を抱える巨大都市・武漢を「包囲」するのは現実問題として不可能ではないかとみる向きもあります。
アメリカ軍のAcademy Modern War Instituteで、市街戦研究をしているジョン・スペンサー教授は「沿岸警備隊や軍を配備する必要があります。現代において大都市の封鎖は現実的ではありません。そもそも、過去においても現実的なことではありませんでした」とコメントしています。
実際、封鎖したとはいえ、食料品や水を補給しなけばなりませんし、それらが不足すれば、封鎖された市内の人々は、水食糧を求めて探し回るでしょう。いくら道路や鉄道を封鎖したところで徒歩で脱出されてしまえばそれまでです。面積2188平方キロの東京都の人口が930万人弱です、面積約8500平方キロ、人口1100万の武漢市を完全閉鎖など出来る筈がありません。
中国が行っている都市の封鎖について、アメリカ国際開発庁の元国際災害対応部長のジェレミー・コニンディク氏は「意に沿わない強制的な隔離は実行が難しく、逆効果です……本当に必要なことは、人々に納得してもらい、しっかりサポートされていると感じてもらうことです」と述べていますけれども、中国政府に、強制隔離は出来ても、サポートできるのかについては疑問が残ります。
更に、封鎖することで、感染者と非感染者を一緒に隔離すれば、却って感染者が増えてしまう懸念もあります。
2.新型コロナウイルス感染症の定義
1月9日、中国人研究者の特別チームが感染源の細菌を特定したと発表。人体でこれまで見られなかった新種のコロナウイルスが原因だとしています。
コロナウイルスは、一般的な風邪やSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)の原因菌です。
コロナウイルスは、直径約100nmの球形で、表面には突起があります。その形態が王冠"crown"に似ていることからギリシャ語で王冠を意味する"corona"という名前が付けらました。
今回の新型コロナウイルス感染症について、日本の国立感染症研究所・国際感染症センターが「新型コロナウイルス感染症に対する対応と院内感染対策」の中で、新型コロナウイルス感染症の疑い例として次のように定義しています。
3. 新型コロナウイルス感染症の疑い例の定義中国・国営メディアが1月第2週に出した報告によると、中国人主導の研究チームが細胞培養した新型コロナウイルスの複製を確保。詳細の公表を求める世界の圧力を受け、新型コロナウイルスのゲノム配列の概要を公表しました。
以下のⅠおよびⅡを満たす場合を「疑い例」とする。
Ⅰ 発熱(37.5 度以上)かつ呼吸器症状を有している。
Ⅱ 発症から 2 週間以内に、以下の(ア)、(イ)の曝露歴のいずれかを満たす。
(ア) 武漢市への渡航歴がある。
(イ) 「武漢市への渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人」との接触歴がある。
これにより、感染を発見するための診断テストを世界中の研究室でつくることが出来るようになり、日本、韓国、シンガポール、タイ、ヴェトナム、アメリカなど、中国以外の国で10件ほどの症例が確認されています。
また、新型コロナウイルスの遺伝情報が公開された結果、感染源を特定する研究も発表されていて、1月22日、医学誌『Journal of Medical Virology』で中国人研究者チームが論文を発表しています。
その論文では、中国の国家対策委員会が公開した新型コロナウイルスのゲノム配列から、今回のアウトブレイクの感染源はヘビの可能性が高いという理論を展開しています。
3.コドンバイアスを使ったDNA解析
中国当局が発表した遺伝子データの予備分析によると、新型コロナウイルスは、通常であればコウモリに感染するコロナウイルスのグループに最も近いことが示されていました。
けれども、今の季節だとコウモリは冬眠している為、コウモリ以外の動物が中間宿主となって、コウモリからヒトに新型コロナウイルスが感染したのではないかと疑われています。
北京大学医学部基礎医学院の魏潔(ウェイ・ジー)氏が率いる中国の研究チームは、遺伝子情報を利用してコドンと呼ばれる遺伝暗号を調べることで、この中間宿主の特定に取り組みました。
コドンとは、メッセンジャーRNAにおける連続した3個1組(トリプレット)の塩基配列のことです。このコドンは生物によって使用頻度に偏り(コドンバイアス)があるのですけれども、一部のウイルスは、新しい宿主のコドンの偏りを取り込むことで、新しい宿主に適応します。
研究チームは、新型コロナウイルスが好んで使うコドンと、宿主の可能性がある少数の生物が好むコドンを比較しました。比較した生物は、人間、コウモリ、ニワトリ、ハリネズミ、センザンコウ、2種類のヘビだったのですけれども、その結果、今回の新型コロナウイルスのコドンバイアスが、タイワンコブラとアマガサヘビの2種類のヘビのコドンバイアスと最も重複していることがわかったと報告したのですね。
けれども、この新型コロナウイルスのヘビ媒介説には異論の声が数多くあります。
4.新型コロナウイルスの根絶はまだ先
シドニー大学の感染症・バイオセキュリティ研究所のエドワード・ホームズ氏はこのヘビ介入説論文を「まったくもって、ごみ論文そのものです」と北京大学の研究チームによるアプローチには多くの問題があると指摘しています。
ホームズ氏によると、コドンバイアスは、植物と哺乳類といった大きく種が変わる者同士を比較するのに適していて、近い種同士では、有意義な差を見つけるのが難しいのだそうです。
更に、その比較のサンプリング数が少なくなると、該当するコドンバイアスの抽出は更に難しくなり、ホームズ氏は「ヘビよりコドンバイアスが似ている種が、ほかにも存在する可能性は大いにあります。しかし、分析に加えられていないのでわかりません」と、人間に感染するコロナウイルスを保有する爬虫類の事例はこれまで記録されていないことから、ヘビが中間宿主である可能性には疑いの目を向けています。
イギリス・エディンバラ大の研究チームが、新型コロナウイルスの遺伝子情報を分析した結果、その89%が2003年に中国やアジア各地で広がった新型肺炎「SARS」と一致していたと発表しています。
2003年にSARSが中国を襲ったときは、ヒトへのウイルスの感染源となった動物がハクビシンであることを突き止め、ハクビシンを市場から排除したことで、ようやくSARSが収束しました。
今回の新型コロナウイルスは、生きた動物が食用として販売されている海鮮市場で動物から人間に感染したのが発端ではないかと言われていますけれども、その動物がコウモリにせよヘビにせよ何であるかを特定することが一番の封じ込め策になることは間違いないと思います。
それまでは、感染地域・人に近寄らない、手洗いうがい、マスク(N95)といった少しでもリスクを減らす形での自衛策を取るしかないようです。
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