更に昨日の続きです。
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「妖印刻みし勇者よ、滅びゆく多元宇宙を救え」連載中!
1.マスクだけでは防げない
1月25日、中国の保健当局、国家衛生健康委員会は、新型のコロナウイルスによる肺炎の患者が688人増え、チベット自治区を除く全国30の省や市などで1975人になったと発表しました。
けれども、ネットやSNSで流れる情報を見る限り、とてもそんな風には見えません。道端で人がバタバタ倒れるとか、防備している筈の医療従事者にも感染が広がっているのを見ると、とてもそんなレベルで収まっているとは思えません。
事実、SARS研究の第一人者とされる北京大学第一医院の王広発医師は、当局が派遣した専門家チームの一員として、新型肺炎の感染状況を視察するために1月8日に武漢入りしたのですけれども、北京に戻った16日、発熱などの症状を訴え、新型コロナウイルスに感染していたことが明らかになっています。
王医師は「初期症状は結膜炎だった」とし、結膜から感染した可能性に言及し、治療に当たる医師らに保護メガネ着用の必要性を指摘しています。
結膜からも感染するのなら、巷で対策されているマスクでは全く不十分であり、それこそ花粉対策眼鏡とかが必要になるでしょう。
2.スケールデメリット
案の定、ネットでは実際の感染者数は政府の発表をはるかに超えているとの告発が相次いでいます。
武漢市漢口にいる看護師の女性はSNSに投稿した動画で、「9万人の感染者がいる……1人の感染者が隔離されなければ、14人に感染させてしまう。スピードは非常に早い」と発言していますし、別の女性医療関係者はSNS微信で泣きながら「テレビの報道よりずっと恐ろしい……医師らの推定で10万人が感染している……多くの患者はすでに手遅れ状態です……物資が足りない。入院させることができない……患者に懇願されても、何もしてあげられない。患者が徐々に弱まっていくのを目の当たりにしている……くれぐれも政府を信じないで。自分で自分の身を守ってください」と呼びかけています。
告発が事実だとすれば、中国政府発表の50倍以上の感染者がいることになます。かなり酷い状況です。
けれども、病院にいっても入院どころか物資が不足して碌な治療もして貰えない状況で、自分で自分の身を守れと言われても、個人で出来るのは外出しないとか、マスクをするとかそんなものが精々だと思います。一番よいのは、ちゃんと隔離して貰える病院に移ることですけれども、武漢市を始め周辺都市は封鎖されてそれもままならない。
中には、それでも、隔離都市からの脱出を図る人も出てくるものと思われます。
けれども、仮に感染者のいない或いは少ない地域に脱出することが出来たとしても、新型コロナウイルスが結膜からでさえ感染する程の強力な感染力を持っていたとすると、もし脱出した人が感染していら、其の人自身がキャリアとなって周囲を感染させてしまうことになります。
商売だと中国の人口の多さをして、中国市場14億とか言って、その「スケールメリット」を強調したりしますけれども、今回のような伝染病となると中国の人口が逆に、「スケールデメリット」として逆に働いてしまっているように見えます。これもチャイナリスクといえばチャイナリスクなのかもしれません。
3.二次感染と三次感染が起きている
1月23日、アメリカCNNは、新型肺炎の情報収集に当たっている世界保健機関(WHO)のデイビット・ハイマン博士が「二次感染と三次感染が起きている」と指摘。
更に中国疾病管理予防センター元副主任の楊功煥氏は、中国メディア「界面新聞」に対し、武漢市への訪問歴がない発症者が上海市と広州市で報告されたことから、「二次感染の症例が報告され、症例は増えている。2月が感染拡大のピーク期になると推測する……政府系メディアは、真実を話さない人は『千古の罪人』だと宣伝しているが、実際に、今回多くの医療従事者が感染したという事実は長い間隠され、最近やっと報道された……当時SARSが爆発的に感染拡大したのも、当初情報隠ぺいがあったからだ」と述べています。
もし、感染拡大のピークが2月であれば、その周辺国はそこから遅れて感染が拡がる可能性があります。
厚労省は新型コロナウイルスについて「家族間などの限定的なヒトからヒトへの感染の可能性が否定できない事例が報告されているものの、持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はありません」とし、加藤厚労相は「持続的に感染が広がっている証拠はない」として冷静に対応するよう呼びかけています。
その理由として、厚生労働省健康局の担当者は「世界保健機関(WHO)からの発表では、まだ持続的な感染の拡大が起きているという表現はされていません。もし、武漢以外の地域にいる感染者から感染が拡大するようなことがあれば、武漢にあるとされる感染源から切り離されたところで感染が広がっている証拠になるので、『持続的な感染が広がっている』という表現になると思います」と判断をWHOに任せている状況です。
けれども、既にほぼ中国全土に感染が拡大し、WHOのハイマン博士が「二次感染と三次感染が起きている」と指摘している状況では、その判断も見直すべきだと思いますし、感染拡大を少しでも遅らせて、隔離治療体制破綻を回避する意味でも、日本も入国禁止措置等検討すべきではないかと思います。
4.天命思想
昨日のエントリーで取り上げましたけれども、新型コロナウイルス対策として、中国政府が海外渡航を停止したとしても、旅行会社のパッケージを使わない個人旅行は対象外ですから完全封鎖している訳ではありません。
また、冒頭で述べたように、新型コロナウイルスが飛沫感染だけでなく、結膜から空気感染するのならマスクをするだけでは十分な対策とはいえません。
WHOが新型コロナウイルスについて「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」の宣言を見送り、日本政府も中国からの渡航者を禁止していない状況です。いまだに日本は新型コロナウイルスの脅威に晒されているのですね。
今回の新型コロナウイルスは、もしかしたら習近平政権に大きなダメージとなるかもしれません。
なぜなら、中国古来の「天命思想」からいえば、今回の新型コロナウイルスは習近平が中華の統治に相応しくないと天が示したと捉えられる可能性があるからです。
儒教思想の世界観においては、森羅万象の絶対的支配者は「天」であり、唯一にして全知全能の神聖なる存在とされます。故に、人間世界も「天」の「下」に支配される「天下」になります。
けれども、「天」は下々の人間のことなど与り知らぬとばかり、自らの意思を直接、語りはしないものの、その代りに人間世界から誰かを自分の「子」として選び、「天子」として支配権を委譲することで間接的に人間世界を支配するという構造を取ります。
この「天子」がいわゆる皇帝であり、皇帝とその子孫たちの統治権は「天」から委譲されたものであるとされ、人は天子たる皇帝に絶対服従しなければならない。これが「天命思想」です。
けれども、「天」が誰かを選んで天命を下し、支配権を譲ることができるのなら、逆に「天」は支配権の委譲を撤回・剥奪して、別に選んだ「天子」に譲ることも出来ることになります。これがいわゆる本来的な意味での「革命」と呼ばれるものであり、それによる皇帝一族の交代が「易姓革命」です。
その意味では、中国は民主主義国家ではありませんけれども、天が政権を示すという意味では、「天主主義国家」といえるのかもしれません。
けれども、次には、黙して語らない「天の意思」を人間がどう読み取るのかという問題があります。
中国の天命思想の考えでは「天子」が良い政治をおこなえば「天」により吉兆が地上へもたらされ、悪い政治をおこなえば災異がもたらされるとされています。
確かにこれなら「天」の声を聞くことができない人間であっても、「天の意思」を汲み取ることが出来るでしょう。尤も、吉兆にせよ、災異にせよ、国土が広く、膨大な人口を抱える中国においては、それが「天の意思」であると分かる為には誰の目にも明らかで誤解の余地がないくらい凄いものになるような気がします。
その意味では、今回の新型コロナウイルス肺炎は、2003年のSARSを上回り、中国全土に感染者が広がったことで、"皇帝・習近平"に対する「天の意思」が中国人民すべてに示されたといえなくもありません。
評論家の石平氏は「『易姓革命』の原理においては、天下万民の誰もが反乱を起こして新たに天命を勝ち取る可能性があるわけだから、皇帝とその一族にとって、民衆は「支配・収奪の対象」であると同時に、常に監視して統制しておかなければならない「敵」でもあるのである」と述べていますけれども、もし、習近平主席が新型コロナウイルスを封じ込めることに失敗したら、中国共産党内で、「易姓革命」を掲げた政治変動が起こるかもしれませんね。
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