WHOの非常事態宣言と自滅する北朝鮮

更に続きですけれども、感想エントリーです。
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1.国際的な公衆衛生上の緊急事態

1月30日、世界保健機関(WHO)が新型武漢肺炎で「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を行いました。

WHOのテドロス事務局長はジュネーブでの記者会見で「我々の最大の懸念は、ウイルスが医療体制の脆弱な国々に広がる恐れであり、それに対処する準備が整っていないことだ……はっきりさせよう。この宣言は、中国に対する不信任投票ではない。それどころか、WHOは中国の発生を制御する能力に引き続き自信を持っている」とコメントしました。

前日まで宣言を見送ってたWHOの心変わりは、中国以外でも日本やドイツなどでもヒトからヒトへの感染が確認されたことなどを重くみたものとみられていて、記者会見の席で、緊急委員会のフサン委員長は「今日の緊急会合ではほぼ全会一致で宣言を出すべきだとの意見がまとまった。理由は中国国内での感染件数が増えていること、また感染が確認された国が増えていることも理由だ。さらに疑問を呈せざるをえない対策をとっている国があることも要因だ」と述べています。

WHOの「国際的な公衆衛生上の緊急事態」宣言は、2009年の豚インフルエンザ、2014年のポリオウイルス、エボラ出血熱、2016年のジカ熱、2019年のエボラ出血熱に続き6例目です。

この緊急事態宣言は、昔はコレラとペスト、黄熱を対象としてきたのですけれども、2003年のSARSへの対応が遅れたことなどから、2005年に感染症対策の国際ルール改正を行い、未知の感染症や生物・化学兵器への対策も含め、原因を問わず公衆衛生に危険を及ぼす全事象を対象としました。

WHOには日本を含め現在194ヶ国が加盟していますけれども、緊急事態が宣言されると、加盟国は感染者が発生した場合に24時間以内に通告する義務を課せられます。当然、空港・港での検疫強化や渡航制限といった水際対策の強化も求められるのですけれども、空港・港での検疫強化については遅きに失した感は拭えません。

もっとも、WHOは渡航制限については推奨しないと勧告していて、フサン委員長は「国境封鎖などの対策をとっている国もあるが、科学的な根拠は何かと問いたい。我々は推奨しない。飛行機で自国民を呼び戻している国もあるが、それは呼び戻した後にさらなる感染を防げるという自信がある国だ。全ての国ができるわけではない」と述べています。


2.国境封鎖した北朝鮮

その国境封鎖などの対策をとっている国の一つに北朝鮮があります。

アメリカ政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、情報筋の話として、「中国で広がっている恐ろしい伝染病に対処するために、貨物の移動を遮断せよとの当局の指示があった」と、北朝鮮が28日から、中国遼寧省の丹東から北朝鮮平安北道の新義州に入るトラックの通行を全面的に禁止する措置を取ったと報じました。

北朝鮮の保健当局は今月中旬から、新義州税関を通じて入国した貿易会社の幹部や一般国民に対する面談調査と、ウイルスに感染しているかの調査を行い、中国からの入国そのものを厳しく制限。2003年にSARSの感染が拡大したときよりも、物々しい雰囲気に包まれているようです。

また、平壌のデイリーNK内部情報筋も「国境を閉鎖するほど強力に出入国管理を行え」との指示が上部から下され、中国へと繋がるすべての税関に、内閣保健省の職員が派遣された」とし、入国者は厳しい調査を受けた上で入国が認められるものの、2週間隔離されると伝えています。また、北朝鮮は、22日から外国人観光客の受け入れも停止。一応、北朝鮮と中国を結ぶ国際列車は今のところ運行を続けているものの、事態がさらに深刻化すれば運行停止もありうると見ているようです。


3.科学的な診断と治療が消えた北朝鮮

WHOは非常事態宣言で、ウイルスが医療体制の脆弱な国々に広がる懸念を示しましたけれども、確かに北朝鮮は″医療体制の脆弱な国々″の一つにあげられます。

沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師は、脱北した李泰炅・北朝鮮公立病院院長との対話記録を公表しているのですけれども、それによると、北朝鮮は1990年代に経済が崩壊してから、無償治療制は完全に麻痺している状態で、感染症に罹れば、それなりに免疫力がある人は自然に治り、金がなくて栄養失調に陥っているような人は死ぬのを待つばかりの状況なのだそうです。

病院に薬もなく、金のある患者は市場で薬を買って治療するか、自宅での民間療法で勝手に治療するのですけれども、抗菌薬もその多くが偽物で、経口補水塩も手に入れにくくなっており、コレラなどの急性胃腸炎で子供たちが次々に死んでいるとのことです。

病院でも精密な検査は出来ず、医師は典型的な臨床症状で診断せざるをえない状況で、李泰炅医師は「北朝鮮の医療から、科学的な診断と治療は完全に消えたと思う」と述べています。

こんな状況では、新型コロナウイルスに感染しているかどうかの診断など出来るはずもありません。しかも潜伏期が長く、発症しなくても感染してしまう新型コロナウイルスが相手では手の打ちようもありません。

もっとも、北朝鮮は、先進国家に比べて交通の便が悪いため、感染症の伝播速度が遅いそうですけれども、それでも罹ればそのまま命の危険に晒されることには変わり有りません。


4.国境封鎖で自分の首を締める北朝鮮

北朝鮮の医療体制がこんな状態であれば、中国との国境閉鎖、物流停止の措置も仕方ない事だと思いますけれども、経済制裁を受けている北朝鮮が、自国経済の9割を依存しているのが中国です。

経済制裁の抜け道であると同時に命綱でもある中国からの物流を止めてやっていけるのか。

勿論、ひと月ふた月くらいであれば耐えるかもしれません。けれども、半年、一年となると分かりません。SARSも収束までの期間は7~8ヶ月と言われていますけれども、感染速度がSARSを超え、既に中国全土に広がっている新型コロナウイルスがSARSより早く収束できるとも考えにくい。

WHOで感染症対策を指揮した経験のある東北大学の押谷仁教授はSARSと新型コロナウイルスの違いについて「2003年に感染が拡大したSARSと決定的に異なるのは、軽症や、症状が出ないケースが一定程度あることだ。そうした人たちから感染するリスクが否定できず、知らず知らずのうちに広がるおそれがあり、WHOも、封じ込めはSARSより難しいと見ていると思う。今後は、医療体制がぜい弱な国の支援を含めて、国際社会が連携して対策にあたる必要があるほか、日本を含めて、感染拡大を前提にした医療体制の整備を真剣に考える時期に来ている」と述べています。

北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境封鎖するは、自身の手でガチの経済制裁を行うこと同義です。もし、中国本土での新型コロナウイルス収束が長引き、北朝鮮の国境封鎖が続けば、経済制裁がそれだけ続くということであり、どこかで臨界点がくるかもしれません。

その意味では、新型コロナウイルスの封じ込めと同時に北朝鮮の動きも一定以上の警戒が必要になるのではないかと思いますね。

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