

1.「歴史的緊急事態」指定表明
3月10日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を、公文書管理ガイドラインが定める「歴史的緊急事態」に指定しました。
これについては、前日の3月9日、参院予算委員会の集中審議で、安倍総理は、自民党の武見敬三氏から、緊急事態宣言をした場合、国民の権利を制限することに慎重であるべきだという質問をうけ、「国民の私権を制約する可能性もある。どのような影響を及ぼすかを十分に考慮しながら判断していきたい」と述べる一方、「常に最悪の事態を想定し、あらかじめ備えることが重要だ。国民生活への影響を最小とするため、緊急事態宣言などもう一段の法的枠組みの整備が必要」と答弁していました。
安倍総理は全国一斉休校の方針を決めた関係閣僚らとの連絡会議についても議事録を作成し、公表する考えを示していますけれども、歴史的緊急事態に指定されると、政府会議の開催日時や発言者、発言内容などの記録が義務付けられます。その目的は将来の教訓とすることとされており、それだけ政府は今回の事態を重く受け止めているということだと思われます。
橋下徹・元大阪府知事は、テレビ番組で「知事のときに痛感したけど、裁量与えられないと行動を起せない知事にはある程度の裁量があるが、内閣総理大臣はほとんどない、法律でがんじがらめになってる。だから、もっと総理大臣に裁量を与える法律にするべきだと思う」とコメントしたようですけれども、安倍総理がその中で、全国一斉休校を要請するなど、現行の法律の中でどうやっていったかを経緯含めてきちんと記録しておく必要があると考えているからなのかもしれません。
2.アメリカ各地で非常事態宣言
安倍総理が緊急事態宣言に慎重な姿勢を示す一方、州レベルでありながら、非常事態宣言をバカスカ出しているのがアメリカです。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、西部のカリフォルニアとワシントン州、オレゴン州、東部のメリーランド州とペンシルベニア州、それにニューヨーク市を含むニューヨーク州などアメリカ各地で非常事態宣言が出されています。
全米50州のうち既にに20以上の州で感染が確認されており、東部でも西部でも非常事態宣言が出されているところを見ると、アメリカ全土に感染が拡大してしまっている可能性も考えられます。
3.日米が手を焼く王女
新型コロナウイルスの感染拡大により、米カリフォルニア州サンフランシスコ沖で待機中のクルーズ船「グランド・プリンセス」号が3月9日、アメリカのオークランド港に入港しました。
「グランド・プリンセス」は、プリンセス・クルーズ社が運航しているクルーズ客船で乗客乗員は約3483人。日本で話題になった「ダイヤモンド・プリンセス」もこの会社が運航しています。
先週、2月にグランド・プリンセスに乗った71歳の男性乗客が新型コロナウイルスの感染により死亡。船内で行われたウイルス検査45人のうち、21人の感染者が認められたため、上陸地をめぐってホワイトハウスや地元当局の関係者らの間で話し合いが進められていました。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、オークランドを選んだ理由として「オークランド空港にも近いため、チャーター便を利用するにも便利な場所」としています。
オークランド港では今後、すべての乗客が下船し、オークランド州出身の乗客は港から車で1時間ほど北部のトラヴィス空軍基地へ、ほかの州の住民はテキサス州のサンアントニオ・ラックランド合同基地またはジョージア州のドビンズ空軍基地で、14日間隔離され検疫が行われるとしています。
また乗員については、そのほとんどが国外出身のため、検疫の場所についてはまだ決められておらず、乗船したまま3日以内に港を離れるという情報もあるようです。
ダイヤモンド・プリンセスに対する日本の対応について、アメリカのメディアは散々叩いていましたけれども、今度は自分達がその矢面に立たされることになった訳です。
気になるのは2月の航海でグランド・プリンセスに乗っていた乗客がサンフランシスコで降りていることです。今のグランド・プリンセスの乗客は3月の航海でハワイに向かっていたのが感染確認で引き返しているだけで、2月に下船した乗客は既に散らばっているのですね。
4.見せて貰おうか、CDCの完璧な防疫とやらを
ここにきて日本のコロナ対応について評価する声も出てきています。
グランド・プリンセスについて、自民党の甘利元経産大臣は、「クルーズ船がカリフォルニア沖に停泊し、新型コロナ罹患者への対応を今度は米国が迫られています。日本の対処が評価され問合せが来ています。連日、入国制限や検査・隔離等、基本的人権に関わる事の連続で、どの法律を使えばどこまで出来るのか、安倍総理は毎日ギリギリの政治判断で対処しています」とツイートしています。
また、ネットでも、ダイヤモンド・プリンセスで日本を叩いていたアメリカに対し、「見せて貰おうか、CDCの完璧な防疫とやらを」的な書き込みやら、「日本の対応もそう悪くはなかったんじゃないか」的なコメントがちらほら見受けられます。
ちょっと前までは、日本の新型コロナウイルスの感染者数が中国以外ではトップ3くらいに入っていたのですけれども、今ではイタリア、韓国、イランなど世界各国の感染者がどんどん増え、数の上では日本のそれは大分目立たなくなってきています。
また死亡者も相対的に少ない。
コリア・レポート編集長の辺真一氏は3月7日時点で、日本の国内感染者はクルーズ船感染者696人を除くと、420人で韓国の約16分の1、イタリアの14分の1。死亡者数も韓国の約8分の1、イタリアの約38分の1とはるかに少ないとし、どう考えても、不思議な現象だと述べています。
まぁ、一部では日本は新型コロナウイルス感染の検査をしていないからだという意見もありますけれども、いくら検査してないといっても、38度や39度も熱が出れば医者にかかるわけです。既に検査が保険適用になっていますし、医師が必要と認めれば検査できる訳です。怪しい所見があれば、やはり検査に回されるでしょう。
確かに検査数を増やすことで新たな感染確認者が増えることはあるかもしれませんけれども、検査をしたからといって死者が減る訳ではありません。
昨日のエントリーで、「ブルッキングス研究所」のレポートで感染拡大を抑える政策として「ローコストな衛生習慣を広く普及させること」が挙げられていることを取り上げましたけれども、日本で新型コロナウイルスでの死者が少ないとか、感染爆発してないのは、やはり、手洗いや嗽の習慣がやはり大きいのではないかと思います。
今、政府は一斉休校や大規模イベントの自粛要請などしていますけれども、このまま日本での新型コロナウイルスの感染爆発を抑え込むことができれば、日本のやり方を世界が真似するようになるかもしれませんね。

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