今日はこの話題です。
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1.武漢コロナ蔓延を恐れるフランス
ヨーロッパで武漢肺炎が猛威を振るっています。
3月9日、フランスのリステール文化相が新型コロナウイルスに感染したと複数のフランス・メディアが報じました。
また、下院の議員5人も感染しており、うち1人は重篤な状態になったと伝えられています。
フランス政府はこれまで1000人を超える集会を禁止するなどしてウイルスの蔓延延防止策をとってきたのですけれども、既にフランス全土での感染者は1200人を超え、死亡者数は20人を超えるなどイタリアに次いで多い規模となっています。
フランス政府は公共交通機関の利用規制、教育機関の閉鎖など追加の対策を検討しているそうです。
フランスでは、SARSが流行した2003年、シラク大統領の下で「予防原則」が憲法に加えられ、科学的に確固としたエビデンスがない場合でも予防を第一にするという考え方で、「伝染病の蔓延など特定の衛生緊急事態および危機に対応する『PlanBlanc(白プラン)』」が法制化されました。
今回の武漢ウイルスについても、これに従い、感染の拡大状況によって当局の対応を変えることになっているそうです。
感染初期では、検査も救急が必要と判断した症状のある者、濃厚接触の疑いのある者、感染地からの渡航者、に限っているのを、感染拡大期に入ったと認識されると、感染地と周辺の市町村あるいは県単位で学校の休校、市場などの閉鎖、50人以上の集会禁止、検査の強化や、全国規模で5000人以上の閉鎖空間での集会禁止するとなっています。
そして、蔓延期に入ると今度は、感染者が大量になるので重症化を防ぐのに注力することに切り替え、患者は特別救急施設ではなく、一般病院や開業医がフォローすることになります。
検査についてもキャパオーバーになるので、軽症や無症状者が感染しているかどうかをみる検査は中止されます。
フランス政府が公共交通機関の利用規制、教育機関の閉鎖などを検討しているということは最早、蔓延期に入ることも想定しているのかもしれません。
2.深刻なイタリア
それでも、ヨーロッパで最も深刻なのはイタリアです。
3月9日、イタリアのコンテ首相は記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内全域で人の移動を制限すると発表しました。全土移動制限は3月10日から4月3日までのおよそ3週間。
コンテ首相は「スポーツイベントを継続する理由はない」として、サッカー1部リーグも中断すると宣言。
感染者は9日時点で、新型コロナウイルスの感染者は前日比1797人増の9172人。死者は97人増の463人にも及んでいます。
それだけではありません。
感染者が集中している北部地域の刑務所を始めとしてイタリア全土の25ヶ所以上の刑務所では、感染拡大防止を狙った家族との面会制限を巡り受刑者の暴動が起き、これまで7人が死亡したと報じられています。
暴動は北部地域の刑務所で8日に始まり、翌9日にかけて全国に拡大。火災が起きているほか、1ヶ所では受刑者が刑務官を人質に取り、別の1ヶ所では一部の受刑者が脱獄するなど混乱しているそうです。拡散しているのは武漢ウイルスだけではない状況です。
コンテ首相は主要紙レプブリカのインタビューで「今が一番苦しい時だが、我々は乗り越える……政府だけでなく各自治体レベルでも統一された行動に協力する必要がある」と苦しい胸の内を明かしています。
日本政府は新たにイタリアのヴェネト州やロンバルディア州など、北部を中心とした5つの州を入国拒否の対象とする方向で最終調整していますけれども、感染拡大が収まらなければ、更に拡大されることもあり得ます。
一部では、60代以上の高齢者に挿管を諦めトリアージを始めたとの話もあるようです。
3.新型コロナウイルスはパンデミックと言える
日本は3月2日にWHOのテドロス事務局長から日本を含む4ヶ国を感染拡大の「最大の懸念」と名指しされたのですけれども、どうやらそれもその日だけのことに終わったようです。
3月5日、参院予算委員会で茂木外相は「一番新しいリリースを見ても、中国以外の症例の8割は3ヶ国によるものと表明している」と3月3日以降は日本を除く韓国、イタリア、イランの3カ国を懸念の対象としていることを明らかにしました。
WHOがたった一日で懸念を撤回できる柔軟さを持っているのなら、武漢ウイルスについても、とっくにパンデミックを宣言してもよいと思うのですけれども、なぜか、新型コロナウイルスについては、一向にパンデミック宣言を出しませんでした。
3月9日、WHOのテドロス事務局長は記者会見で、新型コロナウイルスの感染が100以上の国と地域に広がっていることを指摘し、「パンデミックの脅威は非常に現実的になってきた」と述べる一方で、感染が確認された100以上の国と地域のうち79では感染者が100人以下にとどまっていることから「パンデミック」の判断には感染の実態や状況を見極める必要があるとパンデミック宣言を見送っています。
ただ、この会見で筆者が注目したいのは、WHOの「パンデミック」の定義を問われた部分で、この質問に対し、危機対応を統括するライアン氏は「明確な定義はないが、病気が国から国に広がるのをもはや制御できない段階に達したことを指す」と述べた事です。
毎日毎日次々と感染者が報告される現状を見る限り、筆者はもう全然制御できていないのではないかと思うのですけれども、仮に各国が全て人の移動を禁止しても尚、感染拡大が止まらないのであれば、もうパンデミック宣言をする他ないということになります。
3月11日には、イタリアと国境を接するオーストリアはイタリアからの入国を原則禁止すると発表しました。これは、もはやイタリアが新型コロナウイルスを制御できないと見ているということです。
そして、この日、WHOのテドロス事務局長は定例記者会見で、「我々は、感染の広がりと重大さ、そして対策が足りていないことに強い懸念を持っている……新型コロナウイルスは『パンデミック』と言えると評価をした」とようやくパンデミック宣言をしました。
4.テドロス事務局長を隔離すべきだ
テドロス事務局長がこれまで頑なにパンデミック宣言を出さずにいたのは中国への忖度ではないのかという批判は前々から言われていましたけれども、その声はWHO内部からもあったようです。
先頃、2月6日の段階でテドロス事務局長が内部批判されている様子がネットを中心に注目されています。
2月3~8日の日程で、WHOはスイスのジュネーブ本部で第146回執行委員会を開催しました。
会議には執行委員会の34人の委員が出席し、今年のWHOの議事日程などを決定したのですけれども、2月6日に行われた会議でタイ代表がWHOの対応に嫌味たっぷりな言葉を浴びせたのですね。
ネットに上がっている動画によるとその発言は、次の通り。
タイ代表「議長、旅行制限を確実に実行するなら、まずテドロス事務局長を隔離したうえ、今回の会議を中止にすべきです。事務局長は北京を訪問したばかりです。会議に参加した多くのメンバーの国では旅行制限を実施しています。メンバーらは事務局長とハグしたり、握手したりしてます。この人たちはみんなリスクに晒されています。
議長、あなたは最も危険だと思います。なぜなら、事務局長の横にずっと座っているからです。私はまだ安全だと思います。この数日間、事務局長は私と握手もしたくないようです。
しかし、我々は人々の恐怖感を和らげ、WHOの信頼を回復させなければならないのです。したがって、私は中国でWHOの会議を開催することを提案します。武漢でしましょう!
今こそ、武漢市にある2千年の歴史を誇る黄鶴楼を訪ねる最高のチャンスです。北京もいいですね。今なら、万里の長城も紫禁城にも人がいないので、入場料も安いです」
家内の同意を得られれば、私は半年分の退職金を出して、中国でのWHO会議開催に寄付しようと考えています。ありがとうございました」
この発言の間、前列に座っているインド代表が笑いをかみ殺し、発言後、会場からは他国代表の笑い声が響き、タイ代表に盛大な拍手を送られました。
やはりWHO内部でもテドロス事務局長の態度は問題視されていたようです。
茂木外相は3月3日以降、WHOが感染拡大を懸念する国から日本は除外されていると発言した際、WHOに対し「日本としても科学的知見、事実に基づいて発言することは重要だと申し入れている」とも述べています。
これは裏を返せば、WHOに事実に基づいた発言をしてないだろう、と釘を指しているともいえ、WHOに対する信頼は相当落ちていることを窺わせます。
9日の会見で、パンデミックの定義は「病気が国から国に広がるのを制御できない状態のことだ」と述べたWHO緊急事態対応統括のライアン氏は、6日、日韓両国が相互に入国制限を打ち出したことについて「有益ではない」として、入国制限に過度に重点を置くことは、ウイルス封じ込めに向けた努力を阻害するものだと述べています。
けれども、病気が国から国に広がるのを制御できる最大の方策が相互の入国禁止であることは論を待ちません。にも関わらず、日韓双方の入国制限が「ウイルス封じ込めに向けた努力を阻害するもの」というのは矛盾しています。
今回の新型コロナウイルスを巡ってWHOの権威というか信頼はかなり落ちたのではないか。このままでは各国の自国ファーストな防疫対策が増々進められていくのではないかと思いますね。
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